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23 竜騎士団2年目 帝都出張4

1日目は特段トラブル等なく終了した。


竜団会議の目的は交流と情報交換だ。

ここで公開される情報は、予算や人事計画、専用装備の運用状況、公開可能範囲での戦闘技術、特殊個体の発生状況と対策、他行政部署との関係性など、多岐にわたる。


発表者には話の上手な人を選定しているのか、各発表を聞いているときに眠くなるようなことはなかった。

偉い人の訓話を聞くだけかと思っていたら、案外役に立つ情報だった。

この会議は2年目出席必須となっているのも分かる気がする。この会議は教育カリキュラムの一環なのだと理解した。


発表の中でケイが最も驚いたのは、この建屋内では科学技術が現役だということだった。

この世界で一般的な魔術的なセキュリティに加え、全く魔力を利用しない、物理現象のみで動作するセキュリティシステムが備え付けられている。

直接的な説明ではなかったが、入場時に血を取られたのは、魔術的な結界術で利用するためであると同時に生体認証用だということがセキュリティ担当団員から述べられた。


時間の関係で発表内容の詳細は省かれることも多く、興味のある項目については個別に別途問い合わせる必要がある。

ソウジを通して情報をもらおう、とケイは考えた。


1日目終了後、建屋を出た一行は宿屋までやってきた。

騎士団と提携している宿で、小さいながらも清潔なビジネスホテルだった。当然キュリティ関係もばっちりである。


受付をすませると、この町で使えるクーポン券をもらった。

これは、前世の知識でいうクオカードプランというやつでは?と思ったケイだったが、野暮なことを口にするのはやめた。


晩御飯には、一足先にホテルで休んでいたユリに加え、リノとアイナが同行することになった。さっそくクーポン券の出番である。

フロントで、クーポンが使える美味しいお店の情報を入手し、歩いて移動する。


その店は繁華街の中にある食事処だった。全員が個室に入り、適当に目についたメニューを注文する。

ちょっと多いかな、と思ったが、こちらにはツララがいる。安心して色々な料理を頼むことができた。


食事中、女性陣は帝都の流行やファッションについての話で盛り上がっている。

機密事項は騎士団建屋外では話すことができない(個人の意識の問題ではなく、話せないように魔術的な制約がかけられている)ので、ケイは団長と二人で、帝都の名物料理や、領で待つ皆へのお土産について話をしていた。


夕食を終え、カイ団長とケイは女性陣と別れて夜の町に繰り出した。


「団長、次のお店は・・・?」

「いいお店だよ。一年前にケイが行きそびれた種類の店だ」

「それは、もしかして・・・」

「ふふふ・・・」


二人して静かに笑う。この二人、確実にアルコールが頭に回っている。


「帝都に来た時くらい、羽を伸ばさないと」

「そうですね!」


そいう言ったところでケイはハッとした。周りを見渡す。ユリたちは視界内にはいない。


「まさか、また幻術じゃないですよね?」

「私もそこまで意地悪じゃない。信じてくれ」

「・・・信じます!」


ケイは団長の後をついていく。

七色に光る魔石をふんだんに利用した、怪しい看板が溢れる街へ。





二日目はケイにとってメインイベントの日だ。


準備を終え、宿屋のロビーに降りてきたケイは、そこでアイナと行き会った。


「あ、おはようございます」

「おはようございます。今日は訓練の日ですね」

「そうですね。お互い頑張りましょう」


アイナも、訓練の詳細は聞かされていないらしい。

そのままロビーで待機していると、両団長とツララも下りてきた。

ユリは今日、市場で材料を仕入れるらしい。

ユリ以外のメンバーで近衛騎士団建屋へ移動する。


昨日と同様に入館手続きを終え、受付エリアを抜ける。一日目は昇降機で上の階へ移動したが、今日は逆に地下へと降りる。

昇降機を降りた先は一見すると一階のロビーと同じだった。

正面にある扉は一見なんの変哲もない扉だが、ケイは違和感を覚えた。


ケイの受けた印象としては、ホラーゲームの終盤、最序盤で散々探索した廃屋の隠し階段を下りたら、ラストダンジョンである最新のウイルス研究施設があった、というときの感覚に近い。普通に考えたらあるはずのないものが、実はあったときの感覚だ。


ケイたちが近づくと、扉は人の接近を検知し、無音のまま左右に自動で開いた。

先には廊下が続いているが、正面と左右、合計三方向に分かれており、分岐点では近衛騎士団員が受付として待機していた。


「おはようございます。訓練対象者はこのまままっすぐ、それ以外の方は右側の通路へお願いします」


ケイとアイナは団長達と別れ、正面の廊下を進む。廊下はすぐに終わり、先にはまた扉があった。この扉も自動で開いた。


扉の先にあったのは戦闘訓練場ではなく、研究設備のような、手術室のような部屋だった。機械部品がつながった椅子が10脚並んでいる。4脚は人が既に座っており、何人もの近衛騎士団員によって、何やら作業が行われている。


「こちらへどうぞ」


室内の団員に誘導され、ケイとアイナは椅子に座る。

その後、腕や足が拘束されていく。ケイは嫌な予感がしていた。

準備が終わったのか、離れていく団員たち。最終的に、椅子には9人が固定された。コウキの姿もあった。固定されたのは皆新人だろう。


部屋の側壁に沿って整列した近衛団員、前方スクリーン脇には近衛騎士団長が立ち、二日目の開会を告げた。


「それでは竜団会議2日目を始める。新人の皆には、これから戦闘訓練をしてもらう。目標達成あるいは時間経過により帰還するので、焦らず、まずは冷静に」


あまりにも簡単な説明のあと、近衛騎士団長は団員へと合図をした。

前方スクリーンに映像が流れると同時に、椅子から何かの波動が伝わってくる。

そこで、ケイの意識は暗転した。




気づいたとき、ケイは別の場所に立っていた。

山の中腹のようで、後ろは雪原。目の前には大きな洞窟の入口。幅は10メートル、高さは3メートルほどだ。


「何が起きた?」


思わず呟いた。このままじっとしていても何も解決しそうにないので、まずは状況を確認することにした。

意識が暗転する前と異なり、自分の手足は拘束されていない。普段の討伐任務で着用している竜騎士団員用の服装を身に纏い、正式採用剣をはじめとした各種武装も揃っている。


周りの景色に見覚えは、あるような、ないような。

生まれた町の野原に似た場所があるが、そこにはこんな洞窟はない。

雪原の彼方に何か見える、と思ったとき、急に吹雪が発生し視界が悪くなった。


断熱用空調魔術を発動したことで寒さは問題ではなくなったが、視界の悪さはどうしようもない。

一旦洞窟に入り、様子を見る。


今の状況で分かっていることを羅列すると

・近衛騎士団建屋地下室で話を聞いた後、何かしらの手段によってここに飛ばされた

・戦闘訓練が開始された

・目標達成もしくは時間経過で帰還する

・自分の能力は制限なし(魔力封じの耳飾りなどはつけられておらず、武装も揃っている)


団長が匂わせていた情報は以下2点

・同期と関係性を構築するイベント

・戦闘相手は団長レベル(団長が訓練をつけてくれるようになったため)


これらを基にケイは仮設を立てた。

・ここは幻術空間あるいはそれに類似した場所(本当の自分はあの椅子の上にいる)

・同期達もこの付近にいて、協力が必要

・戦闘能力の高い何かと戦う可能性あり


(この世界でフルダイブVRデスゲームをすることになるとはね・・・)


とはいうものの、これは訓練。命を取られることはないだろう、とは思った。

どこで監視されているか分からないので、声は極力出さない。

思考が読み取られていれば意味はないが、用心するに越したことはない。


そして、あからさまに怪しい洞窟。奥まで道のようなものが続いている。

外が急に吹雪いたことを考慮すると、この洞窟を進め、ということだろう。


ケイは覚悟を決め、慎重に洞窟の内部へ向かって歩き出した。


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