22 竜騎士団2年目 帝都出張3
飛行船発着場に隣接した食堂に到着した一行は、軽食を取り始めた。
帝都発着場名物という‘空丼’をいただく。一番年下のツララが特盛で一番多くの量を食べた。
両団長のおごりである。
その後、貸切馬車を借りて近衛騎士団本部建屋へと移動する。
帝都の中心には、帝国の象徴である、巨大な城が鎮座している。
帝都を囲む城壁は3重になっており、発着場は一番外の城壁と2番目の城壁の間にある。
馬車は内側2つの城壁の門を通り抜け、中心街、行政区画までやってきた。
屹立する高層ビル群の中、城の正門近く、少し小さめの一棟が近衛騎士団建屋だ。
「ふわー」
建屋を見上げてツララが声を漏らす。
ケイは3年前にも見たことがあるのでそこまで感動はなかったが、それでも建屋の大きさには圧倒される。
領都で一番高い市庁舎よりも高く、大きい。
「入口で受け付けするよ」
カイ団長の後を追って建屋に入る。大きなロビーの入口には警備員、奥には複数の受付嬢が座っていた。
受付嬢のレベルは領都よりもさらに高い。右端の受付に並ぶ。
「竜団会議に来ました。ハルト辺境伯領のカイです」
「はい・・・こちらで受付願います」
受付に備え付けられた直系15センチほどの金属製の輪。その間に左腕を入れると、輪の上に設置された小さな水晶が青い光を発する。
「はい、結構です。ようこそ、近衛騎士団へ」
「どうも」
ユリも同様に手続きをしたのち、ケイたちの順番になった。
カイ団長が受付嬢に告げた。
「この二人は初回訪問です。登録お願いします」
「はい、では、こちらのくぼみに指を置いてください」
少し小さめの別の輪を示されたので、手を差し入れる。
「少しだけ、チクっとしますね」
「?!」
瞬間、風の刃が発生し、指先に小さな傷ができる。
そこから血が滲むと、その血は腕輪に吸い込まれ、水晶が青く光った。
「はい、大丈夫です。指を放してもいいですよ。次の方、どうぞ」
「あ、はい!」
ケイと入れ替わりに、ツララとアイナが同様の手続きを行う。
その後、団長たちと同様、大きな輪に腕を通して受付が終了した。
全員の受付が終了したところで、受付横のゲートを開き奥の部屋へ向かう。そこも大広間となっており、正面には階段と昇降機が並んでいた。
「団長、さっきの登録の件、驚きましたよ」
「どうだった?」
「魔道具だってことは分かりましたが、・・・言っておいて欲しかったです」
あんな道具は見たことがなかった。
セキュリティ系の魔道具はこの世界にもあるが、血を使うものがあると聞いたことはなかった。
「この建屋は機密の塊だ。このエリア以降のセキュリティは万全にする必要があるからね」
「アイナはケイさんが先にやってくれてよかったわね」
「はい」
「そういえば、ユリさんも入ってきていいんですか?」
「会議には出席しないけど、会っときたい人はいるから。というか、帝都に来て会わずに帰ったのがバレたら面倒な相手ね。会議前にチャッチャと挨拶して、必要な情報をもらったら速やかに撤収よ」
「はぁ、なるほど・・・」
昇降機に乗り、会議場へと向かう。会議室前まで来た一行は、入口前に重ねられているプログラム紙を各々手に取って中に入った。
100名以上が入る大会議室の席はぱらぱらと埋まっていた。
「まだ時間はあるけど、もう結構来てるね」
「こういう時でもないと、他領の団員には会えないしね。・・・私はちょっと挨拶してくるわ」
そう言ってユリは離れていった。
カイ団長は空いている場所を見つけて、3人分席を確保する。リノ団長もアイナと共に近くに並んで座り、それぞれ知り合いを見つけて離れていった。
「先輩、どうします?」
「会議までもう少しあるな」
先ほど入手した紙を見ると、会議室回りの配置や注意事項も書かれていた。
「ロビーに飲み物と軽食が容易されているみたいだよ」
「あ、本当ですね。取ってきてもいいですか?」
「ああ、俺は荷物見てるから。・・・アイナさんも、取ってきたらどうですか?」
「そうですね。では、申し訳ありませんが、お願いします」
ツララとアイナは連れ添って会議室を出て行った。
ケイは、改めて会議室内を見回した。よく見ると、同じ服を着た人が半分くらい、残り半分が私服だった。
同じ服を着ているのは近衛騎士団員、会議の世話係だ。
帝国の領の数は50近くある。竜騎士団は当然、その領の下の組織であるが、すべての領に存在するわけではない。
領の場所や大小は地政学的判断が入るため一概には言えないが、帝都周辺など大きな町を持つ領の周辺には土地面積が小さい領が集まっており、田舎に行くほど大きな領土を持つ。
ケイたちのハルト辺境伯領やアイナのワフ侯爵領は帝都から離れており、領土の大きさは上から数えた方が早い。
加えて、原因は不明だが、そもそも特殊個体の発生が滅多にない土地というのも存在し、そう言った地方では複数の領を担当する竜騎士団が存在し、その竜騎士団は帝国直属となっている。近衛騎士団の出張組織だ。
竜騎士団と近衛騎士団は近しい存在、仕事には重なる部分も多く、交流もある。
しかし、団員の持つ雰囲気がやはり違う。準備を続ける近衛騎士団員達を見て、自分が所属する竜騎士団との違いを感じるケイであった。
「ケイじゃないか?」
ケイは近衛騎士団員から話しかけられた。
「ソウジ先輩!?お久しぶりです」
領都学校時代の顔見知り、ケイの2年先輩であるソウジがそこにいた。
「そうか、ここにいるということは、ケイもだったのか」
「はい。ソウジ先輩もお元気そうで」
「近衛は大変だけどな」
「ケイが竜騎士団を目指してたのは知ってたけど、実情を知ってからは、その夢が叶うとは思ってなかったから・・・ここで会えて、素直に嬉しいよ。」
「転生者関連の話は驚きました。そんな裏があったのか、と」
ソウジは回りを見渡して言葉を発した。
「驚くよな。帝国に、こんなに対象者がいるなんて」
「ええ。本当に」
「自分が特別だと思っていたら、そんなことはなくて自分は歯車の一つでしかないことを知った。ま、歯車の中でもレアな歯車だったかもしれないが」
そこまで話したところで、ソウジに話しかける人物がいた。
見るからに真面目、といった雰囲気の男性だ。
「ソウジさん、準備できました」
「ああ、ありがとう。・・・そうだ、紹介しておこう。近衛騎士団2年目のコウキだ。コウキ、こっちは俺の領都学校時代の後輩、ケイだ。ハルト辺境伯領の竜騎士団団員」
「コウキです。よろしくお願いします」
「あ、ケイです。よろしくお願いします」
挨拶を交わした二人を見て、ソウジが告げる。
「二人とも、今日は難しいかもしれないが、明日と明後日は懇親行事だ。そこで懇親を深めるといい。・・・ではコウキ、行こう」
「はい、では失礼します」
「あ、はい。ではまた」
ソウジ達が離れると入れ替わりにツララたちが戻ってきた。
アイナはケイの飲み物とお菓子も持ってきてくれた。ツララはお菓子を大量に持って帰って来た。
「物凄くたくさん置いてあったので、このくらい大丈夫です」
そうこうするうちに時間となり、カイ団長とリノ団長が戻ってくる。
席についてしばし、壮年の男性が壇上に登った。近衛騎士団長だ。
竜団会議、1日目が始まった。




