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魔法使いはどこから来たか。  作者: きみかげ
第1章 商業都市ウォッタリラ
23/32

20 懐疑

「――アーデルさん。」

門外地区に戻ったユーアは、リビングのソファにゆったりと座って新聞を読んでいたアーデルに声をかけた。

アーデルは新聞に目を落としたまま応じる。


「ずいぶん早かったわね。5日も休みをあげたのに、2日で帰ってくるなんて。目的は達成できたの?」

「……」


返事がないことに気づき、アーデルは新聞から顔をあげてユーアの顔を見た。

そして、ユーアが神妙な面持ちをしていることに気づく。


「…どうしたの?」


「…お話があります。」


アーデルはユーアをじっと見つめた後、何かを察し、新聞を脇に置いた。

「…なに?」


「その…次の大会、やっぱり辞退させていただきたいのです。」

「…」


アーデルは少し沈黙した後、静かに尋ねる。

「…怖くなったの?街にまだメリールゥの連中がいるから」

「――はい。」


「そう…まあ、そうね…連中、ウォッタリラを引き上げる様子はまだないみたいだから。」


少しうつむいて逡巡した後、顔をあげてアーデルはユーアを見た。


「街にいるリュメさんやソラから聞く限りだと、今のところ連中は大人しそうだけど…前回の大会で大胆に会場を包囲したんだから、もしかしたら次も何か仕掛けてくるかもしれないわね。」


「はい…」

「でも、それだとギルドカードはどうするの?」


アーデルの表情は、本当にユーアを心配しているように見える。


「リブラたちがメリールゥに帰るまで、門外地区で過ごす?…私は構わないけど。管理人のナグモが許可すれば、それもいいかもしれないわ。」

「…」


アーデルは、何も知らないのだろうか。


ソラが、リブラたちと行動を共にしていること。


ソラが独断でやっているだけで、アーデルは純粋にユーアを想ってくれているのか。

それとも、ユーアを心配している風のこの表情は演技で、ソラといっしょになって、ユーアを売る気なのか。


ユーアには判断がつかなかった。


「その…次の大会は、ひとまず様子見で。何もなければ、そのさらに次の大会でギルドカードを発行できないでしょうか」


ユーアはとりあえず、決断を先延ばしにするような発言をした。


「できると思うわよ。私たちと同じ北支部所属の冒険者にはなれないけど。慎重に行くならそれがいいわね」

アーデルは言いながら、ユーアの目をじっと見る。


ユーアは思わずアーデルから目をそらした。何を尋ねられるか、気が気でない。

――もし、アーデルも敵に回っているとすれば、受け答えに気を付けなければならない。

アーデルには嘘が通用しない。ユーアの内心を悟られてはならない。


アーデルはユーアの表情を見つめながら、低いトーンで言った。

「…何か、他に言いたいことがあるなら聞くけど。」

「いえ、何も…」

「ダンジョンで何があったの?」


その質問にドキリとする。

当然の疑問だ。


しかし答えていくと、ユーアが渦眼の彼に指示されたことがばれてしまうかもしれない。

ユーアは黙りこくるしかなかった。


「……」

アーデルはしばらくユーアの返答を待ち続けた後、それでも無言を貫くユーアを見て、ため息をついた。


「…そ。」

アーデルは目を伏せ、そのまま立ち上がった。


「…アーデルさん…」

「一応言っとくけどね。私ぐずは嫌いだけど、今じゃあんたのことは割と気に入ってる方よ。」


リビングを去りながら、肩越しに振り返って最後に彼女は言った。


「一人でどうしようもなくなったら言いなさい。」


それだけ言い残して、彼女は去って行く。

何も言っていないのに、まるで、何か見透かされたかのようだった。

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