『ハイアストラ山脈を前にして』1414/05/19
『私』はチート持ちなので異世界でも描画ソフトを使えます。
レイヤーは分けるしテクスチャだって貼りまくります。
行商のキャラバンに別れを告げ、ベルカとの二人旅に戻ってから三日が経った。
目的地『廃都ヴァレンハイト』の前に立ちはだかる霊峰ハイアストラ山に差し掛かったところで我々は立ち止まり、山道への入り口に打ち捨てられた小さな山小屋を宿とすることにした。
ここから先は魔力特異点、アルタァベルト。
まごうことなき危険地帯だ。
「明日は朝から登山だ。中腹まで登ったら廃坑に入る」
アルタァベルトの高地越えは鬼門。
ワイバーンを始めとする強力な魔物に見つかってたちまちお陀仏だ。
腕自慢のベルカですら無傷では済まない難所なのだから、私が生きて通り抜けるのはまず無理だろう。
よって、避けて通る。
「魔物に出くわさないにしても、キツイ道のりだ。早く寝ろよ」
ベルカは毛布にくるまっていつものようにいびきをかき始めた。
まだ日も落ちていないのに、大したものだ。
しかし、私はどうにも寝付くことができなかった。
仕方が無いので、ベルカを起こさないように気を付けながら絵描き鞄を持ち出し、目指すハイアストラ山に向き合った。
『ハイアストラ山脈を前にして』
……こんなものだろうか。
夕陽がハイアストラ山脈の肩に沈んでいくのを見守りながら、私は絵筆を片付ける。
二回目にしてはいい感じに描けたのではなかろうか。
ただ、小屋を描くのがあまりうまくいかなかった。
自然物は決まった形が無いので誤魔化しが利くが、寸法通りの形を持った人工物はもっときちんと描かなければ歪んでしまう。
「手前のワーム岩も歪んでるね。色を塗り始める前に、もっと形をよく見た方が良い」
私は飛び上がりそうになった。
いつの間にかベルカが私の背後に立っていたのだ。
「まあ、描き続ければそのうち上手くなるさ。明日アンタが寝不足で死ななければ、の話だけどね」
さっさと寝ろ。
ベルカは身振りでそう告げると、ふらふらと山小屋へと戻っていった。
いつの間にか陽が落ち、心地よい眠気が私の後頭部をくすぐっていた。
私は絵を完成させた達成感と危険地帯に乗り込もうとする緊張感との板挟みになりながら、おっかなびっくり寝床に就いたのだった。
この世界の岩はチート持ちなのでコピペして増やすことが出来ます。