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魔獣狩り成功……?

「無事、魔獣狩りは成功した! 皆のおかげだ、感謝する!」

「おおおおーーーっ!」


 アルベルトの言葉に、近衛たちが諸手を挙げて歓喜の声を上げる。

 うーん、折角城から外に出たのにもう終わりか。

 結局魔獣とは戦えなかったし、物足りないな。


「日はもう沈みかけている。今日はここで泊まって、帰還は明日にしよう」


 気づけばもう夕暮れである。

 夕日が湖面に反射して、とても綺麗だ。

 夜になったら抜け出して魔術の練習でも出来ないかなぁ……なんて考えていると、


「ロイド様、私たちのテントが用意出来ましたよ」


 テントの設営を終えたシルファが俺に微笑みかけてくる。

 かなり小さなテントだ。

 こんなところで二人で寝るのか……こっそり抜け出そうとしたら確実に目を覚ますだろうな。

 シルファだし、間違いない。

 はぁ、残念だけど今回の外出はこれで終わりかぁ。

 俺も魔獣を狩りたかったなぁ。


「さ、私は夕食の準備をしてきます。ロイド様はこちらでお待ちを――」


 ォォォォォーーーン……と、シルファの声と重なるように低い音が聞こえる。

 犬の吠え声? いや、これは……


「狼でしょうか……?」

「いや、それにしては少し声が太いような気がする……」


 普通の狼はもっと甲高い声で吠える。

 遠すぎて聞き取りづらいが、ベアウルフのそれによく似ていた。


 オオオーーーン……オオオオオーーーン……

 遠吠えは徐々に近くなっていく。

 しかも一つではない。周りの森中から聞こえてくるようだ。

 ここまで来ると近衛たちも違和感を感じたのか、騒ぎ始める。


「な、なんだこの咆哮は!?」

「どんどん近づいてくるぞ!」

「休んでいる奴ら、全員出てこい!」


 テントで休んでいた者たちもぞろぞろと出てきた。

 皆、緊張した面持ちで武器を構えている。


「ロイド、こっちへ来い」


 アルベルトの元へ小走りで行くと、近衛たちが俺たちを中心にして円陣を組む。

 辺りをピリピリした空気が漂い始めた。


「ウウウウウ……!」


 もう、すぐそこで唸り声が聞こえる。

 がさり、がさりと草むらが揺れ、そこから巨大な狼が顔を出した。

 ――やはり、ベアウルフだ。


「魔獣だ! まだいたのか!?」

「グルルル!」「ガオウ!」「グオオオオオオウ!」


 一匹だけではない。二匹、三匹と森の中から飛び出してくる。

 あっという間に俺たちはベオウルフの群れに取り囲まれてしまった。

 しかもそれだけではない。森の奥からはどんどん遠吠えが集まってきていた。


「馬鹿な……魔獣は群れないはず……それが何故こんなに……?」


 皆、狼狽えているがこれはチャンスだ。

 近衛たちは魔獣一匹でも苦戦してたし、これだけいるなら俺が倒してしまっても構わんだろう。

 もちろん下位魔術以外を使うつもりはないが、それだけでも十分だ。

 よっしゃ、テンション上がってきた。


「アルベルト兄さん、俺も戦います!」

「……! あぁ、わかった。期待しているぞロイド!」

「来ます!」


 シルファの声とほぼ同時に、ベアウルフたちが飛びかかってくる。


「ガオオオオオ!」

「くっ! アルベルト様とロイド様をお守りしろ!」


 近衛たちは密集し、俺たちの前に壁を作る。

 その奥からアルベルトが『炎烈火球』を放った。

 燃え盛る炎に焼かれ、のたうち回るベアウルフ。

 よし、俺もやってやるぞ。


「くらえー!」


 やや棒読み気味で放つのは『火球』だ。

 飛び出した火の玉はベアウルフの鼻先を焼き、怯ませた。

 そこへ近衛たちの斬撃が加わり、後退させる。


「ロイド様、なんでもっと強力な魔術を使わないんですかい? 上位魔術の一つでも使えばこんな奴ら一発で倒せるでしょう」

「だってすぐ全滅させたら面白くないじゃないか」


 せっかく魔獣相手に魔術を使う機会なのだ。

 どうせなら長く楽しみたい。


「そうだ、倒れた魔獣に治癒魔術とかかけたら、もっと長く楽しめるんじゃないか?」


 ついでに近衛たちにもかければ永久機関の完成だ。

 我ながらナイスアイデア。悪魔的閃きである。


「そ、そいつは流石にやめた方がよろしいかと思いやすが……」


 だがグリモはドン引きしながらダメ出しをしてきた。

 確かによく考えたら治癒魔術でも気力までは回復しないし、長期戦で気の緩んだ近衛たちが殺される可能性もあるか。

 流石に自分の実験で人が死んだら後味が悪いし、やめておくか。

 かといって確かに『火球』だけだとあまり面白くなさそうだ。


「じゃあせめて、『気』を試そう」


 覚えたばかりだから、生き物相手にはまだ殆ど検証してないしな。

 的も多いし当て放題である。

 俺は呼吸と共に右手に体内の『気』を集めていく。

 タオのやっていた『気功弾』だ。

 以前やった時は肺がめちゃくちゃ痛かったが、治癒魔術をピンポイントで肺に当てながらやればかなり痛みを和らげることができる。

 ……よし、いける。


「はっ!」


 それを『火球』で覆ってカモフラージュし、放つ。

 放たれた|火の玉(気功弾)はまっすぐ飛んでいき、ベアウルフに命中した。


「グオオオオッ!?」


 悲鳴を上げて吹っ飛ぶベアウルフだが、すぐに立ち上がってきた。

 いまいち効いてないか。

 純粋な『気』の攻撃だと、タオの足元にも及ばない。


「ろ、ロイド様、今のは一体……?」

「あぁ、『気』だよ。タオに教えてもらったんだ」

「な……っ!?」


 俺の言葉にグリモは驚いている。


「『気』ってのは確か大昔に戦った異国人が使っていた技だよな……長年の修行が必要って話だが……タオって小娘にあったのは数日前だろう? そんな短期間で覚えたっていうのか……? 信じられねぇ……」


 グリモはまた、ドン引きしているようだ。

 もしかして俺が手を抜いて長引かせようとしているとか考えているのだろうか。

 残念ながら全力なんだよなぁ。

 やっぱり『気』は難しい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公が転生して成長しても変わらず狂人で安心しました。 魔術は使ってその影響を見ないと正しい効果が分かりませんからね! 水魔法を耳みたいな小さい穴からぶち込めるのか? 体内に入れた魔法の制…
[一言] >あっという間に俺たちはベオウルフの群れに取り囲まれてしまった。 ベアウルフ?  
[良い点] ストーリーが面白い [気になる点] 主人公の思考がサイコパスなところ 巻き込まれる他の人達が見ていてかわいそう 前世ではさっさと死んで正解だったと思う [一言] 残念ながらギブアップ もう…
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