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転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます  作者: 謙虚なサークル


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下される、処分

「おわっ!? れ、レン!」

「……ロイド? 何その恰好? 角なんか生やして」


 俺の姿を見るや目を細め、首を傾げるレン。

 ここは大人しく説明した方が良さそうだ。


「あーその、実はかくかくしかじかでな」

「え? ロイドってば魔族になっちゃったの?」

「正確には魔王と融合してしまったんだ。ちなみに身体はあっち」

「うわぁぁぁっ!? ろ、ロイドが死んでるぅぅぅっ!?」


 駆け寄って抱き起こすレン。こらこら、勝手に殺すんじゃない。


「……あ、ほんとだ呼吸してる」

「あぁ、だが意識がこっちに混じってしまって分離が出来なくなったんだ。そこでレン、コニー、二人で俺が戻るまで、どうにか他の者たちを誤魔化して欲しい」

「ボクたちで……? 寝たきりのロイドを……? む、難しくない?」

「無茶は承知だ。グリモとジリエルに俺の身体を預けることも考えたが無理そうだしな」


 二人ともこの魔力体と混じっており、分離する出来そうにない。

 というわけでレンとコニーに頑張ってもらうしかないのだ。


「うーん、でもシルファさんを誤魔化すのは無理だと思う」

「そうだね。せめて寝たきりじゃなければまだしもだけど……」


 顔を見合わせ頷く二人。……そうだな。相手は僅かな違和感にすら気づくシルファだ。

 寝たきりで誤魔化すのは無理がある。


「じゃあ制御系統魔術を使って――と」


 俺自身の性格を模倣したものを術式化し、張り付けてみる。

 だいぶ深くまで術式を弄れるようになった今だからこそ出来ることだ。

 しばらくすると俺の身体がゆっくりと目を開くと、爽やかな笑みを浮かべた。


「やぁレン、コニー、おはよう。二人共、今日も可愛いね」

「げほっっっ!」


 吹き出すレン。コニーは固まっている。


「こんな可憐な美少女二人に世話して貰えるなんて、あぁ俺はなんて幸運なんだ!」


 くるくるとバカ踊りをしている俺の身体にその場の全員が固まる。


「な、なんですかいこいつはよ……」

「あまりにもロイド様の性格とは似ても似つきませんよ!」

「むぅ、失敗か」


 やはりどうも自分の性格を模倣するってのは難しいようだ。

 これじゃあ誤魔化すのは難しいか。


「……いや、でも逆にイケるかも。シルファさんとか喜びそう」

「うん、時々グリモやジリエルに任せて出かけてるみたいだけど、皆、案外気にしてないもの。私たちがフォローすれば多分大丈夫かも」


 と思ったら二人の評価は上々のようだ。……というか二人に任せて外出てたの、バレバレだったのか。

 まぁ俺は地味な第七王子だからな。皆もそこまで気にしてないのかもしれない。いやーよかったよかった。

 レンとコニーが白い目を向けてくるが多分気のせいだろう。


「しかし聖王へリベンジするって話から、とんでもないことになっちゃったな。面白そうだからって、あまり興味本位で動くのも良くないか。……それにしてもあいつ、どこへ消えたんだろうな」


 ――演奏中に消えてしまった聖王だが、隣にいたにもかかわらずその気配を全く感じなかった。

 聖王、か。不思議な奴だが、結局何者だったのだろうか。


 ◆


「――これはどういうことなのだ?」


 真っ白な空間に声が響く。それを受けバツが悪そうにしているのは聖王だ。

 向かい合う白いヴェールの向こうには人の影があり、そこからは厳かな空気が発せられていた。


「余は魔王を殺してこいと言ったはず。にも関わらず貴様はトドメも刺さず、更には奴が復活するのをむざむざ見過ごした。神たる我が言葉に逆らった理由、聞かせて貰おうではないか」


 静かな、だが強い口調。決していい加減な弁解は許さないという意志が感じられた。

 そんな神の圧力にさらされながらも聖王はヘラッと答える。


「そうですねぇ神サマ? 僕は常々思っていたんですが、魔族だからといってまだ何も悪さしてない者を倒す必要ってあります?」


 聖王は声の主を神と呼ぶと、つらつらと言葉を並べ始める。


「そりゃ大概の魔族は人なんて虫くらいにしか思ってないし、同族の命ですらゴミ以下に思ってるフシすらある、まさに邪悪な権化みたいな奴らばっかりですよ? 教義で悪と断じられるのも無理はないし、その親玉を殺せというのは十分理解出来ます。しかし聖王である僕くらいは倒すべき命を悪かどうかを確かめる必要があると思うんですよ。なんでまぁ、魔王ベアルの正体を見極めようとしたワケでしてね?」

「ほう……で、どうであったのだ?」

「まぁ類に漏れずとっても好戦的で野蛮な男でしたけどね。殺されるかと思いました。ガチで。はっはっは」


 聖王は笑いながら言葉を続ける。


「国を挙げての歓迎際の中、突如結界に囚われたかと思うとそのまま襲われちゃいましたよ。いやぁ、大地は割れ、空は裂けとはまさにこのこと。魔曲でどうにか凌げましたが、次は死なない補償はないって感じでしたね」

「ならば何故、トドメを刺さなかったのだ。奴は危険極まりない存在だったのであろう?」

「それだけだったから、ですよ。彼は僕を倒そうとはしましたが、他の人間を巻き込もうとまではしなかった。そんなただの乱暴者を一方的に悪と断じるなんて、平和主義者である僕としてはとてもとても――」


 やれやれとばかりに聖王が首を横に振ったその時、辺りに豪風が吹き荒れる。

 神の怒りを表すかのようなその嵐は次第に勢いを増していく。


「ふざけるのも大概にするのだな。力には責任が伴う。聖王の座は覚悟なき者に与える程、安くはないのだぞ」

「――おいおい、それはこっちのセリフだぜ」


 不意に聖王の口調が変わる。

 静かに、そして強い口調。それは今までの聖王とは全く違って思えた。


「教義ではあらゆる命は等しく意味があるんじゃないかよ。なのに魔王ってだけで最初から殺しにかかるなんて、そんな雑な奴にあらゆる存在を裁く資格があるとは思えないな」

「貴様……!」


 神は強い怒気を帯びた様子で威圧するが、聖王も負けじと応ずる。その押し合いは激しい嵐を生み出していた。

 それに煽られ、二人を挟むヴェールがばたばた暴れる。


「相手を知りもせずに殺すなんてやり方は、余裕のない弱者にのみ許されたことだ。弱肉強食の世界において、それはある意味仕方ないだろう。でも僕は聖王、圧倒的強者である神の言葉を伝えるという立場なんだ。故に相手の言葉を聞き、行動を判断し、その上で判決を下す義務がある。天界の主、神であるあんたがそんな雑な判決下すのを許せるわけがないだろう」

「愚か者が! そうして対応を遅らせた結果、守るべきものが滅びたらどうするというのだ!」

「だからそいつは! 弱者の理屈と言ってるんだぜおじいちゃん!」


 聖王が吠える。いつもの腑抜けた顔ではなく、真剣な面持ちだ。

 吹き荒れる威圧の奔流が彼の髪を靡かせる。


「『俺』はあんたの命令で色んな奴らを見てきた。強い奴、弱い奴、良い奴、悪い奴、清廉な奴、汚い奴、フェアな奴、卑怯な奴、事情がある奴にない奴、人間、亜人、そして魔族……強い魔族が悪い魔族をまとめ、被害を止めることだってあるし、弱い人間が強い人間を扇動し混沌をもたらす事だってある。誰が悪か善かは簡単にわかることじゃあない。なのにあんたは処罰対象を適当に選んでいるようにしか思えない」

「……私にはそれがわかるのだ」

「嘘をつけよ。この間指定された亜人を倒したら、その地の封印が解け魔物が溢れたぜ。その前の人間を倒したらその地で大きな反乱が発生した。それだけじゃない。似たような事例はわんさかあったよ」


 聖王の脳裏に浮かぶかつての記憶。

 命じられるままに力を振るい、その度に混乱を招いていたことを。

 その度に膨れ上がる疑問、それを胸に仕舞い込み、いつしか心を閉ざしていたことを。


「そんなザマで本当に神と言えるのかよ。僕にはそんな恥知らずな真似、とても恥ずかしくてできないぜ」


 不意に、吹き荒れていた威圧の嵐が止む。

 戸惑う聖王。ヴェールの向こうでは神がゆるりと頬杖を突いた。


「おっと、何か言い訳を考えついたのかい? それともシャッポを脱いじゃう? さぁ僕を説き伏せてくれよ。神の知恵ってやつでさぁ」


 煽る聖王に神はただ、冷たい視線を向けて言う。


「……残念だ。お前には目をかけていたのだがな」


 瞬間、光が溢れる。それは聖王を包み込み――


「ッ!? ま――」


 言い終わらぬ内、周囲を全て純白に染め上げた。

 そして――聖王はその姿を消しており、ヴェールの向こうでは神がふんと退屈そうに息を漏らすのだった。


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