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新曲完成です

 ◆


「くそったれがァ!」


 どがぁ! と破砕音が辺りに響く。

 月夜の荒野にて、先刻まで雄々しく聳え立っていた大岩が見るも無惨な姿になっていた。


「こらこら、イライラするのは身体と心に良くないぜ。ギザギザくん」

「誰がギザギザだっ! ……チッ、まぁいい。それよりそろそろ教えろ。俺を黄泉返らせた理由をな」

「うーむ、と言っても僕的にはそのつもりはなかったんだよねぇ……」


 ポリポリと頭を掻きながら聖王は言葉を続ける。


「僕が使った『よびだしのうた』はターゲットに因縁深い存在を魔力により具現化させるという魔曲でね。今回はロイド君と因縁深い敵を味方に付けようと思ったのだが、何故か君が来たってワケ。……ていうか本来はこういう技じゃないんだよねー。彼みたい子供が恨みなんて買うのはせいぜい同学年の子供や悪い大人くらいでしょ。僕としてはそうして呼び寄せた人から情報収集しよう思っただけなんだが、まさか魔族が出てくるとは……全くとんでもない子だよ。ロイド君は」


 それは貴様も同じだがな、とギザルムは内心で呟く。

 消滅した魔族は粒子となり、何百年もの長い年月をかけて形を取り戻していく。

 奴の術、魔力により具現化させるという触れ込みだが、ここまで元通りにすることなど到底できるはずがない。

 しかも聖王に逆らおうとすると、即座に身体の霧散が始まる。恐らくなんらかの『縛り』を入れられているのだろう。


(だが一体なんなんだ……この溢れるような力は……?)


 燃え沸るような力の奔流、以前の自分とは明らかに違う。

 己の魂に他の何かが混じっている感覚。存在しないはずの記憶が、在る。


(学園、炎、光の弓……? くっ、頭痛がしやがる……!)


 恐らく他の魔族が混じっているのだろう。

 ……まぁあのガキなら魔族を何人かを殺していてもおかしくはないか。


「大丈夫かい? 僕の魔曲は神の力でもあるから、自分でもよくわからない部分があってさ。特に魔族を復活させたのは初めてだし悪いところがあったらすぐ言いなよ?」

「……今のところは大丈夫だ。問題ない」

「ふーん、ならいいけど……そういえばあの子も大丈夫かな。ほら演奏会にいたあのメガネっ子」

「あ?」

「上手な演奏してたけど、心配だなぁ……僕の影響、受けてなきゃいいけど……」


 神妙な顔で呟く聖王、それを見てギザルムは首を傾げるのだった。


 ◆


 というわけで、サルーム野外ライブフェスに向けての準備が始まった。

 アルベルトの心配を他所に民衆は意外と乗り気で、お触れが出るなり祭りの準備を始めている。

 新たに屋台や出店の準備、食材や飾りつけで大量の取引が行われ、他国からの演奏者が集まり、城下の宿は予約で一杯だとか。

 とは言え俺は曲作りで忙しいし、外に遊びに行っている余裕はない。

 ディアン兄さんたちも参加するとか言ってたっけ。なんかディガーディアが動いているような……気になるけどこっちに集中しないとな。


「出来た……!」


 譜面を前に声を漏らす。

 そんなこんなでようやく曲が完成した。

 息抜きで色々な音楽を聴いたからアイデアが浮かんだ部分もあったし、気分転換も悪くなかったかもな。


「うおおおお! 譜面を見るだけで分かる名作感! これをサリアたんとイーシャたんが演奏したときのことを考えると……あぁ、天にも昇る気持ちです!」

「勝手に昇ってろ。ただし二度と降りて来るんじゃねぇぞ。それはそれとして素晴らしい曲だと思いやすぜ。ロイド様よぉ」


 グリモとジリエルの言葉にうなずいて返す。

 俺からしてもこの曲は結構な完成度だ。


「ていうかロイド様、出来たのはいいが曲作りに時間かけすぎちまったんじゃねぇですかい?」

「そうですとも。聖王がいつ来るともしれません。そろそろベアルを復活させねばなりますまい」

「あ、そういえばそんな話だっけ」


 完全に忘れていたが、元々ベアル復活の為に曲を作っていたんだっけ。

 フェスまで時間はあるし、リハーサルとか適当に言いくるめてさっさと復活させた方がいいだろう。


「それにしても聖王の奴、この一週間全く姿を見せなかったな」


 もう一回くらい襲ってくるかもと警戒していたが、やはりもう帰ってしまったのだろうか。

 ベアルを回復させたら一度じっくり戦ってみたかったのだが……ま、直接会いに行くという手もあるし、今は気にする必要はないか。


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