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転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます  作者: 謙虚なサークル


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戦利品の確認です

「というわけで戦利品の確認だな」


 その夜、夕食を終えた俺は早々に部屋へ戻り鞄を広げた。

 ダンジョンから持ち帰った光石、ストーンスライムの欠片、宝箱の切れ端、魔術が付与された短剣をベッドに転がす。


「ロイド様、なんですかいそりゃ」

「ダンジョンから持ち帰ったのさ」

「どうりで遅いと思ったら、ダンジョンを攻略してきたんですかい……」


 呆れたようにため息を吐くグリモ。

 だから悪かったって。


 まず手に取ったのは光石。

 タオの言っていた通り、ダンジョンから出したことで光を失っているようだ。

 ちょっと削ってみるか。

 水系統魔術『水刃』にて、光石をゴリゴリと削っていく。

 固いものを削る場合、質量のない『風刃』よりは質量のある『水刃』の方がやりやすい。

 削り出してみたが、石の内部には特に気になる点は見受けられない。

 どこにでもあるごく普通の石だな。


「俺の仮説と合わせて考えると、ダンジョンの核は様々なものを取り込んで成長する。恐らくこういった石や土を取り込みながら、ダンジョンを作ったんだろうな」


 ということはダンジョンで採取したものは、その場を離れると元の物体に戻るのだろう。

 こっちの宝箱の破片は……駄目だ。全く魔力を感じない。

 核というのは恐らく魔法生物とでもいう存在、切断した時に死んでしまったのだろう。

 ちなみにストーンスライムの欠片もただの土くれに戻っている。

 ダンジョンから離れたので、元の土に戻ったのか。


 だがリッチは自分のダンジョンから離れても平気そうだったな。

 高レベルの魔物ともなれば、また違うのかもしれない。


 ……いや、ダンジョンが一匹の巨大な魔物と考えるとどうだ?

 強力な魔物には単独で活動できるよう、核があると聞いたことがあるし……まぁ仮説の域を出ないか。


「ともかく、何となくだがダンジョンというものがわかってきたな。だがまだまだ仮説の域を出てないし、もう少しサンプルが欲しいところだ。そのうちまたダンジョンに潜りたいな」

「ロイド様は魔術師でしょう? ダンジョンについても調べるんですかい?」

「何が魔術に使えるか、わからないからね」

「はぁ、そういうもんですかねぇ」


 魔術というのは様々な要素が組み合わさった学問だ。

 である以上、この世の森羅万象との繋がりがある。

 そもそも、火や水がなければ魔術でそれを生み出すことも出来なかったわけだ。

 まぁ知識はあればあるだけ自分のためになる。

 この知識がいつか何かに使える時が来るかもしれないしな。


「ダンジョンについてはこんなもんだろう。さて、次は付与魔術だな」


 付与系統魔術に関する魔術書はそれなりにあったが、それを試すには特殊な触媒が必要なのである。

 それがこの短剣に塗布された魔髄液。

 魔力に対するとても強い保持力があり、浸透性も高いので、よく触媒に用いられるのだ。

 それなりに貴重なもので基本的には有望な鍛冶職人たちにしか出回らないらしく、中々手に入れる機会がなかったのである。

 やることは他にもたくさんあったので、後回しになっていて、実際に試したことはない。


「まずは魔髄液を剥がす……と」


 えーと、やり方は確か熱湯に塗布された箇所を浸け、こすって落とすんだっけか。

 魔術で湯を沸かし、その中に短剣の刃を浸けてブラシでこすると、油のようなものが浮き出てくる。

 これが魔髄液だ。

 熱で剥がれるが水には溶けないので、湯の表面部分に浮き上がるのである。

 それを掬い取って小瓶に入れていく。


「むぅ、不純物が浮いているな。多分何度もこうやって再利用したんだろうな」


 魔髄液は不要になるとこうして剥がし、また新たな付与魔術の為に使える。

 だがそのたびに汚れが増えていき、純度が下がる。

 そうすると当然付与魔術の効果も薄れてしまうのだ。


「なら、綺麗にしてやればいい」


 小瓶に手をかざし、魔力で包み込む。

 すると液体の中から小さなゴミが浮き出てきた。


「……ロイド様、こいつは何をしてるんですかい?」

「不純物を取っているんだよ」


 水系統魔術『純度上昇』

 これは液体に作用する魔術で、文字通り不純物を排除するものだ。

 川の水を飲料水としたり、燃料などに混じったゴミを取ったりと使える幅は広い。

 ただあまり純度を上げすぎると混合物は完全に分解されてしまうのだ。

 以前、茶の純度を上げすぎて水にしてしまったことがある。


「そんな繊細な事を魔術で……? はぁ、改めて思いやすが、ロイド様の魔術は大したもんですな」

「俺が開発したわけじゃないよ。魔術は常に進歩している、グリモがいた頃より色んなことが出来るようになっているのさ。……よし、ゴミを掬って、と。うん、綺麗になった」


 魔髄液は先刻と違い、かなり透明度が増しているように見える。

 そういえばこの魔髄液には何の術式が込められているのだろう。

 ちょっと見てみるか。

 液体に込められた術式へと意識を集中させていく。


「……ふむ、これは強度増加の術式かな」


 物体に込める術式の中でも最もポピュラーな術式だ。

 高価な剣などはこれで強化しておけば簡単には折れない。

 だがこの術式、相当昔から使いまわしてるな。

 めちゃくちゃ古臭いし非効率な術式だ。

 ちょっと書き換えよう。

 こんな術式はもう破棄してもいいか。

 大分容量が空いたな。これなら強度増加も三重くらい編み込める。

 ついでに弾性増加もしておこう。

 これがあると金属に粘りが出て、とても丈夫になるからな。


 ……よし、こんなもんか。

 あとは短剣にもう一度塗布して、と。


「出来た!」


 手にした短剣の刃先は先刻と違いピカピカだ。

 試しに宝箱に刃先を当ててみると、面白いようにスパッと切れた。


「おお、見事なもんですな!」

「うん、いいね」


 これが付与魔術か。中々面白い。

 もっと試したいところだが、魔髄液がないんだよなぁ。


「……ないなら作ってみるか」

「そんな事ができるんですかい!?」

「原料の段階まで分解すれば、配合材料と比率がわかる。それを組み合わせれば再現出来るはずだ」


 というわせで余った魔髄液を小瓶に入れ、『純度上昇』を発動させる。

 ただし今度は強化の術式を編み込んで、だ。

 こうする事で原料にまで戻す事が可能。

 術をかけてしばらく、魔髄液の色が黄色く変わり始める。

 更に液体の中から様々な結晶が集まり、底に溜まっていく。

 よし、分解完了。


「へぇ、こいつが魔髄液の原料ってわけですか」

「そういうこと。液体部分は……ただの油だな」


 油は魔術とも金属ともに相性が良い。

 だからある程度想定していた。


「中の結晶は……主に銀か。貨幣で代用できそうだ。こっちの赤い粒は赤魔粉だな」


 赤魔粉は強力な魔物の心臓部にある核をすり潰して出来た粉。

 魔力を非常によく通し、液体とも混ざりやすいので様々な素材に用いられるのだ。


 そしてこの赤魔粉、ダンジョンの核と並べてみると、非常によく似ている。

 やはりダンジョンというのは、俺の予想通り魔物の一種なのだろう。

 つまり手に入れたダンジョンの核をすり潰せば使えるな。

 こっちの材料もクリアだ。


「ってことは……ここにあるもので魔髄液は出来そうだな」

「おおっ、すげぇぜロイド様!」


 構想がわかればやってやれない事はないはずだ。

 よし、明日材料集めて調合してみるか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 分解ではなく分離で良いのであれば、ただの混合物である可能性が高いです。 混合には大抵熱か触媒を使うので、熱ならただアタリを引くまで繰り返すだけですし、触媒なら分離技術の浅そうな世界では一緒に…
[気になる点] 作者さんは、原料とその比率が分かればモノができると思っているのがこの話でわかりました もう少し、理科を学ばれてはいかがですか?
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