学園生活を満喫中です
学園編後半、始まります。
俺はサルーム王国第七王子、ロイド=ディ=サルーム。
魔術大好き十歳。前世ではしがない貧乏魔術師だったが、通っていた魔術学園で貴族に目を付けられ、決闘という名の私刑を申しつけられてしまう。
そこで迂闊にも初めて見る上級魔術に見とれてしまい、防御を忘れて命を落とし、気づけばこの身体に転生していた。
王位継承権とは無関係の第七王子という事で、自由気ままな魔術ライフを送っている。
そんな俺だが、今は色々あって魔術の祖ウィリアム=ボルドーの設立した学園の魔術科に通っている。
学園で出会ったウィリアムの子孫、ノアとガゼルと仲良くなった俺は、かつて人類と魔族の戦で封印されていた魔軍四天王の一人、ヴィルフレイと対峙、勝利した。
そして今、二人の頼みで封印された魔族を倒して回っている最中である。
「では行きますよ、ロイド」
ノアの言葉に頷いて返すと、ガゼルが目の前の大きな石に手を触れる。
と、無数の術式が石の表面に浮かんでは消えていき、しばらくするとぴしり、とヒビが入った。
石は割れ、中から黒いモヤのようなものが出てきて人の形を成していく。
「くくく……我が封印を解かれる日が来るとは夢にも思いませんでしたよ。再封印の失敗か、はたまた人間のレベルが落ちたのか……理由は不明ですがともあれこうして外へ出れた以上、存分に暴れさせて頂きましょう! まずはあなた方にお礼を差し上げなければなりますまい。高貴なる魔候貴族序列三位たるこのネーデルヴァイン様が直々に血祭りにして――」
「灰魔神牙」
俺が放った白と黒が入り混じった魔力の矢が、螺旋を描き目の前の魔族を貫く。
「ぐあああああっ!……ば、馬鹿なぁぁぁっ!? 魔候貴族序列三位であるこのネーデルヴァイン様が、人間の小僧如きにぃぃぃぃっ!?」
断末魔の悲鳴を上げながら消滅していくネーデルなんとか。
消えゆく魔力の塊を見ながら、俺はあくびを一つした。
「封印魔術、神聖魔術、そして古代魔術の三重詠唱魔術、か。相変わらず凄まじい威力だぜ。魔候貴族ですら一撃とはよ」
呆れた顔でため息を吐くのは魔人グリモ、俺の使い魔で普段は掌に宿っているが、時々外にも出てくる。山羊の姿をしている。
「しかしお疲れの様子ですねロイド様、ここ最近は毎日のように封印された魔族どもを消していますから無理もありませんが……どうぞご自愛下さいませ」
そしてこちらは天使ジリエル、こちらも俺の使い魔で同じく掌に宿っている。出て来る時は鳥の姿をしている。
心配するジリエルに俺はあくびで返す。
「ふぁーあ……疲れてはないよ。退屈なだけだ」
最初は貴重な魔族と戦えるということで少しは楽しめたが、ヴィルフレイで大体魔族相手の実験は終わったからなぁ。
というか灰魔神牙が反則過ぎて、面白味に欠けるのだ。
それでも俺が封印魔族を消滅させているのは、ノアたちから協力を頼まれているからだ。
魔人、魔族の封印にはボルドー家に代々伝わる血統魔術にて行うらしいのだが、その強力さ故に術者の寿命を削るらしい。
優秀な魔術師であるノアとガゼルを失うのは封印魔術の発展が阻害されるし、二人にはボルドー家秘蔵の貴重な書籍を沢山貸して貰っているので、面倒ではあるが協力しているのである。
「ほぼほぼ私利私欲の為ですな……」
「非常にロイド様らしいです……」
グリモとジリエルが呆れているが、ちゃんと仕事はしているのだから対価を貰うは当然というものだろう。失礼である。
「しかし二人でも使えるよう、封印魔術の色々制限を取っ払い簡略化したんだけどなぁ」
寿命を削るなどの重い制約を外しはしたが、その代わり若干術式が複雑化、更にちょっとだけ長くなった。
二人にやらせてみたところ、「とても人間技ではない」「不可能が過ぎる」「一生かけても無理」「例えるならクソムズいパズルを三つ同時に解きながら、一キロの綱渡りを片足で行うようなもの」……と散々な評価で、結局俺がやることになったのである。
別に無理ってことは無いと思うけどな。
むしろこれくらいの難易度じゃなきゃ燃えないとおもうのだが。
「皆が皆、ロイド様と同じような力を持っていると思ったらダメですぜ」
「然り、ロイド様は規格外中の規格外なのですから」
人を化け物扱いするのは失礼だと思うぞ。
とはいえ二人はまだ未熟だが、素質自体はかなりのものだし、何より勤勉だ。
そのうち自分で魔族くらいは倒せるようになるだろう。うんうん。
「さて、今日のノルマはこのくらいかな?」
封印の祠から出た俺は、青空に向かってうーんと伸びをする。
「えぇ……というか倒して欲しい程の魔族はこのくらいです。あとは再封印まで数年の期間があるものが多く、その殆ども下位の魔族や魔人ですしね」
「おうとも、ガチバトルになっても俺たち二人で力を合わせりゃ何とでもなる相手ばかりだぜ。封印処理にしくじったら倒せばいいだけのことよ。……それにこれ以上ロイドにおんぶに抱っこされてたら、ご先祖様に顔向け出来ねぇぜ」
ノアとガゼルは互いに目配せをし、苦笑する。
ほらな、この二人はちゃんと向上心はあるのだ。
この調子なら遠くないうちに、俺が作った術式も扱えるようになるだろう。
俺が満足して頷いていると、二人は難しい顔で言葉を続ける。
「……それに、他の魔軍四天王を逃した以上、我々の戦力向上を優先すべきでしょう。一対一ならまだしも、複数同時に襲われたら如何にロイド君とて一溜まりもないでしょうし」
ヴィルフレイは倒した後、ノアたちはまず最初に他の魔軍四天王の封印の祠を確認に行った。
しかし祠は破壊されており中は空っぽ。ヴィルフレイが仲間の封印を解いたのだろうという結論に至ったのである。
他の有力な魔族も数体が解放されており、連中が同時に俺に襲いかかってきたら危険だろう、ということだ。
「……まぁ確かに俺一人でそんな大量の魔族相手にしたら、周囲に相当な被害が出るだろうな」
連中の戦闘力は相当なものだ。ヴィルフレイの時のように結界で隔離されていればともかく、まともにやり合えば周囲はただじゃ済まないだろう。
間違いなくその国は滅びるだろうな。そういう意味では不安はあるが……
「だがよぉ、お前らがどんなに頑張っても四天王相手じゃ屁のつっぱりにもならねーぜ?」
「然り、ロイド様の助けどころか、足手まといになるのがオチでしょう」
割と酷いように思えるが、グリモとジリエルがそこまで言うのも仕方ない。
実際二人の戦闘力は、よくてグリモたちと互角程度だろう。多少鍛えた程度ではどうにもなるまい。
「君たちの言わんとすることはわかっていますが、私たちとて何も考えずに言っているわけではありません」
「あぁ、始祖ウィリアムは強力な魔族の再封印を失敗した場合を想定し、もう一つの手段を設けていたのさ。祠の封印が解除されたのを条件に地下深く広がるダンジョンが開かれる。その最奥には始祖すら危険すぎる為に封印した禁術、禁具……すなわち遺産が置かれているのさ。それを使えば俺らの力も上がるってわけだ」
その言葉に俺の耳がぴくんと動く。
ウィリアムの封じた禁術だと……? そんな面白そうなものを隠していたなら先に言って貰わないと困るんだが。
当然、俺の次の言葉は決まっている。
「よし、そこへ行ってみようじゃないか!」
「えぇ……」
俺が手を突き上げると、二人は何やら不条理そうな顔をするのだった。
新作書きました。よろしければ読んで下さい。
オルティヴ・オンライン~キャラメイクで見た目に全振りしたら、現実まで引っ張られた件
丁度第一部が終わったので読み頃です。
自信作なので是非!
https://ncode.syosetu.com/n6212ig/




