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転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます  作者: 謙虚なサークル


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魔道具部に入部しました

「ようこそロイド君、ここが我が魔道具部だよ」


 コニーに案内されて辿り着いたのは、校舎からかなり外れた物置小屋だった。


「見るからにボロですね。彼女以外部員が入らなかったのも頷けるというものです」

「でも外から見るより中は広そうだな。とりあえず入ってみよう。お邪魔しまーす」


 扉を開けて中に入ると、部屋の中には色とりどり、奇々怪々、一種異様……そんな物体たちがうず高く積み上がっていた。


「おおー、すごい数の魔道具だ」

「歴代の先輩方が作った物が殆どだけどね。置き場がなくてこうなっちゃったみたい」


 成程、魔道具のスペースを確保する為に離れた場所に部室を作ったというわけか。

 眺めていると、それらの中でも幾つか目立つ物を見つける。


「これとこれとこれ、コニーが作った物だろう?」

「! よくわかったね」


 わからいでか。コニーの作った魔道具のクオリティは他のとは一線を画している。

 術式の密度、洗練された美しさ、その構造の巧みさ……まさに見ればわかるというやつだ。


「ふーむ、私には違いが判りませんが……ロイド様が仰るならそうなのでしょう」

「あぁ、これなんか見てみろ。こんな小さいのにすごいピカピカ光るぞ」


 転がっていた箱状の魔道具を拾い、スイッチを押してみると中から様々な色の光が飛び出し、音楽が鳴り始める。

 オルゴールの超すごい版って感じかな。勿論音質も全然違う。

 他にも勝手に踊る人形や、自動で動く車のようなものなどを作っているようだ。

 あのガラスチューブが渦巻いたような巨大な装置は何に使うのだろう……どれも面白いな。


「しかしコニーの作成した魔道具は妙な物ばかりですね。確か魔道具というのは魔術を使えない者が魔術師に対抗する為に作られたはずですが」


 ジリエルの言う通り、魔道具というのは魔術の代わり、もしくは兵器として使われるような物が殆どだ。

 しかしコニーの作った魔道具はどれも殺傷能力を感じられない。術式自体は見事なものだが、言ってみれば子供のおもちゃみたいな物ばかりである。


「私の作った魔道具、変わっているでしょ? 普通、魔道具は武器として使うのが殆どだけど、私はそう言うのあまり好きじゃないから」


 そういえばコニーはあまり武器のような魔道具は作らず、学園では変わり者扱いされている。

 おかげで先生たちの評価もあまりよくないみたいだが――


「わかるよコニー、俺も同じだ」


 俺もまた魔術の楽しさ、術式の美しさに惹かれてこの道に入ったクチである。別に威力は求めてない。

 だから魔術において攻撃力において攻撃力のみが評価される現状は好ましくないし、何の為にあるのかわからないような魔術だって俺にとっては等しく価値がある。


「ロイド君はわかってくれるのね。……なんだか嬉しい」


 そう言って俯くコニーはなんだか嬉しそうだ。


「魔術に威力は求めてない、ですか。確かにロイド様の魔力を持ってすればどんな下級魔術でも威力は十分過ぎますしね……」


 ジリエルの言う通り、逆に高位魔術は威力があり過ぎて使い難いくらいである。

 俺が下手に撃つと周りの地形を破壊してしまうからな。

 だから基本的に俺は攻撃魔術を使う際はかなり威力を絞っているくらいだ。


「そうだコニー、よかったら魔道具に魔力をチャージしようか?」


 魔道具というのは術式を利用している為、魔力がなければ動かない。

 故に魔道具使いは知り合いなどを頼ってどうにか魔力を集めなければならないのだ。

 その役目を買って出たわけだが、


「いいや、気持ちは嬉しいけど必要ないよ」


 断られてしまった。

 コニーが目配せする先、そこには巨大な滑車のような魔道具が置かれている。


「あれは回転式蓄魔機というものでね、回転エネルギーを魔力に変換する魔道具なんだ。それで魔道具に使う分の魔力は十分に賄えているんだよ」

「へぇ、面白いな」


 車輪を軽く回してみると、確かに滑車の動きに連動して魔力が発生しているのが分かる。

 ふむふむなるほど。滑車とその接地面に片側ずつ術式を付与し、回転のたびに術式が完成。魔力を発生させるというわけか。


「ちょっとやってみてもいいか?」

「もちろん」


 コニーの了承を貰い、俺は車輪の中に入る。

 この中で走れば車輪が回転するというわけだな。


「まるでハムスター小屋に入れる滑車ですね……」

「洒落が利いてていいじゃないか。それに構造も理に適っている」


 大掛かりに見えて一部の無駄もない設計。これならかなりの魔力を生み出せるだろう。

 さーてどれほどのものか、試させてもらうとするか。


「ふっ……!」


 掛け声と共に駆けだすと、ずっしりとした重みが足に掛る。

 とはいえ問題はなし。滑車の中で走り始めると、横部に設置された蓄魔ゲージが増えているのが見える。

 ほうほう、回す速度を上げれば魔力の堪る速度も上がるんだな。……よーし、ちょっと本気出してみるか。

 そうと決まれば俺は『身体強化』を多重発動させる。全身に力が漲り、筋力が増大、身体が一回り大きくなった。俺は溢れる活力の赴くままに足を踏み出す。

 ぐん! とゲージが上昇する速度が一気に上がっていく。


「100……200……す、すごい勢いで魔力が貯まっていくよ!」

「これがロイド様『身体強化』……そこらの力自慢など比べ物にならない程の運動能力、見事な肉体美でございます」


 二人は驚いているが、この姿はいまいち動きにくいんだよなぁ。

 無計画に鍛えた筋肉はしなやかさに欠け、身体も傷めやすいとかシルファも言ってたし。


「もう十分だよロイド君! それ以上はパンクしちゃう!」

「おっと」


 どうやら魔道具の方が限界が来たようだ。よく見ればバチバチと火花を散らしている。慌てて滑車から飛び降りる。

 ……ふぅ、すごく熱くなっている。危うく壊してしまうところだったな。

 コニーと胸を撫で下ろしている。


「ごめんごめん、やり過ぎた」

「……こちらこそ注意不足。ロイド君て思ったより運動出来るのね」


 まぁ全部魔術のおかげなんだけど。あとはまぁ、シルファに鍛えられてるからな。

 ともあれ、しばらくはコニーと魔道具作りに勤しむとしますか。


「ロイド様、それにしても妙だと思いませんか?」


 部活動が終わって帰宅途中、ジリエルが声をかけてくる。


「コニーの作成した魔道具は機能の割に異常に魔力貯蓄量が多く作られているように見えます。子供の玩具程度のものにここまでの魔力は必要ありますまい」

「そういえばそうだな」


 魔道具の術式は粗方見せてもらったが、どれもこれも魔力貯蓄量、更にその消費量が妙に多い。

 コニーの技量ならもっと減らせるだろうに。むしろ消費量を多くしているようにすら思える程だ。


「特に彼女は魔力を持たない身、普通なら出来るだけその消費量を減らすべきかと思うのですが、これでは逆でしょう」

「偶然じゃないか? もしくは何かの実験とか」


 術式というのはかなり複雑で、何が起こるかわからないものだ。

 俺も魔術の威力を減らそうとして逆に上がってしまったり、暴発したことも結構あるからな。


「そう、ですね。わざと増やす必要もありません。あの回転式蓄魔機を稼働させるのも大変そうでしたし」

「俺が大分貯めておいたから、しばらく持つんじゃないかな」


 あの蓄魔機もかなり貯蔵量がありそうだったしな。


「ロイド様ぁー! 生徒会の仕事、終わりやしたぜー!」


 そんな話をしていると、木形代とグリモが帰ってきた。


「おかえりグリモ」


 あの顔からして上手くやったようである。

 どれ、後でどんな楽しいことをやっていたか、聞かせてもらうとするか。

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