第六節 コリジョンルール
第六節 コリジョンルール
(確かパワプ〇のランナーだったら、一塁へ行ったあと、二塁へ向かうんだったな。ゲームとは景色が違うので勝手が違う……)
松本は一塁ベースを蹴った。
「外野! 何気ぃ失ってんだ⁉ 早くボールを返せ!」
相手のショートが気を取り直して外野手へ叫ぶ。
「そ……そうだ!」
外野手はボールを追う。ボールに追いつく外野手。カットまで返球する。カットマンが振り返る。そこには二塁を陥れた松本の姿があった。
(確か……ボールを持ってる奴にタッチされたらアウトだったな)
(回想)
イブキと松本がパ〇プロをしている。
「ボールセカンド! タッチしてアウトォ!」
「どこがだオッラーン‼ リクエスト! リプレイ検証だゴラァ‼」
イブキが叫んでいる。
(回想終了)
(パワ〇ロでは三人称視点だが、実際にやると、当たり前だが、一人称視点……厄介だ……)
松本は汗を流しながら思った。
「松本ぉ――、ランナーコーチャーの言う事を聞けよ――‼」
1番セキズは松本に声を掛けた。
(ランナーコーチャーとは……何だ……?)
恥ずかしくて聞けない松本。
(松本は……俺が還してやる……そうしたら、0―5! ワンプレーで絶対に同点にもならない。そんでウチの勝利はほぼ、決まったも同然……‼)
気合を込めて、セキズはバッターボックスに向かう。
「シャアス!」
何故か挨拶をして、バッターボックスに入った。
初球――、
「ビュン」
「! (危ねぇ……‼)」
インコースだった。そこから、
「ググッ」
「ズバン」
「ストライーク‼」
「⁉ スライダー⁉」
ボールからストライクになる変化球だった。
「こちらとて、出し惜しみしてられんのでな……」
相手キャッチャーがぼやく。
(あっぶねー、ストライクになって良かったー)
ポーカーフェイスを装うも、心中、穏やかでは無かった。
「成程……(あちらとて、本気……ならば!)」
セキズもそっと返す。
第二球――、
「ビュン!」
「ググッ」
(! マズい、曲がりが早い‼)
「キン‼」
「こっちもマジで行かねぇとな」
打球は三遊間!
鋭く内野の間を破って行く。セカンドランナー松本は三塁に達した。
三塁ランナーコーチャーは考える。
(どうだ……? 松本の走る速さは平凡……打球は速い……でも、相手レフトの肩は……)
松本は三塁を大きく回った。
瞬間――、
「行け! ホームまで突っ走れ――‼‼‼」
ランナーコーチャーは叫んだ。
ホームに突入する松本。
ボールが返って来る。
ワンバウンドで、レフトからここしかないゾーンに返ってきた。
そして――、
「ドッガァァアア!!!」
松本はキャッチャーにタックルした。
「ドッ……ドッ……ドド」
二度三度グラウンドを跳ねるキャッチャー。その際に、ボールをしっかりこぼしていた。ホームベースにタッチする松本
「よっしゃ!」
『よっしゃじゃねーよ‼』
両軍ベンチから声が飛んだ。
「ヒーズアウッ!」
「何だと? 何で俺がアウトなんだ⁉」
松本は吠える。
「なんしょーん? ねーわー。マジでねーわー」
一塁ベースから声を飛ばすセキズ。少々訛っている。
「何でだ⁉ パワ〇ロ9では体当たりという特殊能力が……」
タカマサがベンチから颯爽と現れて、松本を諭す。
「お前は、コリジョンルールでアウトなんだ。ベンチへ下がってくれ」
説明しよう! コリジョンルールとは、野球における本塁での衝突コリジョンを防止するための規則である。ランナーは捕手または野手に接触しようとして走路を外れることを禁じるものである。タックルなどもってのほか。
「wikiを見やがったな?」
千葉は呟く。どうやら千葉は作者に手厳しい様だ。
「! お前がそこまで言うなら……」
松本は大人しくベンチへ下がった。
「いいか? パ〇プロ9のルールは古い……」
一方でグラウンドホーム周辺。
「ピクピク……」
泡を吹き痙攣を起こしているキャッチャー。
「こりゃあダメだな……」
主審はキャッチャーの交代を促す。
「○△□×高校!」
『!』
ベンチは主審の声に反応する。
「今度同じ様な事があれば、没収試合にするからな」
「す……すいません」
一番にキャプテン小山田が謝る。
「すいません」
「すいません」
「すわせん」
○△□×高校の球児達は口々に謝る。
(うーん)
Y監督は考える。
(キャッチャー誰にするか……あ、そう言えばN山はキャッチャー出身だった気がする)
「レフト(N山)がキャッチャー。キャッチャーに代わってレフトにT山」
即断、そして即決だった。Y監督は本当に考えているのか……?
仕切り直して――、
「プレイ‼」
1アウト1塁、2番千葉――、
バントの構え!
「ビュン!」
「サッ」
構えを解く。
「ストライーク‼」
1ストライク、ノーボール。
2球目――、
再びバントの構えの千葉。
「ビュン!」
「スッ」
千葉はバットを引く。
「ボー、1ボール1ストライク」
続いて3球目――、
更にバントの構えの千葉。
「ダッ」
1塁ランナーセキズ、スタートを切る!
「スチールか⁉」
「スッ」
千葉はバットを引く。
(バントからのエンドランってサインは……)
「グッ」
(バスターエンドランのサイン……‼)
「キン!」
「しまったぁ‼ バスターエンドラン‼‼‼」
二塁手すごく小さい人、ランナーの動きを見て、ベースカバーに走ってしまった。
普通は、バッターの動きを見るまで、セカンドは動いてはいけないんだぞ☆
「黙れや」
走りながら、千葉は呟く。
ボールは広くあいた一二塁間を抜けてライトへ。1塁ランナーのセキズはスタートを切っていたので悠々3塁まで到達した。
1アウト1塁3塁でバッターは3番タカマサ。
初球――、
「ビュン!」
「ダッ‼」
スタートを切る3塁ランナーセキズ。タカマサはバントの構え。
「コツン……」
3塁線にバントを決めるタカマサ。
「くっ」
サードはファーストにボールを送った。
「ズサァ‼」
3塁ランナー生還‼
0―5!
点差は5点になった。更にランナーは2アウトながら2塁。
バッターは4番、小山田。
初球――、
「ビュン!」
「ググッ」
スライダーだった。
しかし――、
「ドッ」
ワンバウンドする。
「!」
「‼」
キャッチャーN山はボールを後逸した。
「だるっ」
後方へ走るN山。その間に2塁ランナーは3塁へ。
「っそう!」
N山は苛立ちを隠せずにいた。
(コントロール悪りぃんだよ、このピッチャー)
バッテリー決裂である。
そして次の一球――、
(あ、甘い……!)
「カン」
N山の心配通り、甘く入った球は小山田によってかっさらわれた。
「わっきた」
「ダッ」
打球を追いかけるT山。
しかし――、
「ドッドド」
小山田の打球はスタンドインした。
0―7‼
勝負は最早決まったかに見えた。
次は5番幸村。
「よーし。俺も続くか」
「ブン‼」
「ブン‼」
「ブン‼」
「ストラックアウ‼」
マジ切れした相手ピッチャーが力の限りのストレートを投げてきたため、球速は140kに迫るモノだった。そして幸村は三球三振となった。
「く……無念……」
3回表の相手高校の攻撃は7番、ピッチャーの人から。試合はこの先どうなる⁉




