第十九節 惨殺魔K
第十九節 惨殺魔K
「!」
Kは目を覚ます。
「らにちてるんれすかぁ?」
「えと、落とし物をって、わわ」
「ピ」
金子は不可抗力でボタンを押してしまう。
『幸せメール』
携帯の画面はそう表示されてあった。
「え? ……これは……出会い系……?」
金子はそれを見て、呟いてしまった。
「らににてるんれすかぁ……⁉」
「え? ちょ……わっ!」
周囲はざわつき始めた。
「なになに?」
「出会い系だってよ」
Kは鬼の形相になった。
「…………知ったな?」
「ダッ」
ダッシュで金子に接近して来る。
「え? わっ、わー‼‼‼」
金子は逃げ出した。携帯電話を握りしめながら――。
「待てぇぇええええ‼‼‼」
「わっ――――‼」
Kは金子を追う。
金子は50m走7.0秒と、高校球児にしてはやや鈍足だった。それに対して、キレた時のKの足は、50m走7.3秒と大したコトは無かった。その為、Kが金子に追いつくことは無かった。
しかし――、
「ハァ、ハァ」
「ダッダッダッダッダ……ズルッ!」
金子は、タカマサが対K用に仕掛けていたバナナの皮を踏み、ズッコケた。
「――、ゴッ!」
金子はずっこけた後、頭から落ち、後頭部を強打する。そして気絶し、昇天した。
金子、散る――。
「ようやく観念したな?」
Kが金子に追いついた。そして久しぶりに標準語を喋った。
「さて、どう料理してやろうか……?」
Kはどこからともなくナイフを取り出して1回、2回とまわして見せた。
金子に一歩、また一歩と近付く。
そして――、
「ズルッ」
バナナの皮を踏み、盛大にこけた。
「ゴッ!!!」
Kも後頭部を強打し、果てた。
更に、
「フッ」
ナイフは宙を舞う。
次の瞬間――、
「サクッ」
Kの腹にナイフは刺さった。そこにヤンデレ代行が現れた。ヤンデレ代行はそのナイフでKの腹をかっ捌いた。ヤンデレ代行はKの腹の中を見て言う。
「やっぱり嘘だったじゃないですか。中に誰もいませんよ?」
「ガバッ!!!」
Kは目覚めた。そこは保健室だった。隣で金子も寝ている。
「スヤァ」
ナイフが腹に刺さったのは夢の様だった。
「スチャ」
Kは再び、どこからともなくナイフを取り出した。
「ジリ……」
「スヤァ」
金子との間合いを詰める。
瞬間――、
「ハーイ! いきなり飛び出てババババーン! 女の子の味方、島津さんだゾ‼」
島津さんが現れた。
「なんでれすかぁー?」
「島津さんはね、保健室の先生なんだゾ‼」
新たなる真実が判明した瞬間だった。
「こんな危ないモノはしまって!」
「ポイッ……カランカラン」
ナイフを投げ捨てる島津さん。
「アナタのここ、どうなってるのか調べてあ・げ・る!」
島津さんはKの腹に注目した様だった。
「まずはぁ、ここ。この割れ目をなぞって」
「つー」
島津さんはテクニシャンの様だった。
「はうぁあああ!」
Kは耐えきれずに雄叫びを上げる。
「そ・れ・でぇ」
島津さんはKの腹に耳をあてた。
「……」
「? おかしいわね」
「……」
再度耳をあててみても何も感じ取れなかった。
「アナタ!」
島津さんはKに語り掛ける。
「相手は誰?」
「まつおとしゃんれす」
「セク〇スはしたの?」
「あいぃぃい、しまちた」
「?」
首を傾げる島津さん。それに対して
「ニタァ……」
愛想笑いをするK。歯茎が剥き出しになっている。
(嘘つきの人相だわ……)
Kの本性を見破る島津さん。
「ちょっと!」
「グイッ!」
「あいぃぃい」
Kの腕を掴み、学校を後にする島津さん。どこかへ連れて行く様だ。
「スヤァ……」
金子は目をつぶったままだった。
「やっぱり! 違うじゃない‼」
「れすー?」
島津さん、Kの二人は産婦人科に来ていた。
「陰性反応よ! い・ん・せ・い‼」
「れすー」
Kは桜木花〇状態だった。都合の悪いコトは耳を閉じて受け付けようともしない。
「第一!」
島津さんは続けて言う。
「アナタみたいなショボい顔の娘が、処女喪失しましたの⁉ 犯りましたの⁉ セク〇スを‼」
「グイッ」
「あいぃぃい」
Kの股間に人差し指を突き付ける島津さん。指は、股間深くまで突き進んでいた。
「痛いぃぃいい! 痛いれすぅぅうう‼」
叫ぶK。
「まっ!」
島津さんは驚愕した。
「膜まで! 張ってるじゃない⁉ 処女中の処女ですわ‼ 妊娠なんてあり得ませんの‼‼‼」
「膜ってなんなんれすかぁ?」
とぼけるK。
「経験人数0人の0回でしょう⁉ アナタなんて!」
「あいぃぃい、ちぇいちぇんりんずぅはぁ3にんれ、100発中にらされてますぅ」
島津さんの問いに、またしても嘘で答えるK。
「100発ですって⁉ ア〇ルセッ〇スでもしたの⁉ それで膜張ってるってどんな処女よ⁉ 嘘ですわ! 嘘つきですわこの女!」
「ニタァ……」
再び愛想笑いをするK。さっきよりも更に歯茎が剥き出しになっている。
「もしかして!」
島津さんは何かに気付く。
「アナタがあの話題のKさんですか?」
「あいぃぃい、わたすがそのKですぅうう」
Kは答える。島津さんは力強く言った。
「やっぱり! あのねぇ、大人をなめちゃいけませんわよ?」
「何がれすかぁああ?」
とぼけるK。
「とぼけないで! アナタが松本君をたぶらかして、辱めを与えたのね?」
「あいぃぃい、知らないれすぅぅうう」
「ニィ……」
笑いながら答えるK。堪らず島津さんはKを注意した。
「もう! また嘘をついて‼ これから、松本君に一切迷惑をかけない事、指一本触れない事、いいね?」
「なんでれすかぁー?」
「スッ」
またしてもKはどこからともなくナイフを取り出した。
「! 何のつもりですの?」
島津さんは怯まずに言い放つ。
「わたすとまちゅもちょくんとの間を邪魔するもろはなんぴろたりとろ許さらい……!」
「ダッ」
島津さんを刺しに行くK。
「! くっ」
そこへ――、
「スキャンダルの臭いがしたぜ‼‼‼」
パパラッチャーバカアキが現れた。
「パシャパシャ! パシャパシャ‼」
AIBOの一眼レフで現場を撮影する。
「何するんれすかぁああ? 何するんれすかぁああ?」
困惑するK。
「いい画が撮れたぜ。じゃあな」
バカアキが去って行く――
「待て」
瞬時にKはバカアキの肩を掴んだ。
「しぇええええ‼」
逃走するバカアキ。
「待たんかい――‼」
急にBBAの様な口調になるK、バカアキを追う。
「……」
一部始終を目撃した島津さん、言葉を失う。
(た……助かった……?)
数分後に安堵の表情を浮かべる島津さんだった。その日、十代男性の惨殺死体が、住宅街で見つかったという。
「そうだ……松本君に伝えないと……!」
島津さんはその日のうちに松本に会いに行った。
「――、こういう事なのよ」
「……分かった。アイツは未だに嘘をつき続けている、と。ありがとな、保健室の先生」
「ど、どういたしまして……」
キョトンとする島津さん。続けて言う。
「と、ところでどうするつもりなの? この先」
松本は答える。
「嘘つきには、本当のことを言ってやればいい」




