第十節 ×2△□×(バツ2さんかっけぇ死角無し)高校
第十節 ×2△□×(バツ2さんかっけぇ死角無し)高校
「お前ら、何があった⁉」
松本は問う。
「……ヤツらだ。ヤツらにやられた……」
セキズは答えた。
「⁉ ヤツら……だと……?」
困惑する松本。
「ああ、ヤツらだ。ヤツら×2△□×(バツ2さんかっけぇ死角無し)高校の連中は、この前の、野球部の練習試合の結果や、松本の普段の活躍を不愉快に思い、抗争を起こす気だ。こちら側の大義名分を立てる為か、穏健派である俺らを襲ってきやがった」
「なん……だと……‼」
松本は驚愕した。自らの行動も、今回の事件の原因の一つになっていたという事に。
「×2△□×高校だな? 今から行って……!」
松本はあるコトに気付く。
「お前ら……野球は……?」
セキズとフタエは包帯や松葉杖を要する程のケガをしていた。
「大丈夫だ」
「!」
セキズは続ける。
「秋の大会には、このまま安静にしていれば間に合う」
「ふ――」
ため息をつき、額の汗を拭う松本。
「少し、安心した。しかし、このまま喧嘩を売られたままじゃあ気が済まねぇ。俺は×2△□×高校に乗り込むぞ?」
「待て」
「!」
松本の言葉を遮る様に言う者が――。
タカマサだった。
「話は聞かせてもらったぜ? 俺は、襲撃に遭わなかった。この通りピンピンしている。俺も行かせてもらう」
「逆に待て」
「‼」
松本はタカマサの言葉を逆に遮って、言った。
「何度も言わせるな。お前には、野球部という居場所がある。俺は帰宅部だ。大して居場所などない。喧嘩が騒動になると、また活動停止処分が下るかもしれない。ここは俺に任せろ。俺は因みに喧嘩で負けた事は一度も無い……(こうやって啖呵切っとかねぇとな)」
「……本当に、一人で行くつもりか……?」
「ああ」
松本は答える。
「……一人で、大丈夫なのか……?」
「ああ、心配するな」
拳を見せる松本。
「勝って……来いよ……」
「コツン」
松本とタカマサは拳を交わした。そして――、
「ザンッ」
松本は×2△□×高校に辿り着いた。
「ここだな……」
校門にある学校銘板を見る。はっきりと『×2△□×高校』と書かれてあった。
「さて、と(どうしたものか……)」
ふと、校舎を見上げる。すると、
「おい」
どこからともなく、声が。視線を下げてみる。そこには、ヤンキー座りの小人が。
150cmくらいだった。
「てめー、どこのモンだ? ここの制服じゃねぇな?」
小人は喧嘩腰に話し掛けてくる。
「……」
松本は無言である。
「! てめ、ふざけんじゃねーぞコラァ‼‼‼」
小人はどっかから持ち出したバットで殴りかかってきた。
「ぐわっ」
瞬間――、
「ガッ」
自分の腕で相手の腕を弾き飛ばした松本。バットも飛んで行く。
「カランカラン……」
バットは遠くで音を立てる。
「悪いがお前は、お呼びでない」
右腕を振りかざす。
「! ! ‼ ⁉」
恐怖する小人。
「ひぃいいいいい、ごめんなさいぃいいいいい‼」
「ゴッ‼」
顔面をぶん殴られる小人。
「ゴシャア‼」
そのまま吹き飛ばされる。
「ドッドッドド」
アスファルトを二度三度跳ね、果てた。
すると――、
「なにさらしとんじゃあ! われぇ‼」
小人の叫び声を聞いてか、校舎から声が飛んできた。
「お?」
校舎の窓という窓から身を乗り出す×2△□×高校の生徒達。
「お前、何モンな⁉」
「なんじゃい、おめぇ‼」
「なにしに来たんじゃあ⁉」
どうやら、×2△□×高校は男子校の様だ。
そして――、
「ゆらっ」
校門へ向けて、人だかりができていた。
「‼」
それは、肉眼ではおおよそ、30いや、40人にも達するものだった。中には、バット、スパナ、ナイフなど、武器を持っている者も居る。
「おい……(そんな大人数とは……)」
タラリと汗が流れる。
「聞いてねぇぞ‼」
「ダッ‼」
ダッシュで逃げ始める松本。
「待てやゴルァア‼」
×2△□×高校の軍勢が追って来る。
「タッタッタッタッタ」
松本は住宅地まで走って行った。道の突き当たりを前にする。右へと曲がる――。
瞬時に、
松本は走るのを止め、曲がった先の壁に張り付いた。
「ダッダッダッダッダ」
「⁉ 何! 居ねぇぞ‼」
そのまま追って行った×2△□×高校の連中は松本を見失う。しかし、連中の最後尾は松本のすぐ近くで止まっていた為、松本を発見した!
「居たぞ!」
「何⁉」
先頭の集団に、最後尾の連中が松本の居場所を教える。瞬時に――、
「ゴッ‼」
「ドッ‼」
「ガッ‼」
殴打、
二―・パッド、
更に殴打を繰り出していく松本。
「があっ‼」
「うお‼」
「ぶはっ‼」
一人当り一撃で三人の敵を倒す松本。
「何さらしとんじゃわれぇ‼」
先頭から後ろにかけて居た集団は、再び松本を追い始めた。
「ダッ‼」
またしても逃げ始める松本。
「待たんかい‼」
3人だけ人数が減った連中は松本の後を追う。
「ハァ、ハァ‼(マズいな……)」
松本の脳裏を“死”の一文字がよぎる。
(これだけ体力を消耗して、倒せたのがたった三人……)
「待てやぁあああ‼」
(相手はまだ、倒した数の十倍は居る……!)
ふと、顔を上げるとそこには公園があった。
(一人一人、慎重に襲撃していくか……)
「! どこ行きやがった⁉」
松本は公園内に身を潜めた。
「まあいい、この公園を片っ端から探してみるぞ!」
×2△□×高校の連中は公園内を探し始めた。
木の後ろ、
トイレの中、
遊具の中と探していく。
「居たか⁉」
「こっちは居ねぇ」
「しっかし、臭ぇトイレだな」
公園のトイレはあまり掃除されていなかった様だった。
「その情報要るか?」
……。
遊具の中――、
具体的には滑り台の下にある、トンネルの様な中に×2△□×高校の生徒の一人が、入って行く。
「少し暗いな……!」
突如として口を塞がれる生徒。
「ドゴッ‼」
「チ――ン」
金的を蹴られる。
容赦ねぇなおい。
「! どうした⁉」
もう一人、×2△□×高校の生徒が遊具の中へ……。
「むぐ!」
同じ様に口を塞がれる。そして――、
「ゴッ‼」
腹部を蹴られる。
「か……はっ……」
二人の死体が出来上がった。
「何⁉」
三人目、
とは行かず、×2△□×高校の残りの生徒は遊具に注意深く観察した。
(ちっ……ここはもうダメか)
遊具と木から成る死角を縫うようにして、松本は木の後ろに移動した。
松本はニンジャか何かなのだろうか……?
「二人やられたぞ‼」
遊具の中に入った生徒は他の生徒に知らせる。
「注意しろ! ヤツはこの公園に居るぞ‼」
厳戒態勢の×2△□×高校の生徒。一人の生徒が、遊具の近くの木の後ろに足を踏み入れた。すると――、
「むぐ!」
またしても口を塞がれる生徒。
「ゴッ‼」
松本に腹パンされて、気絶する。また一人、死体となった。そんな事を知らず、また一人の生徒が木の後ろに入ってきた。
「もご!」
以下省略。
「おい! そっちの木を見に行ったヤツが消えたぞ‼」
「!」
「‼」
異変に気付く×2△□×高校の生徒。
(クソ……もうダメか……?)
木から松本は姿を現した。
「はっ! 観念しな……‼」
松本を追い詰めたと決め込んでいた生徒は一気に青ざめた。松本は高校生を合計二人、両手に提げていた。
松本を囲んでいた×2△□×高校の生徒達。
じりじりと間合いを詰める。一定の間合いに入った、その時――、
「ブワッ‼」
松本は男子高校生を片手で投げ飛ばした‼
「ゴシャア‼‼‼」




