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本日の無双ヒロインズ

 真名たちが村長の家から外に出ると、遠くの空から鳥人とでも呼ぶべき姿が飛んできて、次々と村に舞い降りているのが見えた。


 鳥人は二足歩行の人型だが、ワシのような顔を持ち、背中にもオオワシの翼を生やしていた。


 グリフォンがワシとライオンの掛け合わせであるとするなら、その鳥人はワシとヒトの掛け合わせといった様相だ。


「あれがガルーダ族か」


「結構数がいるね。見えるだけでざっくり二十ぐらい?」


「……識別してみたけど、レベル12、まあまあ強い。……それがこれだけ数いたら、そりゃあ村人たちじゃ、太刀打ちできない。……逆らわないでいたのは、正解」


「だがそういうのは許せないな。強者が弱者を虐げ、横暴を振るうなど」


「いまさらだね。若い娘さんをさらっていくってだけで超有罪だよ。ぶっ飛ばしてアジトの場所を吐かせよう」


「……賛成。積極的に、ぶっ飛ばそう」


 そう三人が話していると、彼女らの前に、上空から四体のガルーダ族が舞い下りてきた。


 ばっさばっさと翼を羽ばたかせ、三人の少女を取り囲むような位置に下りてくる。


「ケーッケッケッケ! いるじゃねぇかよぉ、こんなところにとびっきりの上玉が三人もよぉ!」


「クケケケケッ! まったくだぜ。嘘をついた村の連中は、あとで足の爪を一枚ずつ剥いでやろう」


「そんなんじゃ足らねぇだろ。腹の中に手ぇ突っ込んではらわた引きずり出すぐらいはしねぇと。だがそれよりも──」


「ああ。今は目の前の獲物を、たっぷりと楽しもうぜぇ」


 地面に降り立ったガルーダ族どもは、変身した姿の三人の勇者を取り囲み、鷲に似た顔にニタニタとした笑みを浮かべて歩み寄ってくる。


 勇者たち、絶体絶命のピンチ──!


 ……な、わけもなく。


 ──ひゅっと、風が動いた。


 次いで──ドゴォッ!


「か、はっ……!」


「まったく、清々しいほどの下衆どもだな。どこぞの牛男を思い出すよ」


 神官衣姿のポニーテイル少女の拳が、一体のガルーダ族の腹に埋まっていた。


 一瞬後に、そのガルーダ族は黒い靄となって消滅し、地面に宝石が落ちる。


「「「えっ……?」」」


 その様子を見た残る三体のガルーダ族は、唖然として固まった。

 いったい何が起こったの? という様子だ。


 あのポニーテイルの少女は、さっきまで自分たちが取り囲んでいたはずだ。


 それが残像を残すような速度で動いて、次の瞬間には仲間の一人が倒されていた。


 ガルーダ族は、魔王軍の中でもスピードを信条とする一族だ。


 速さはすべての礎。

 速度を極めた自分たちこそ魔王軍で最強だとすら自負していた。


 でも、なんだろう。


 あの娘、ひょっとして自分たちより速くない?

 ヤバくない?


 それがガルーダ族の者たちの率直な感想だった。


 だが次に彼らは、ぶるぶると首を横に振る。


 いやいや、そんなはずはない。

 きっと見間違いか何かだろう。


 あんなおいしそうな人間の娘が誇り高きガルーダ族の自分たちよりも速いなんて、そんなことはあり得ない。


 だけど、そう。

 一応、あの娘は後回しだ。


 残りの二人の小娘を気絶させて人質にでも取れば、あのめちゃくちゃ速いような気がする娘だって何もできなくなるだろう。


 そう思ったガルーダ族の男たちは、互いにうなずき合って、残りの二人の少女に襲い掛かることにした。


「ケヒャアアアアアッ! ──って、あれ?」


「一人しかいないぞ。もう一人はどこ行った?」


 気が付いたら、彼らの包囲網の内側には、一番小さなチビの少女しか残っていなかった。


 と思ったら、そのチビッ子少女が、人差し指で上を指し示す。


「……ん。……上、見たほうがいいよ」


「上……?」


 一体のガルーダ族が、上を見ると──


 太陽の輝きを逆光にして。

 頭上から、剣士姿の少女が降ってきた。


「ひゃっほぉおおおおいっ!」


 その少女は、着地のタイミングで剣を振り下ろす。

 ずぱんっ、と気持ちのいい音がした。


「は……?」


 そのガルーダ族は、頭からお尻まで真っ二つになって、次には黒い靄になって消え去った。

 あとにはやはり、中ぐらいの大きさのジェムが落ちる。


 それを見た残る二体は、大わらわだ。


「なっ、なんだあのジャンプ力は……!」


「人間のしわざじゃねぇぞ! 何なんだこいつら……!」


 そうして慌てた二体がすがるように見据えたのは、最後の一人。

 魔法使い姿の真名に、二体のガルーダ族は飛び掛かる。


「「この一番どんくさそうなチビを捕まえれば……!」」


 だが、対する真名はというと、まったく落ち着いていた。


 彼女の目には、迫ってくる二体のガルーダ族の姿がスローモーションに見えている。


「……まあ、当たってるよ。……この姿でも、勇希や神琴と比べれば、ボクが一番どんくさい。……でも、チビって言い方ともども、ムカツク。……フレイムアロー」


「「──ギャアアアアアアアッ!」」


 真名が生み出した三本の炎の矢。

 そのうちの二本がそれぞれのガルーダ族に命中し、焼き尽くしてジェムに変えた。


 あと一本は余ったので、遠くから近寄ってきていた一体に向けて飛ばした。

 それも対象のガルーダ族を焼き、消滅させてジェムにしてしまう。


 あっという間の戦闘終了。


「真名のそれ便利だよね。三体いっぺんに倒せるって」


「……まあ、それなりに。……でも勇希だって、本気出せば、このぐらい一気に倒せるでしょ。……ていうか今の、ジャンプする意味あった?」


「いやぁ、何となく」


「それより二人とも、早く残りのガルーダ族どもを退治しよう。村の人たちが心配だ」


「……ん。……手分けしたほうが、いいかな」


「そだねー」


 そうして神琴、真名、勇希の三人は、一度寄り集まって拳を合わせてから、それぞれ別方向へと走っていくのだった。


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