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レベル、ステータス、スキル

「僕は賢者ユアン。──大丈夫だったかい? こっちに来ていきなりゴブリンに襲われるなんて災難だったね。でももう大丈夫。キミたちはすでに『力』を手に入れた」


 輝くような銀髪をショートカットにした中性的な美少年が、日なたのような柔らかな笑みとともにそう語りかけてくる。


 年の頃は十五、六歳といったところだろうか。


 瞳は幻想的な紫色で、ずっと見詰めていれば吸い込まれてしまいそうな深みを宿している。

 見た目どおりの年齢ではないのかもしれない。


 服装はフード付きの濃緑色のローブで、手にはねじくれた木の杖。

 いかにも魔法使いといった姿だった。


 その少年に向かって最初に口を開いたのは、彼と似たような魔法使い姿をした真名だ。


「……賢者ユアン。さっき助言をしてくれたのはあなただよね? 『ブレイブ・イグニッション』って……ボクたちのこの姿と力、これは何なの? それにさっき、『異世界の少女たち』とか言ってた。……全部教えて。ボクたちは今、何も分かってない」


 その真名の問いに、相手──賢者ユアンを名乗った少年は、再びふわりとした笑顔を見せる。


「キミは可愛らしいだけでなく、聡明だね。じゃあ、最初からひとつずつ説明していこう」


 そう前置いてから、彼は話しはじめた。


「まずはその力の使い方から。全員、『ブレイブ・リリース』と唱えてみて」


 そう言われれば、勇希、神琴、真名の三人は顔を見合わせてうなずき、それから声を揃えて唱える。


「「「──ブレイブ・リリース!」」」


 すると三人の衣装が光り輝く。


 やがて光がやむと、全員が元の制服姿へと戻っていた。

 三人の手には、例のカードが握られている。


「……元の格好に戻った。……って、あれ? さっきと少し、数字が違ってる……?」


 なにげなくカードを眺めた真名が、目ざとく何かを見つけた。


 カードには変身後の姿が描かれた絵のほかに、いくつかの数字や文字が記されていたのだが、その数字に変化が表れていたのだ。


 そこにはこのような表記がなされていた。



***



名前  真名

職業  魔法使い

性別  女

年齢  14歳

レベル 3(+2)

HP  32/32(+7)

MP  23/35(+8)

攻撃力 9(+2)

防御力 11(+1)

魔力  40(+6)

魔防  20(+3)

素早さ 10(+2)

残りスキルポイント 3(+2)

スキル

 なし

呪文

 フレイムアロー

装備

 魔法使いの杖

 魔法使いのローブ

 魔法使いの帽子

所有ジェム 0

ブレイブチャージ 97%



***



「……レベルアップした? さっきのゴブリンを倒したから……? 『残りスキルポイント』……これでスキルが修得できるのかな。一番分からないのが、『所有ジェム』と『ブレイブチャージ』っていうの……」


 真名がカードを見ながら、何やらぶつぶつとつぶやく。


 一方、勇希と神琴の二人はちんぷんかんぷんといった様子で、頭上に疑問符を浮かべていた。


「この数字、何? なんかゲームみたいだよね」


「ああ。確か『ろーるぷれいんぐげーむ』という類のゲームで、このような感じのものを見たように思う」


「違うよ神琴。そこはRPGアールピージーって呼ばないと、真名に笑われるよ?」


「ふむ、そうか。『あーるぴーじー』というのだな」


「……ごめん、二人とも……いつの時代の父兄さん……? ていうか、なんでそんなので『剣士』と『神官』を知っていたのか不思議だよ……」


 真名は武人少女二人を、うろんげな目で見つめる。

 そして彼女は、これは自分がどうにかしなきゃいけないと、固く心に誓ったのだった。


「こういうのは……まず触ってみるのが一番……」


 真名はひとまず、自分のカードを適当に、指先でタッチしてみる。


 すると、「残りスキルポイント」のところを触ったときに、カードの表示がガラッと変わり、このような表示が現れた。



***



真名 が現在修得可能なスキル(消費スキルポイント)

 フリーズアロー(1)

 サンダーアロー(1)

 スリープ(1)

 ブラインドフォッグ(1)

 エクスプロージョン(2)

 モンスター識別(2)

 HPアップⅠ(2)

 MPアップⅠ(2)

 攻撃力アップⅠ(2)

 防御力アップⅠ(2)

 魔力アップⅠ(2)

 魔防アップⅠ(2)

 素早さアップⅠ(2)

 etc…



***



 カードにそのような画面を表示させた真名の後ろから、残り二人の少女が寄りかかるようにしてのぞき込む。


「おおーっ、すごい真名! どうしてそんなの分かったの? 天才?」


「さすがは真名だな。私たちにできないことを平然とやってのける」


「……新しいゲームは、とりあえず勘で触ってみるのが一番。ユーザーインターフェースがしっかりしていれば、それでだいたい分かる。……あと二人とも、近い。息が吹きかかる。ドキドキするから少し自重して」


 背後から勇希と神琴に密着された真名は、ほんのりと頬を赤らめていた。

 彼女の友人たちへの愛は、わりと不純だった。


 しかし真名のゲームへの集中力は、それをも上回る。


「……これ、スキルの習得はいつでもできるけど、カードを操作しないといけないから、変身しているときにはできない……一度修得したスキルの払い戻しもできない……その辺は、ちょっと厄介……」


 なおもカードをいじりながらぶつくさとつぶやく真名。

 その様子をずっと見ていた賢者ユアンが、そろそろいいかと口を開く。


「こほん。続き、説明させてもらってもいいかな?」


「……あ、うん。……でもその前に、『所有ジェム』と『ブレイブチャージ』は、説明欲しいかも」


 すでにこの場の会話は、真名と賢者ユアンの二人のやり取りになっていた。

 賢者の少年は答える。


「『ジェム』というのは、お金みたいなものだね。キミたちの周囲を見てごらん。何かキラキラするものが散らばっているのが分かるだろう?」


「あっ……ゴブリンを倒したから……」


 賢者ユアンが言ったとおり、周囲を見渡せばあちこちに、森の下生えにまぎれて何かキラリと光る小さなものが散らばっていた。


 数は全部で三十ほどか。


 真名が歩いていってその一つを拾う。

 それは小指の爪の先ほどもない、小さな宝石のようだった。


「……これが、『ジェム』?」


「そう。それをカードの上に乗せてみて」


「……うん」


 真名は拾った「ジェム」を、少年の言葉に従って、カードの上に乗せた。


 すると──

 ジェムは淡い光を発し、カードの中へと吸い込まれるようにして消えていった。


「おー……」


 真名は小さく感嘆の声をあげる。

 カードの表記を見れば、先ほどまで「0」だった「所有ジェム」が、「2」へと変わっていた。


「ジェムは装備のパワーアップや、アイテムを入手するのに使えるよ。それもカードで操作できる。あと、街でお金の代わりに使うこともできるね」


「……お金の代わり? カードに収納したジェムは、取り出せるの?」


「うん。カードの操作で、ジェム取り出しっていうのがあるから、それで」


「……なるほど」


 真名が言われたとおりにやってみると、カードに吸い込まれたジェムが、再びカードから出てきた。


「だいたい1ジェムあれば宿屋で一泊できて、2ジェムか3ジェムもあれば普通に一日暮らせるはずだ。贅沢をしなければね」


「……モンスターを倒していれば食いっぱぐれしない。なんていい異世界」


 真名は嬉しそうな顔をしながら、周囲に散らばっているジェムを拾い集めていく。


 地球においても異世界においても、食いっぱぐれがないというのはとても大事なことなのであった。


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