81 ケモっ子達の自己紹介
崩れ落ちたヴィル兄様は、「他に当てになりそうなのは、あいつらと……いやあいつは最近忙しいし、あの人……も今忙しいし、あいつには頼みたくないし、あぁあ……」と失意体前屈でブツブツ言っているので、少しそっとして置くことにした。
その間に私はローリエ様とレティシア様に向き直る。
私の迂闊な一言により予想外の展開になった。そのせいで二人が勉強に集中出来なかったら本末転倒。申し訳なさすぎる。
「その、ローリエ様、レティシア様。集中して勉強する環境は、わたしが、ととのえ……ますので…………?」
見ると、2人はふわふわと高揚した様子でケモっ子達を見ていた。
ローリエ様は、金狼族を。
レティシア様は、黒猫族をだ。
……なるほど。犬派と猫派に分かれている。
思ったよりも受け入れられているというか歓迎されている。それならば、一緒に勉強することだし……ひとまず自己紹介するか。
「イヴァン様、フレッジ様。彼らを紹介して頂けますか?」
そう言うと、はい!と元気なお返事と共に紹介が始まった。
「従者の礼!」
イヴァン様がそう言うと、黒猫族が一斉にしなやかな動きで跪いた。
「こいつが俺の側近のユージンです。その横からティザ、オルガ、カリナ、サージュ、フルダルとニルファルです」
そう紹介された彼らは、次々に名乗ってよろしくお願い致しますと締めくくった。実に多種多様だ。
ユージン君は31点でドヤ顔していたツリ目の男の子。
ティザ君は元気に手を挙げてくれた男の子。その横の同じくらい元気なくりくりパーマの女の子がオルガ。
茶色い毛並みがカリナちゃん、長い髪をひとつに結んでいるのがサージュ君、そして白猫で双子の女の子がフルダルちゃんとニルファルちゃん。ちなみにテストで名前を書くのを忘れてたのがこのふわふわ双子である。
……覚えるのに時間がかかりそう。後でこっそりメモしておこう。
続いてフレッジ様の声で金狼族がザッと跪く。
「こちらが僕の側近のヴォルヤです。その横から、ユディト、ルシア、ファニール、ランスレーです」
こちらもよろしくお願い致しますー!と元気だ。
ヴォルヤ君は垂れ耳の男の子、ユディトちゃんは一際尻尾がふさふさな元気な子、ルシアちゃんは47点と一番点数が高かった子、ファニール君は常に眠そうな男の子で、ランスレー君はえっとえっと……じゅってん!の子だ。
何故か期待に満ちた目で私たちの方を見つめる彼らによろしくお願い致しますね、と返すと、ようやく立ち直ったらしいヴィル兄様がコホン、と咳払いして話しかけてきた。
「えー、私達の目標はただ勉強する事ではなく、冬期休暇前テストで全員全教科合格し、来期からの授業免除を狙う事です。……しかし彼らは急いで詰め込むよりも、しっかりと年間の授業を受けてもらいながら、放課後に予習、復習をして基礎を固めた方が良いかと思われます」
前半は彼らに向けて、後半は私への要望だ。至極真っ当な意見である。
ローリエ様とレティシア様はほわわーんとケモっ子達を見て幸せそうで、一緒に遊びたそうにうずうずしている。
そしてオルテンシア様から啓蒙活動(?)を仰せつかっている私は勉強が苦手な彼らの面倒を見てあげたい。しかしいきなりハイスピードな予習は無理そう。
でも、ケモっ子達は私達の輪に入りたそう。尻尾ピーンだったり尻尾ブンブンだったりしている。
うん。その路線で行こう。
「私も同意見です。では、彼らの教師役は予習担当のヴィル兄様とは別の方がいいですね。誰か適任な人物を見繕ってきて下さい」
にっこり笑ってそう言うと、ヴィル兄様はグフッと一瞬咳き込んだ後、恭しく「お任せ下さい」と受けてくれた。
ごめん、ヴィル兄様。頼んだぜ!!
ケモっ子達のプロフィールは登場人物一覧に記載してますので、一気に覚えなくて大丈夫ですよ!




