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49 入学前日その①


 ついに、季節は一巡りした。

 

「マチルダ、あの布はどこにありましたっけ?!」

「確か控えの間の方よ!私が片付けておくから、ユレーナは鏡台の方をお願い!」

「わかりましたー!」


 今お屋敷の中は非常にバタバタしていて、メイドや側近達が右へ左へ駆け回り、あれやこれやと準備に忙しい。

 

 それというのも、お引越しの前日だから。

 学園には殆どの生徒が使用する寮があるので、私と側近たちはそこへ引越しをすることになるのだ。

 

 つまり。

 

 そう!

 

 ついに明日から私は、ローヴァイン離宮魔術学園の1年生になるのだ!!

 

「……、……んんん、……んー!楽しみすぎて座っていられない!!私にもなにか……」

 

 そう言ってガタッと立ち上がって荷造りを手伝おうとするが、その度にそっと椅子に座らされ、目の前に暖かいお茶とお茶請けを置かれるのを繰り返している。

 コニーとマチルダ&ユレーナの連携プレーが妙に上手くて、この防衛ラインが突破できない。

 

 大きな荷物は既に寮の部屋に運び込まれているとはいえ、今日まで使っていたものの荷造りや本人達自身の引越し仕上げなどで皆大忙しなのだ。

 不慣れな私がもたもたと手伝うのなんて逆にとっちらかって迷惑なのである。……別に?拗ねてないですけどね?


 そんな感じで立ったり座ったりしていたところで、お父様とお母様がやってきた。

 

「アリス、準備は……ど……う……、う、うううっ」

 

 私の顔を見るなりだぱっと泣き出すお父様。これはここ数日で慣れたので、もはや私も動じない。

 お母様がくすくす笑いながらお父様の背中を撫でている。

 

「もうあなた、朝も沢山泣かれたではないですか」

「うう、だが、だが、しばらく会えなくなると思うと……っ」

 

 ううう、とふるふる震えたお父様は鼻をすするとなんとかキリッとした顔を作った。鼻が赤い。

 それにちょっと笑いを堪えつつ答える。

 

「準備は、側近達とメイド達のお陰でつつがなく進んでいますよ」

「重要なものは既に運び込んで確認しております、ジークムント様」

 

 ヴィル兄様も丁寧な口調でお父様に答える。

 正式に側近になるということで、私と両親に対しても敬語と敬称を使うようにしたのだ。

 両親はそれを聞いてうんうんと頷く。

 

 ちなみに何故お父様がこんなにめそめそしているのかと言うと、私の入学だけが理由ではない。

 

 長い間領地の現地監督を代理してもらっていた側近兼友人から、「妻と娘が治るまでって話だったろうがさっさと帰ってこい!!」という手紙が届いたそうで、夏の社交シーズンの終わりを待って領地に帰ることになったのだ。

 そんな訳もあって、私は寮に入ることになった。

 ……いや正直、理由がなくても、魔法学校の寮とかなにがなんでも入ったと思う。どう考えても面白いし。

 

 私としてはオーキュラス領は皇都に比較的近い場所にあるし、折に触れて会いに来てくれるらしいのであまり心配していない。

 お母様はと言うと、なんとお誕生日会でのお菓子の飾りと香辛料のセンスが評価されたために、バージルのフレシアおば様と二人で小さな新規事業を立ち上げたのだ。

 デザイン・イメージ提案などの監修がお母様、それの補佐と伝達などがフレシアおば様、そして素材の調達・実現がバージル家という訳だ。

 まぁ、新規事業と言うよりもママ友サークルレベルでやる予定らしい。

 お母様が元気いっぱいだからこそ実現したことなので、喜ばしい限りだ。

 

 ちょっと話がそれたが、そんな訳もあって、お母様は基本は領地にいるがお父様より頻繁に皇都に来る予定らしい。なので比較的冷静だ。

 

「今日の夜は親しい人を呼んで、入学お祝いと私たちの帰郷のご報告会をしますからね。コニー、その時に着るドレスはきちんと用意してありますか?」

「はい奥様、しっかりと一式ご用意しておりますー!」

 

 お母様に聞かれ、歩き回って荷造りしていたコニーがにこにこと答える。そういえばそんな会をやるって言ってたな。

 

 親戚筋ではしばらく会えない人もいるから、沢山おしゃべりしようっと。

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