37 友達と側近
「お友達の、候補……ですか?」
熾烈なあっち向いてホイ対決を見られていた恥ずかしさからなんとか抜け出した私は、そうお母様に問いかけた。
「ええ、そうですよ。仲のいいおうちの、同じお年頃の子供たちと会ってみるの。そしてお友達になれそうな子を選んでいくのよ」
「その中で特に気の合う子を見つけて、長い付き合いができるようにね」
ほうほう。流石に侯爵家だと、こちらが選ぶ側に立つということか。
まずはふわっとしたグループを作り、その中で信頼のおける人を選んでいけというわけだ。
ここで気の弱い子を選んで侍らせたりすると、いわゆる悪役お嬢様の取り巻きの完成なわけだね。
ちなみにお茶会デビューしてすぐに寝込んでしまった私は、今のところぼっちというやつである。
知り合いになった子は居たような気がするが、何しろ当時3歳児。
家族やご近所のバージル家以外の人のことはぼんやりとしか記憶に残っていない。
「それじゃあ、まずは手始めにうちの子と会ってみましょうか」
「お姉様の……。ええと、オニキスお兄様とアテナお姉様、ですね」
なんとか覚えた名前を出すと、お姉様は頷いた。
「そうよ。オニキスはちょっと勝気だけど優しい子で、アテナは気が弱いけど勉強は得意な子ね」
「そうなのですね。お二人は今おいくつなのですか?」
「オニキスが今十歳で、アテナが七歳ね。アテナはアリスちゃんの一つ上よ」
ほほう。歳が近いなら仲良くなれるかもしれない。
「オニキス君は次期ハイメの当主だけあってしっかりしていますよね」
「そうね。ただ誰に似たのか、やけに気が強いのが悩みだけれど」
……それはスーライトお姉様に似たのだと思います、とはその場の総意だったと思う。
「アテナちゃんはかなり人見知りな子だったと思うのですれど、学園では元気にしていますか?」
お母様が心配そうにそう言うと、スーライトお姉様は肩を竦めた。
「まぁ、そこは私がしっかり鍛えたからそれなりね。ただやっぱり気が弱い所があるから、得意なことを伸ばして武器を増やしなさいとは言ってあるわ」
「そうなのですね……」
ほっとしたように息をつくお母様。
そういえばオイディプスおじ様の娘ということは、お母様にとっては血の繋がった姪っ子ちゃんということだ。それは気にもなるか。
「それと側近も決めなければね」
「ええ、お誕生日会の前にしっかり決めないといけませんね」
そういえば、前から側近も決めると言っていたな。
具体的にどんな人達のことなのかよく分かっていないので聞いてみると、この世界での「側近」とは使用人と護衛を兼ねた存在を示すらしい。
お父様にとっての側近はアルフォンスさんと、今は離れた領地で腕を振るっている数人。
お母様にとっての側近は、メイド長の役割を任せているマリアさんと、お父様と同じく領地で仕事を任せている人が数人なんだそうだ。
ちなみに、女の子についた男の側近は結婚すると同時にほとんどが解任となるのでいないらしい。
まぁ、夫が騎士になるということだね。
そして側近になるのは、大体が下級~中級貴族の長男以外の子供たちだそうだ。
側近として技術や人脈を身につけて再就職先を見つけたり、使用人として屋敷に残ったり、仕える主人から事業を与えられたりして身を立てるんだとか。
一応同じ貴族階級でも、どのランクの家で、そして何番目の子供かによってかなり人生が変わるんだなぁ。
そんなことをぼんやりと思った。
この世界の設定的なものを一気に放出しました。
ここから、少しお話を動かしていきます!




