前へ目次 次へ 3/331 1 物語の前夜 月の隠れた真っ暗な雨の夜に、馬を走らせる男がいた。 頬を叩く雨をものともせず目的地を目指す。 ただ迅速に、脇目もふらず馬を走らせ疾走していく。 男は焦っていた。あと一、二時間もすれば恐れていたことが起こってしまう。それだけはなんとしても阻止しなければならない。 石畳の道を馬の蹄が打ち鳴らす。この馬が潰れる前に事を成さねば。 街灯の明かりと魔術の光を道しるべにたどり着いた目的の場所で、男は見つけた。 この絶望を覆す――いや、ともすれば増幅させる――希望に。