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1 物語の前夜
月の隠れた真っ暗な雨の夜に、馬を走らせる男がいた。
頬を叩く雨をものともせず目的地を目指す。
ただ迅速に、脇目もふらず馬を走らせ疾走していく。
男は焦っていた。あと一、二時間もすれば恐れていたことが起こってしまう。それだけはなんとしても阻止しなければならない。
石畳の道を馬の蹄が打ち鳴らす。この馬が潰れる前に事を成さねば。
街灯の明かりと魔術の光を道しるべにたどり着いた目的の場所で、男は見つけた。
この絶望を覆す――いや、ともすれば増幅させる――希望に。