23 仕舞われたお守り
鋭い声に驚いて振り返ると、こちらに向けてヴィル兄様が走ってくるところだった。そしてさっと抱き上げられる。
「アリスに何してたんだ!」
ヴィル兄様がそう声を荒らげた時には、オルリス兄様は逃げる様に温室の奥へ姿を消してしまっていた。
突然の展開にぽかんとしていると、ヴィル兄様が不安そうな声で私の顔を覗き込む。
「大丈夫かい?何もされなかった?怪我は?」
「えっ?!い、いえ……ないです」
何故そんなことを聞かれるのか分からないままにとりあえず答えると、ヴィル兄様はふう、と息をついた。
「とりあえず屋内に戻ろう。ごめんね、びっくりさせて。……普段はあの人、ほとんど部屋から出てこないのに……はぁ……」
私のもの言いたげな視線にそう返したヴィル兄様に抱っこされたまま、私はお屋敷の中に運ばれた。
……ううーん。前世の元部下が言っていた通り、家庭仲がやばいみたいだ。
ていうより、一触即発じゃん……。
流石にこの状況でポプリは渡せないので、私は緑のポプリをそっとポケットにしまい込んだ。
◇
結局その日は、ピリピリしたヴィル兄様の様子に怖気づいてしまい、何もできなかった。
他人の家庭の問題って突っ込みづらいものだ。良かれと思って正論を振りかざしただけで爆発しかねない。
なんとなく事態を察した様子のフレシアおば様にもお別れの挨拶をして、そそくさと帰ったのだった。
そして数日後の今日、再び。
リベンジするべく、私はバージル家を訪れた。




