226 新年と天体観測
年が明けて、皇都残留組で新年のお祝いをした。
この国は誕生日を祝う風習もあるが、正式には年が明けた瞬間に数え年を更新するのが習わしだ。
なので、私もようやく八歳になった。
さて新年会だが、その顔触れはかつてないタイプのものとなった。
お母様に、いつの間にか何人ものママ友ができていたのである。
「来て下さってありがとうございます」と挨拶を交わす相手は、夜明け団の団員の母親が多い。貴族もすべてが領地持ちではないので、皇都にいる人もそこそこいるのだ。
獣人族の親御さんも招待したのだが、夜明け団関係者以外も多いことから気を使ったのか、辞退されたらしい。
来年はぜひという手紙とお花を贈ったところ、向こうからもこちらへ色とりどりの冬の花や果物が贈られてきた。
フレシアおば様とお母様が作った冬のハーブの焼き菓子も好評で、それをお土産にするため用意した袋を手刺繍のリボンで結んだところ、これもまた愛らしいと好評だった。
手作りサークルに入りたいと申し出る人が出てきたそうで、お母様はかつてなく活き活きしている。
立派な社交にもなっているため、楽しいだけでなく自信もついたようだ。
そんな晴れ晴れとした年始は思ったよりも本当に忙しく、少しばかり廃塔へ行けない期間が続いた。
ヴィル兄様やオタク側近ズなどに頼んで物資は届けているものの、様子が気になって。
せめて新年の挨拶も兼ねて、近況を尋ねようと思い、トフェルに手紙を届けさせようと思ったのだが……。
「なんて書こう」
何しろ、最後に会ったときの会話があれだ。何を書いても意識しすぎなのを察して笑われる気がする。
完全に被害妄想なのだが、私は真剣だった。
「今年もよろしくお願いします? ……あの人、よろしくって返してくれるんだろうか。じゃあ、あけましておめでとう……って日本じゃないんだから。んん~~」
うだうだと悩んだ末、「魔獣は元気にしていますか」と書いて送ったところ、意外なことにすぐ返事が来た。
名前こそ書いていなかったが、見慣れた流麗な文字で一言。
「〝私の心配はしてくれないのか?〟……ってこれ、絶対、私が悩んだ末に書いたの察してるじゃん。当たり障りない事を選んで書いたってバレてるじゃん……! 絶対笑ってんじゃんかぁ!」
ふんがー!!と髪をかき乱して叫ぶと、後ろで掃除していたコニーにまで笑われたのだった。
◇
そんなこんなで色々ありつつ。
冬休みの後半には普通に廃塔へ行ったり(会って一番に蹴りを入れたかったが流石に我慢した)、寂しさのあまり脱走してきたお父様をお母様と一緒によしよししたり、戻ってきた側近や団員達とお茶したり買い物したりと、充実した日々を過ごした。
そうして春星式が開かれ、いつものオルテンシア節を聞き、新学期になった。
「今年は、全体行事として天体観測があります」
新年初のホームルームで、まず最初にレイ先生がそう言った。
天体観測は天文学の授業の宿題として各々が行う事はあるが、全体でというのは初耳だ。
ざわつく教室が静まるのを待って、レイ先生が続ける。
「オルテンシア学園長の発案で決まったわ。来週の頭に流星群を観測できる日があるから、その日は夜間に学園の敷地内を歩くことを許可するというものよ」
若干遠い目をしたレイ先生は、教員総出で学園中の警備をするのよね……とぼやいた。
「まぁざっくり言えば、夜の学園の好きな場所から夜空を眺めるだけの課外授業よ。二人一組で記録をつけてもらうから、筆記具と星座盤、防寒具などの準備をしてね」
そんなイベントを予告されれば、普段おすまししている生徒たちも年相応にはしゃぎ出す。
いつもなら出歩けない夜の校舎内を探検しようという子もいれば、二人一組という言葉にときめいたり青ざめたり、教室内は一気に騒々しくなった。
「はいはい、静かに。当日はアブデンツィア生も何人か監督や警備として巡回しているから、なにかあったら声をかける様にね」
はーい、と良い子なお返事をした子供達は、誰とペアになるかで再びざわざわとし出したのだった。
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