201 顧問
具体的にはちょっと走るのが早くなったとか、聴力が上がったとか、ジャンプ力が上がったとか。そう言った些細な報告が多い。
特にイヴァン様とフレッジ様が筆頭だ。その他、桃紫コンビの女性側近やファニール君などにその傾向が顕著である。
更に特筆すべきは魔術についてだ。こちらも勉強とは関係なく、何故か習得率が上がっている。
前までなら「呪文は覚えたけど、上手くいかない」という声が多かったのだが、最近は「なんかブワーッて分かる!」という声が増えたのだ。そう言う子の特徴は長い呪文やアサメイに頼らず、素手で短い詠唱をしていることである。
何故そうなのかは、こちらもわからない。悪い事ではないからとりあえず保留にしようということにはなっているのだが。
……しかし、放置も続けられないだろう。もしかして今って、色んな意味で絶好のチャンスなんじゃなかろうか?
「あの、フェリエン先生、ガルシア先生。もしよろしければ夜明け団の顧問として、うちの子達の監督と観察をお願いできませんか? 団の活動中に見たもの、知ったものは全て他言無用の誓いを立てていただくことになりますが」
「にゃ!?」
「アリス様―!?」
二人から絶望したような悲鳴が上がるが、反対にフェリエン先生とガルシア先生からは喜色の声が上がった。
「な、なんてことでしょう! 私なんかで本当にいいのですか、オーキュラスさん? あ、私の事も名前でフィアナ先生って呼んでくれていいんですよ。あと私もアリスさんって呼んでいいですか? ああでも、全然発言力のない私なんかが顧問でいいんでしょうか……? もっと権力のある先生の方がいいんじゃ…………獣人の方へのお触りはOKです?」
遠慮するのかグイグイ攻めるのかどっちかに決めよう? あとその「お触り」って確実に触診じゃなくて実験とか解剖でしょ。
診療台に縛り付けられてさめざめと泣いているダブルリーダーが思い浮かぶ。
大歓迎で概ねOKだがお触りは禁止だと告げると、フィアナ先生は「ふふ、今はそれで……。よろしくお願いします! さてこうしてはいられませんっ!」と不穏な言葉を残し、興奮した様子で去って行った。
ガルシア先生はと言うと、一見冷静だ。冷静に見えたのだが。
「お触りは……」
「絶対ダメですよ?」
わざとらしい笑顔でそっと聞いてきたが無論却下である。ガルシア先生の言うお触りも実験とかそっち方面の事ですよね??
「おじい様って呼んでくれてもいいんですよ」
「ガルシアおじい様……ちょ、ちょっとならお触りいいかもしれません」
「アリス様ぁ!?」
まずい、私が老紳士萌えしていることがうっすらバレている。
ダブルリーダーの悲痛な悲鳴が響き渡ったので、先生からこれ以上誘惑される前にそそくさと戦略的撤退をした。
ちなみに撤退後、ヴィル兄様から割と真剣な顔で「まさか……まさかアリスは、枯れ専ってやつだったの……!?」と確認された。
しかし私はマジモンの枯れ専ではない。ただ美しいものを拝みたいだけのなんちゃって枯れ専である。
でも勘違いが面白かったので、それには頭にハテナを浮かべて曖昧に微笑んでおいた。
幼女、難しい言葉わかんない。
どこかで描写を挟みますが、レイ先生は夜明け団の顧問ではないので……。頼れる(?)先生が二人爆誕しました。
そしていろんな意味で阿鼻叫喚な男性陣。




