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195 引越しの片付け

 

 その箱の中の本はそちらの棚に、そのテーブルはそちらの窓辺に、など先生の指示を聞いてお手伝いを進める。


 ふぁさっ……。

 じーー。


 とにかくテキパキと、小さな体で出来ることをお手伝いする。ヴィル兄様だけは身長があるので、大きいものの担当だ。

 ヨハンとニコラスも二人一組で家具を動かしたりしているので、一時間もしないうちに部屋の中は整い始めていた。


 ぴこぴこ。

 じーーーー。


 ……しかし、作業の合間合間に感じる擬音と視線に、私の集中力はちょいちょい乱されていた。


 ちらりと目線をやればその正体は、イヴァン様とフレッジ様のしっぽや耳がふさふさする音、そしてそれを時折じ……っと見つめるガルシア先生の目線の熱さで。

 見られているイヴァン様とフレッジ様は、感覚の鋭い獣人であるゆえにその目線に気づいていたらしく、どことなくソワソワしていた。


 それに気づいたヴィル兄様と目を見合わせる。

「もしや、私と同じ獣人大好き人間……?」と囁くと、兄様からは「いや、でも完全に耳としっぽにしか目線いってなくない?」と返ってきた。


 言われてみるとそうである。確かに、ガルシア先生の目線は綺麗なほど耳としっぽにしか行っていない。

 もしかしたら獣人の少ない地方から来て、獣人が珍しいとか……? もしくは単純に可愛いと思って見ているのか?

 しかし、どちらにしてもイヴァン様とフレッジ様のことをあまりにも熱心にガン見している。ショタ好き……いやいや、そんな馬鹿な。


 そんな風に疑問を感じつつ、新しい荷物の箱を開けたところで……私に電流が走った。


 手を止めた私の手元を覗き込んだヴィル兄様にも、電流が走る。


「こ、これ……。首輪に、鞭に、鉄の檻……!?」


 愕然としたように呟いた兄様の声により、私にもこれが現実だと認識できた。

 そう、開けた引越しの荷物の中には、人がつけられそうな大きな首輪や子供が入れそうな檻、その他、使い方もよく分からない怪しい道具が入っていたのである。


「あわ、あわわ、つつつ通報……!? いくらイケメン老紳士でもダメです!!イエスロリショタノータッチィ!!!!」

「なに言ってるのアリス!? いやなんにしてもこの道具は一体……!?」


 脳内に駆け巡るのは拉致監禁され、首輪をつけられてうるうると目を潤ませるイヴァン様。または鞭でしばかれ、狼の誇りを失わんと健気に抵抗するフレッジ様のあられもない姿だった。もちろん、その後ろに立つガルシア先生のメガネは怪しく光っている。

 一瞬にしてテンパった私とヴィル兄様だが、その騒ぎに気づいたガルシア先生がおや、と微笑んでこちらにやってきた。


「もしかして、君たちも魔獣の飼育に興味があるのかな?」

「……え? 魔獣?」


 思いがけずのほほんとかけられた声に、気の抜けた声が出たのだった。

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