193 挨拶に行こう
しばらく連続投稿です。
さて、どの先生に声をかけに行こうか。
自習室から出て先生方の顔を思い浮かべたところで、角から影がひょっこりと現れた。
「あら、こんな所で何してるの?」
「レイ先生!」
挨拶して事情を説明する。すると、先生は「それなら丁度いいわ」と笑顔でぽんと手を打った。
「今日、空席だった算術の新任の先生が来たところよ。ご挨拶してみたらどうかしら」
新任の先生か。それならば早速ご挨拶に行ってみるのもいいかもしれない。
算術のユリエラ先生が消えて以来、算術学の先生はなかなか決まらずにいた。そのため他の先生方が臨時で代理しながら穴埋めしていたのだが、ようやく決まったようだ。
それに、レイ先生が勧めるのだからまずい立場の人でもないのだろう。お礼を言って別れ、早速算術学の教師準備室へ向かうことにした。
「どんな方でしょうね?」
そう言いつつ、しっぽをフリフリしながらフレッジ様が私の横を歩く。逆側の私の隣はイヴァン様がるんるんしながら占領している。
後ろにはうちの男性側近達だ。……今日はやけに男世帯になってしまったな。
ふと最近のガブリエラに対抗しているようで複雑な気持ちになりつつ、ユレーナは家事の修行、そしてマチルダは服飾関係の修行に出す時間を増やしているため、仕方ないかと苦笑した。
実はこの夏から、ユレーナだけでなくマチルダも修行を始めた。
それというのも、以前から「特筆できる特技がない」ことを悩んでいたのが気になっていたため、最近オタク化していたマチルダに「まずは好きな家事……例えばお裁縫を更に上達させてみるのはどうですか?」と勧めてみたのだ。
最初はピンと来ていない様子だったが、覚えている限りの前世の制服や魔法少女の服、軍服など好きだった服をイラストにして見せた所、予想通り激しく食いついた。
要はコスプレである。オタクにとって衣装とは見るでも着るでも無視できない分野だ。
せがまれ、覚えている限りの好きだったキャラの服などをうろ覚えで描いて渡した日から、ただ妄想して身悶えるだけだったマチルダの日々は変わった。
刺繍が得意なお母様が「皇都にいる時なら先生を引き受けてもいいですよ」と言ってくれたので、もっぱら宿題形式で出された課題を暇を見つけてこなしているらしい。まだまだ針と糸の扱いの段階だが、とても楽しそうなので見ている方も安心だ。
曰く、「最近、アリス様や獣人の方々に着て欲しいお洋服の妄想が止まらないのですわ!」とのことだ。
そういう訳で、マチルダとユレーナはやる事が増えた。そのために学園内でのお供はデュカー兄弟どちらかに頼む事が増えている。
逆に兄弟にやりたい事ができた時は、マチルダとユレーナの出番が増えるはずだ。
そんな事を考えているうちに、算術学の準備室に到着した。




