187 衣替え
ニコラスの側近採用と夜明け団加入から、少し経った。
季節は夏、ローヴァインも衣替えの時期だ。
そんな訳で初めての夏制服に着替え、姿見の前にて仁王立ちしている訳なのだが。
「セーラー服っていうのは、異世界にも何故かあるんだよなぁ……」
「せぇらぁ……? 夏服のことですか?」
姿見を見つつ呟くと、それに反応したユレーナがきょとんと首を傾げた。
それになんでもないよと誤魔化してから、再び視線を姿見に戻す。
そう。ローヴァインの夏の制服は、何故かセーラー服だった。
より正確に言うと、セーラー襟のふりふり半袖ワンピースだったのである。
普通に服は可愛いと思う。個人的にセーラー襟はかなり好きだ。
……好きなのだが、中身がまもなくアラサーを飛び越えそうな精神年齢の人間にはいささか抵抗感があった。
そりゃ見た目は幼女だから問題ない。転生後のこの姿は容姿も整ってると思う。わかってはいるんだけどさ。
やっぱこう、アラサーを過ぎてから少女にのみ許されし聖なる衣を身に纏うのは、また違った恥ずかしさがあるんだよね。
しかもこのセーラーは、白いワンピースに白のリボン、白のフリル、おまけにセーラー襟の部分まで白の、総ホワイトな甘~いワンピースである。雰囲気は甘ロリや白ロリに近いかもしれない。
「えと……。変じゃないですか? なんというか、違和感ないですか……?」
違和感を感じるのは精神年齢の問題だけとはいえ、つい不安になってマチルダとユレーナに意見を仰ぐ。
すると、マチルダが興奮気味に身を乗り出してきた。
「何を仰るのです、カンッペキですわ! むしろアリス様が着ずして誰が着るのかというくらい、完璧にお似合いですわ!」
「ええ、そうです。 銀の御髪と白桃の肌が清楚な衣装と相まって、天使の様です……! そして恥じらう姿がまた……ふふ……」
セーラー服萌え属性も兼ねていたらしいマチルダがくねくねしながら全肯定してくれる。落ち着いて見えたユレーナもいつになく握りこぶしを作って震えつつ力説してくれていて、二人の全力フォローに若干びびった。
ひとまずお礼を返し、二人の姿もしっかり目に収める。
月光寮生の夏服は淡いグレーのセーラーワンピだ。マチルダとユレーナは綺麗な赤系と金色の髪をしているから、全身真っ白お化けな私よりもよほど淡い色のセーラーが似合っていて、軽く見積っても一億倍ほど可愛い。
というか、うちの側近って基本的に全員可愛い。衣装を変えるとまた違った良さが発見出来て楽しい。
人生の潤いだよ、うん。
気を取り直し、そんな天使二人を従えて宵闇寮を出たところで、別の階から出てきたイヴァン様とフレッジ様の姿が見えたので声をかけた。
男子はいつもの黒い短パン、ソックスガーターに靴下というところは変わらないものの、トップスがこれまた半袖のセーラー襟になっている。小さい水兵さんという感じで最高だ。
「おはようございます、お二人共!」
「おは……っ」
「お……ふ」
可愛いな~と鼻の下を伸ばしつついつもの挨拶をすると、こちらを見た瞬間イヴァン様が猫目になって固まり、真顔になったフレッジ様のしっぽがボワッと膨れ上がった。
そんなフリーズ状態でこちらの全身を上から下まで異様に凝視されているので、こちらまで固まる。
あの……? と声をかけると二人はなんとか再起動したが、挙動が明らかにおかしかった。
「ま、まぶ……ま……っ」
「ぐ……! うぐ……!!」
な、なんだどうした。なんだか呻きながらモゾモゾしている。
特にイヴァン様の方は目が爛々としており、いつもの飛びかかってくる時のモーションに近いが……、横のフレッジ様がそのしっぽをむんずと掴んで何事かを耳元に囁いた瞬間、青くなって止まった。
「にゃ、にゃぁぁん!!」
「協定を忘れないでね、イヴァン……。ええと、おはようございますアリス様、また後でお会いしましょうっ!」
そう言ってイヴァン様を引きずって走り去って行ったフレッジ様を呆然と見送り、一拍置いてから、私は若干涙目で側近二人へと振り向いた。
「……そんなに似合ってませんか、この服装」
内側からにじみ出るメンタルおっさん感とか、アラサー感みたいなものが、白ロリセーラーに猛烈な違和感を与えたのでは……?
そう不安になって堪らなくなったのだが、我が側近二人は走り去った男子二人にツンドラのごとく冷たい視線を送りつつため息をついていた。
ほどなくしてローリエ様とレティシア様と合流し、お互いの衣替え姿を褒めてキャッキャウフフしたことによりなんとか多少の元気を回復したものの、しばらく周囲の視線は意図して気にしないようにしよう……。と、固く誓ったのだった。
というわけで、新章&新衣装でした。
イメージが掴みにくいという方はぜひ「白 セーラーワンピ ロリータ」で検索をかけてみてください。幸せになれます(笑)




