182 贈り物
「ニコラス?」
見れば、ニコラスは何輪かサーリエの花を持っていた。素材ポーチから取り出したようだ。
「それ、どうして」
「元々これを取りに来ていたんです。それで足を滑らせて……」
なんと。崖にいたのはそういう訳だったのか。
どういう理由なのかは知らないが、柵もないこんな場所で危険すぎる。
「もう絶対そんな危ない事しちゃだめだよ?」
崖なんて子供が近寄るものじゃない。私が怒ると、ニコラスはふいっと顔をそむけて少し俯いた。聞いてんのかコラ。
「ええ……? いろいろ突っ込みどころは多いけど、なによりいつの間にそんな仲良くなったの?」
私とニコラスを見比べたヴィル兄様が、もやもやした顔でそう聞いてきた。別に仲が良くなったわけではないんだけどね。
ヨハンやマチルダ、ユレーナも警戒した様子でニコラスを睨みつけている。ケモっ子に至っては唸り始めた。
そんな皆をちらっと見まわしたニコラスは、ひとつ鼻を鳴らしてからそれに構わず私にさらに近寄ってきた。
「差し上げます」
「え?」
一瞬、距離感がおかしくなったのかと思った。
ニコラスの腕が伸びてきて、頭を軽く引き寄せられる。
目をぱちくりした時には離れていた。そして耳の上、髪になにかの感触……。
視界に入るそれを見てみれば、サーリエの花だった。
驚いてニコラスを見ると、今まで見たことが無かったような柔らかい雰囲気で、控えめに微笑んでいる。
「助けてもらったお礼です。そして、お近づきの印に」
そう言ってにっと笑ったニコラスは、いつもの卑屈さや影を捨てて、どこか明るい顔をしていた。
「な、な、な……!」
その様子を見ていたヨハンが、赤くなってわなわなと震える声を出した。そしてニコラスに詰め寄り食って掛かる。
「まさか。まさかニコラス、お前!」
「ふふん。お前にだけは負けないからな、ヨハン」
「~~!!」
うん? 何? ……と、いつになく普通の兄弟みたいなやり取りをしている二人を眺めた時だった。
「許さない……許さないぃ!」
ヒステリックな金切声と共に、木立を抜けてガブリエラが飛び出してきた。




