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150 ダヴの翼

本日二回目の更新です。


 ケモっ子来襲騒動はひとまず落ち着き、日も落ちてきたから全員城の中へ入ろうということになった。

 夕日をバックに、きゃあきゃあと楽しそうに声を上げながらケモっ子達が走っていく。私もその後を早歩きで追っていたのだが、ブレイブ&ダヴ兄弟がずいぶん遅れて歩いていることに気づいた。

 

 城内で迷子になるといけない、とヴィル兄様と二人で戻ってみると、ブレイブさんが「僕達は後から行くから大丈夫ですよ」と声をかけてくれた。

 しかし見た感じ、ブレイブさんがダヴ少年に歩調を合わせているようである。

 

「どうかしたのですか?」

 

 やけにゆっくりなので、もしや旅の中で足を痛めたのかと聞くと、そういう訳じゃないとダヴ少年に首を振られた。

 

「気にしなくて大丈夫だ。僕は元々、走れないのだ」

「……走れない?」

 

 不思議に思って問い返す。が、もしかして悪いことを聞いたかと思いハッと口を押さえる。

 しかし、そんな流れを見て逆にブレイブさんが慌てた。

 

「気にしなくて大丈夫ですよ、アリス様。走れなくなったのは生まれつきとか事故ではなく、ダヴが自分でやらかしたからなんです」

「うむ。だから本当に気にしなくて大丈夫なのだ!」

「そ、そうなのですか?」


 一体どんな事をやらかしたのかと思っていると、ダヴ少年が何故か胸を張り、腰に手を当てて語りだした。

 

「物心つく前から空を飛んでみたいという欲求があってな。五つの時に、鳥を模倣した自作の翼を腕につけて木から飛び立とうとして、盛大に失敗、落下したのだ!」

「ええ!?」

「はぁ……。あの頃は私も学園生でしたし、若くて少々やんちゃだったので……。こいつのことをきちんと見張れる人間が少なかったのです。その隙に」

「仕方あるまい、壮大な目標と実験には失敗がつきものなのだ。 あの時は未熟ゆえ失敗したが、今ならもっと上手くやれるぞ!」

「はあぁ……また一人でやらかさないよう、見張ってる身にもなってくれ、ダヴ」

 

 む、無謀すぎる。自らアイキャンフライして足を悪くしたということらしい。

 しかも、全然懲りていないところがマッドサイエンティストすぎる。むしろ、何故かさらに目が輝いている。

 

 しかしブレイブさんの疲れ切った溜息に、さすがに悪いと思ったのか……ぽりぽりと頬をかきながら明後日の方向を向いた。

 

「ま、まぁその。そのせいで兄上にはいつも迷惑をかけて、申し訳ないと思っている……ぞ?」

「ホントにわかってるか? ならもう一人で勝手に行動しないか?」

 

 念を押されたことで、目を泳がせて下手くそな口笛を吹き始めたダヴ少年に、今日で一番大きなため息を吐いたブレイブさん。

 しかし一拍置いてから、実は……と苦笑する。

 

「まぁ色々言ってますが、研究バカっていうのは私もまったく同じなんです。そんな事があったのに……いや、だからこそ飛行についての研究を、二人して諦められなくて。だからここへ一緒に来たという部分もあるんですよ」

「そうなのですか?」

 

 意外である。すると、夢にきらめく瞳で破顔したブレイブさんは、頭につけたゴーグルをくいっと上げた。

 

「いつか必ず、ダヴを他の獣人と同じスピードで、どこへでも行けるように……いや、むしろ誰よりも早く動けるようにしてやりたくて。それならば、やっぱり地面よりも空でしょう? そのためにと、先走ってこんなものまで作ってしまいました」

「……兄上……!」

 

 ブレイブさんの決意に感動の声をもらすダヴ少年。

 ええ話や……、とくすんと鼻を鳴らしそうになりつつ、持ち上げられたゴーグルの存在に納得した。

 

「なるほど。それでゴーグルなんですね」

「……!?」

 

 私が納得顔で「ゴーグル」と言った瞬間、二人がしゅばっ!と雰囲気を変えた。

 

 そして興奮したように、これが何か分かるのか!?と詰め寄ってくる。

 

「ちょ、 落ち着いて……!」

 

 ヴィル兄様にどうどうされる二人だが、勢いが止まらない。

 尻尾がちぎれそうな勢いでブンブンしている。

 

「これは僕達のオリジナル道具で、流通していない! 便宜上、仮で鷹の目ガラスと呼んでいるが……もしや、この道具の存在理由が一目見て分かったのか!?」

「え、ええ。空を高速で飛ぶ時、目を保護するためのものですよね? 必要ですから、私も作ろうと思ってたんですが……」

「……っやはり、やはりこの人に会いに来たのは間違いじゃなかったぞ、兄上!!」

「あぁ、そうだねダヴ!!」

 

 ガシッと手を組み合うメトロ兄弟。

 冷静に見えた兄のブレイブさんまでおかしくなってしまった……!? と呆然としていると、ヴィル兄様があぁなるほど、と苦笑した。

 

「あの謎メガネ、そういう意味でつけてたのか……。いやね、ダヴはアブデンツィアでもちょっと、いや、かなり浮いていてね。僕たちには利用用途がよく分からない、謎の道具や試作品? を常に持ち運びしているから……。それをアリスが一瞬で理解したから、喜んでるんだよ」

 

 あ、なるほど。

 どうやら時代を先取りしすぎて、周囲が引いているらしい。

 

「そう! 普通に暮らしていれば、目を保護するガラスなど必要ないと思う! しかし、アリス嬢にはこれの必要性が一目で分かる!!あまつさえ名前をつけて自分でも考えていたのだ……!!これは凄いことなのだぞ、ヴィルヘルム先輩っ!!」

「そう、高速飛行で目の保護は必須なのですから!」


 わーい、と兄弟でくるくる回って大喜びしている。どうやら、私はマッドサイエンティストの理解者にして仲間みたいな立ち位置に認定されたらしい。

 あと、ブレイブさんに隠れマッドサイエンティストの属性が加わった。まともそうに見えたけど、やっぱダヴ少年の兄だった。

 

「共に……! 共に研究してくれないか!?」

「へっ?」

「あ、こら!」

 

 呆れて気が緩んでいたヴィル兄様のガードが突破され、ダヴ少年に手をがっしと握られる。そしてきらきらの目で見つめられた。

 

「僕達の積み上げてきた研究成果、アイデアを全て提供しよう!資材も調達するし物作りなら任せてくれていい!さあさあ、君の研究に加わらせてくれ、うんと言ってくれアリス嬢!!」

「ひょえ……」

 

 この物凄い勢いに、思わずかくかくと首を縦に振ってしまった。

 

 するとまたもや、兄弟でわーい!と大喜びされる。

 ダヴ少年のみならず、ブレイブさんの落ち着いた大人の雰囲気も消し飛んでいた。もはや、ただのはしゃぐ大型犬である。

 

 ま、まぁ……。心強い(?)熱心な仲間が増えたのだと思えばいいか。

 

「ありがとうアリス嬢!なんならお礼として、君の側近になってもいいっ!」

「や、それは結構です」

「えっ何故だ!?」

  

 ……勢いが凄すぎるから、共同研究するにしても……。

 ブレイブさんにできるだけ正気でいてもらうのが必須だな、と思うのだった。

まともに見えたお兄さんも、がっつり研究オタクなのでした。


そろそろ、連続更新を1日1回に戻すかもです。できるだけ1日1回の期間も長く続けたいなぁ……

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