表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/331

133 決意の色


 私の一大告白に続く衝撃発言に、部屋の中は静まり返った。

 一拍置いて、ヴィル兄様が信じられないという顔で問い返してくる。

 

「ガブリエラって……あのガブリエラ?」

「あのガブリエラです」

「……薔薇な感じの?」

「薔薇な感じの」


 こっくりと頷いて返す。

 そのやりとりを見たオルリス兄様がモヤッとした顔で呟いた。

 

「薔薇な感じのガブリエラって……、あの子かぁ」

「あれ、オルリス兄様は会われたことありましたっけ」

 

 不思議に思って聞くと、ローヴァインの薬草園に用があって忍んできた時、ばったり出くわしたのだという。

 頬に手を当てつつ苦笑しながら答えてくれた。

 

「凄い勢いで話しかけてきて……。なぜか、家族と僕が拗れてたことを知ってて。何か色々言ってたんだけど、と、とにかく怖くって……咄嗟に“結構です”って言って逃げてきちゃったんだ……」 

 

 対応が完全に押し売りセールスに対するそれである。思い出したのかちょっと涙目だ。

 ……ガブリエラみたいなタイプ苦手そうだもんなぁ、オルリス兄様。

 

 しかし、これで間違いない。

 ガブリエラは転生者だ。それも恐らく、ゲームプレイヤーだった転生者。

 

「えと、知ってるってことは、ガブリエラ様もお嬢様の世界の人ってことでしょうか?」

「多分。本人に聞いたわけじゃないけど、思い当たることはいくつかあって……」


皇子を即堕ちさせたことや、お茶会で私の行動を見張っていたことなど、ヒントはいくつかあった。それでも深く考えずに確定させなかったのは、ガブリエラを相手にせず見くびっていた怠慢のせいだ。


「ひぇ……と、ということは、お嬢様の世界にあったカードなら、ガブリエラ様がそれを知っている可能性は確かに……、あるようなないような……?」

「うーん、全部で70枚以上あるんだよね、そのカード。それをあの子が正確に覚えてるっていうのは無いんじゃないかな……? というか、まさかアリスは全種類の絵を覚えてるの?」

 

 コニーのぼんやりした呟きをヴィル兄様が拾い、問いかけてくる。それに私は胸を張り自信満々で答えた。

 

「もちろん!! 何回もなぞって覚えたりリーディングしてましたから、ばっちりですよ、多分!!」

 

 ぱんぱかぱーん!という効果音が着きそうな勢いでにっこり答えると、何故か三人に若干引いた顔をされた。解せぬ。

 

「……ま、まぁアリスが特殊なのは今に始まったことじゃないし……? 魔術好きだもんね……!」

「そ、そうだね。好きなことに一直線なのって素敵なことだよね」

「流石はお嬢様ですぅ……!!」

 

 ウンウンと冷や汗をかきながら頷き合うバージル兄弟とコニー。くそう、バージル家だって薬草オタクの巣窟のくせに!

 

「まぁそれはそれとして。とにかく、ガブリエラがタロットについて詳しいかは分かりませんが、私のように魔獣を見て思い出したり調べようとする可能性は捨てきれません」

「なるほどね……正直、あんまりなさそうではあるけど……」


 同意しそうになるが、ぐっと堪えて続ける。

 

「わ、私もあんまりあの子が何かに詳しいとは思いませんけど……。訳あって、この世界について詳しい可能性はあるのです。だから、対策をしたいと思います」

 

 ……ゲームの事を言うかは悩んだが、少しぼやかして話す。いきなりそんなことを言われても気味悪い思いをさせてしまうだろうし。

 

 そして、対策? と首を傾げた皆に、はっきりと告げた。

 

「秘密裏に、タロットについて研究します。仮にどんなタロットを悪用されても、即座に“逆位置(リヴァーサル)”をぶつけられるようにしておく……これしかありません」 


 そう宣言した私の言葉に、息を呑む音が響いた。

 

「そして、その研究はこの部屋にいるメンバーだけで行います」

「……えっ! ジークムント様やオイディプス様……高位の人に伝えた方がいいんじゃ」

 

 驚いた様子のオルリス兄様がそう言うが、私は慌てて遮った。

 

「絶対駄目です! 勿論、お父様達がこれを悪用するなんて一切思いません。思いませんが……もっと上の人たちが知ればどうなるかは……!」

「……!」

 

 ここは帝国だ。つまり元々一枚岩ではない上に、派閥争いが絶えない国だ。

 隣国との境目でも小競り合いが無い訳では無いし、火種はそこらじゅうに燻っている。

 そこにこんな兵器みたいなものを投入すれば、クーデター、内戦、隣国との戦争などなんだって起こりうる。

 お父様やオイディプスおじ様のような責任ある立場の人間が、これを知っていながら黙っていることは……出来ないし許されないだろう。

 ならばこのまま闇に葬ればいいかと言えば、ガブリエラの存在がそれを許さない。

 ガブリエラ自身がタロットの絵柄を覚えてなくたって、確信を持って下の者に命じるなりして魔獣を徹底的に調べさせてしまえば終わりなのだ。

 だから、後手に回る訳には行かない。

 

 ……今度こそ。

 獣人達を傷つけられた時みたいに、試験で不正をされた時みたいに、後手に回ることは絶対にできない。

 確かガブリエラは兄が亡くなっているから、一人っ子だ。つまり次期侯爵。いずれはそれなりに権力を得る。

 

 あんな事を軽々しく行う人達に、この知識を渡しちゃいけない。


 そう決意を込めて三人を見渡せば。

 

 同じ(決意)をした視線が、返ってきたのだった。

 

 

 

 

 

アリスに大きな行動目標ができました。

空を飛びたかったりタロット研究したかったりと大忙しですw


面白かったで~という方は、ページ下部の評価ボタンをポチッとしていただけると嬉しいです((o(*>ω<*)o))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ