100 暴走への助走
お ま た せ
そして100話達成です!前回の話だと勘違いしてましたが、登場人物紹介を抜くとこの話が100話目でしたw
暴風と光に驚き、次いで駆け出した私とコニーは、寮から離れた校舎裏に近いところへとやってきた。
既に光は収束し始めていて、風も止んでいる。……“団員証”の効果が発動したということは、つまり身内の誰かになんらかの危険が迫ったということだ。
感覚を研ぎ澄ませ、人の声の聞こえる建物の隙間を見つけた私はそこへ走り込んだ。……そこに、広がっていた光景は。
まず目に飛び込んできたのは、男子二人。強風に吹き飛ばされたのか体を壁にぶつけ、痛そうに身をよじっているその二人。
何を隠そう、そいつらはガブリエラの側近騎士だった。ニコラスとキルシェという同学年の男子だ。
黒髪黒目の無駄な美形がニコラス、なよなよとした気の弱そうな金髪碧眼がキルシェ。最近ケモっ子達に手を出していた馬鹿どもの筆頭である。
そんなニコラスの手に握られているのは、切り裂かれた団員証……お守りだった。
その二人の様子をオロオロと見ているいかにも下っ端くさい男子も三人ほどいる。
そして、そいつらの反対の壁際にいるのは、汚れ、傷ついた様子の男の子。……金狼族のファニール君だ。
近くには団員証の効果に驚いたのか、眩しそうにしているヴォルヤ君とルシアちゃんもいる。
「…………何ですか、この状況は」
一瞬で煮えくり返った腹を力技で無理やり落ち着かせ、そう問いかける。
すると、私とコニーの存在に気付いた場の全員が一斉にこちらを向いた。
私を見た瞬間に、下っ端くさい三人はあっという間に逃げ出した。……問題の根幹はそいつらではなさそうなので、顔だけインプットして私はあえて何も言わなかった。
ファニール君の様子をちらりと目で見るが、大きな怪我はしていなさそうだ。私の顔を見て一瞬安心したような顔をしたものの、コニーの顔を見た瞬間にさっと下を向いてしまった。……複雑なお年頃かな。
そう冷静に判断しつつ、驚いた様子のニコラスとキルシェをギロリと睨みつけた。
「一体何をなさっていたのでしょう? ……私に、分かるように、1から、きっちりと……説明して頂けませんか?」
内心ブチ切れながらゆっくり、区切ってそう言うと、ニコラスがちっと舌打ちをした。
「犬の女王様のお出ましですか。ハッ、ずいぶんと過保護なことで」
「……今なんと仰いました?」
ブチ切れボルテージを爆上げしながらそう聞き返すと、ニコラスは無駄に綺麗な顔を歪めて笑った。
「いえいえ、女王様と敬意を込めてお呼びしただけですよ、アリス様。……ところでこのような遅い時間に騎士の一人もつけず寮の外にいらっしゃるとは、無用心ですね」
「……話をそらさないで頂けます?まず最初に私は、何をしていたのかと聞いた筈ですが?」
自分の眼光が幼女らしからぬ凶悪さを帯びていくのが分かる。このクソガキ相手に手を出すような馬鹿なことはしないが、段々怒りが抑えられなくなってきた。
「何って見てわかりますよね?不正の摘発ですよ」
「不正?」
キレ気味に聞き返すと、ニコラスはふんと余裕そうな顔で語り出した。
「劣等種である獣人が、不正をしたくなる気持ちは分かりますがね。恐らく試験に魔道具を持ち込もうとしていたので、過ちを犯す前にと善意の心で取り上げたまでですよ。抵抗したので“少し”手荒にはなりましたが」
「嘘ですアリス様!そいつ、団員証をスって、ファニールをここに呼び出したんです!返して欲しければ夜に丸腰で、ひとりでここに来いって……!」
ルシアちゃんがすかさずそう吠えた。……なるほど、いかにもガブリエラの手下がやりそうなことだ。
「へぇ……それはずいぶんとお優しい。ですが、見たところ彼は妙に汚れているし、怪我もしています。なによりそのお守りを切り裂く必要性はあったのですか?」
そう言うと、ニコラスは「抵抗されたから手荒にした、と言ったじゃないですか。2回も言わせないでくださいよ女王様」とひょうひょうと宣った。
それを聞いたファニール君がガルル、と唸り声をあげる。
「ふざけるな……ふざけるな!お前は、羨ましかっただけだろ!」
「……なんだと?」
こちらを向いてヘラヘラしていたニコラスが、急に真顔になってゆらりとファニール君の方を向いた。
「お前、ヘラヘラしてた!なのに、そのお守りがアリス様の手作りで、僕達への思いが篭ってるって……だから返せって言った途端、目の色変えた! お前、アリス様のことが」
「おい、その汚い口を閉じろ犬野郎……っ!」
突然ファニール君の言葉を遮って大声を出したニコラスが走り出し、アサメイをしゅらんと引き抜いた。
「ファニール君!!」
「っ!」
まずい、ファニール君は丸腰だ。くそ、届かない!!
突然のことに目を見開いて走って手を伸ばすが遠すぎる。
……その瞬間、私の横をざっと何かが通り抜けた。
「コニー?!」
その何かは、まさかのコニー。
あっ、という間もなく大人のリーチでニコラスの目の前に躍り出たコニーが、ファニール君を抱きかかえた。
「なっ?!」
……その瞬間は、まるでスローモーションの様だった。
アサメイを逆手に持って振り抜いたニコラスの目が、驚愕で見開かれ。
気弱そうな顔にニヤニヤ笑いを浮かべていたキルシェもまた目を見開いて。
ヴォルヤ君とルシアちゃんは咄嗟に動けず、あ、と開いた口と差し伸ばした手をそのまま硬直させ。
…………アサメイが触れた部分から……首から赤い血を飛ばしたコニーが、ぎゅっと目を瞑って壁にぶつかったのを見た瞬間。
その「赤色」が目に焼き付いて。
―――私は今まで感じたことの無い、意識が遠くなるほどの強烈な力に体が支配されるのを感じた。
いやー、はやくこういうの書きたくて最近うずうずしてました……。ついに大きな動きが!!笑
次話にも早くやりたかったことその2がぶち込まれる予定なのでお楽しみに♪




