99 約束の色
オルリス兄様を呼んでのお守り作りは無事に終了した。
ちびっ子達に懐かれ、夢見心地に嬉しそうなオルリス兄様の帰宅を見送った私達もほっこりしている。
魔術のお勉強会だけでなく、ちびっ子&アニマルセラピー的な目論見が上手くいったようで何よりだ。
魔術が苦手なケモっ子達も、少なからず前より魔術に興味を持った様子で。
解散するころには覚えた呪文を楽しそうに繰り返し口ずさんでいる子もいた。
やっぱこういうのはあこがれが原動力になるよね。厨二病パワーは偉大である。
さてさて、そんなひと仕事を終え、今は夕食も終わった消灯の直前だ。
月の明るい夜空の下で、私はある人物を寮の近くに呼び出した。
「えっと、お嬢様。……お話って何でしょうか?」
そわそわとした顔でそう聞いてきたのは、我が専属メイドにして潜入料理人のコニーちゃんである。
寮の魔石ランプの光がぎりぎり届く、人気のない場所へ私はコニーを呼び出した。
「ふっふっふ。そうは言うけれど、実は少し予想してるんじゃない?」
「……えへへ」
そう、昼間の「お守り」作り。
私は、もちろんコニーとの“約束”の事も考えていた。
孤児院出身で、家族を持たないコニー。オルリス兄様からヴィル兄様へと贈られた、愛の篭った守護に憧れを抱いたコニーへ、私はポプリ……つまりお守りを渡すことを約束していた。
「んふふ……もちろん、あれの事だよ。欲しい?」
「ほ、……欲しいです」
ぽっと頬を染めたコニーは、やはりその約束のことを想像してか照れたようにはにかんだ。
私にとって、コニーは幼い頃から知っている、数少ない信頼出来る人だ。
今では唯一素の言葉で喋れるほど慣れ親しんでいる上、学園まで追いかけてきて大きな貢献をしてくれたコニーは特別な存在だ。証が欲しいと思うのなら、あげたかった。
それに、どんどん私に新しい側近や取り巻きができていくのを見て、思うところがないはずはなかったと思う。
それなのに、落ち込んだりいじけたり、先輩風を吹かせて他の子に冷たく当たるなんてこともなく、いつも通りの暖かい笑顔でいてくれたことが、私はなんだかとても嬉しかった。
……裏の顔を隠して、豹変してしまう人を知っているだけに。
だから、これを渡すのだ。
ウエストの小物入れから、そっとお守りを取り出す。
そのお守りに結ばれたリボンは、ひまわりみたいな晴れやかな黄色だ。
その色を見たコニーが、わぁ、と堪えきれない様子で花のように笑った。
「いつもありがとう、コニー。……私の、大切な家族」
「……!」
小さな私から、大人のコニーへ渡すちっぽけなモノ。
でも、コニーにとってこれが大きな意味になるならと、私はにっこり笑って胸を張った。
……お守りを抱きしめて、ふびゅぅ、とコニーが涙と鼻水をダダモレにして喜んでくれるのを見て、安心と喜びで胸がきゅうっとなる。
手を引いてしゃがませたコニーの涙を拭いてあげながら、生まれた時から愛してくれてた両親とはまた違う、意志を通わせて初めて成る“家族”を私も求めてたのかもしれないなぁ、なんて思った。
―――その時、だった。
キィンという硬質な音とともに弾けた光が、少し離れた建物の影で弾けた。
同時にそちらから、押し出されるように吹いてきた強い風。
「これ…………まさか!!」
「昼間に言っていた、お守りの効果、ですかぁ……?!」
危機に瀕した時に発する強風と強い光が弾けた方角へ、私とコニーは駆け出した。
ほっこり&ラストは次話への布石。
前世のアラサーとしての人格が強いものの、今世のアリスでもある主人公にとって、信頼出来るメイドってかけがえがないんじゃないかな、と思って書きました。
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