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いまひとつHOTではないけれど限りなくsweetなX’mas

作者: 獅兜舞桂
掲載日:2017/12/02


 夕方5時過ぎの公園を、毎年12月恒例のイルミネーションがキラキラ彩る。

 公園入口すぐの噴水前で待ち合わせ。

 水飛沫が光を神秘的にぼかす。

 もう、どのくらい待っているのだろう? 高校の制服にマフラーと手袋という格好では、さすがに寒い。

 白い吐息。短いスカートの裾を微かに揺らして小さく足踏みしながら、噴水を見るフリをして、さりげなく噴水の向こうに設置されている時計に目をやった。

 そこへ、

「アスカちゃん! 」

 入口方向から名を呼ばれ、アスカは振り返る。そこに、待ち人の姿。

「ショータ君っ! 」

「ゴメン! アスカちゃん……! 」

 公園近くのファミレスの制服にパーカーを羽織ったショータは、息を切らしながらアスカに駆け寄り、

「ランチタイムが混んだせいで、休憩時間がズレ込んじゃって……! 」

申し訳なさげにアスカを窺った。

 アスカは口元に笑みを作って首を横に振る。

「大丈夫。わたしも、ほら、もうすぐ大会でしょ? 部活が長引いちゃって、今、来たとこだから」

「…そっか。それならよかったけど……」

 ホッと息を吐くショータ。

 そんなショータを、アスカは、爪先から頭のてっぺんへと視線をゆっくりと移動させて眺めた。

 その視線に、ショータは無言の問い。

 答えてアスカ、

「バイトの制服姿、初めて見たな、って思って。……なんか、そういう服装してると、大人のひとみたい」

 褒め言葉と受け取ったのか、ショータは照れる。

「そ、そうかな……? 」

「うん。でも寒そう。パーカーの下、半袖でしょ? 」

言って、アスカは右手の手袋を脱ぐと、

「ショータ君、右手出して」

 ? な表情で、また無言の問いをしながらも、言われたとおりに右手を差し出すショータ。

 アスカは、今し方脱いだばかりの、ショータには少しキツめの自分の手袋を、ぎこちない手つきで、差し出されたその手に被せる。

「え、でも、これじゃあ、アスカちゃんが寒いんじゃ……? 」

「ううんっ! 」

ショータの手に手袋を被せるために俯いたままの状態で、アスカは首を横に振って、その言葉を強めに遮り、

「こっ……こうすれば……っ! 」

持てる勇気を総動員して、右手でショータの左手を取った。

「こ…ここ、こうすればっ! あったかいんじゃないかな、って……! 」

 アスカは俯いたまま。ショータの顔を見れない。

 ショータ、

「うん。あったかい」

つながれた手を、自分の手がアスカの手を包み込む形に握り直す。

「…ショータ君……」

 アスカは顔を上げ、ショータの目を見つめた。

 ショータは静かに頷いて優しく受け止め、

「クリスマスなのに、1時間しか会えなくてゴメンね。僕、アスカちゃんと付き合えることになるなんて思ってなかったから、バイト入れちゃってて……。

 …今、こうしてても、何だか夢の中にいるみたいで……」

「…わたしも、夢みたい……っ! 1時間でも、嬉しい……! ショータ君と一緒に、イルミネーションを見れて……っ! 」

 と、不意に、空を仰ぐショータ。

 アスカもつられる。

 イルミネーションのために深みを失った夜空から、無数のフワフワした白いものが現れ、天使の羽のように舞い降りてきていた。

 頬に到達したそれは冷たく、瞬く間に水へと変化して頬から顎へ伝い流れ落ちる。

「…雪……! 」


(…雪……)

 斉木美也子さいきみやこ・40歳は、腰掛けているベンチのほんの1メートル先の噴水前で空を見上げている初々しいカップル・アスカとショータにつられて、空を仰ぐ。

 予約していたチキンを仕事帰りに受け取りに来たのだが、予約の時間まで、まだ少しあるため、店のすぐ隣の、この公園に立ち寄っていた。

 その手には、公園の駐車場で買い求めた、素手で持てないほど熱々の缶おしるこ。

(どうりで冷えると思ったら……。でも、ホワイトクリスマスか。いいね……)

 雰囲気に浸りながら缶おしるこを開け、

(そう言えば、おしることぜんざいの違いって何だろうな……。私的には、粒が入ってる時点で、この商品は本当はぜんざいなんだけど……)

そんなことを思いつつ、ひと口。

(…ぬるい……)

 それほど大きくはないが何となく、ほぼ無意識のうちにしていた程度の期待を裏切られ、溜息を吐く。

 缶は熱々なのに中身はぬるい。HOT缶飲料あるあるである。

 しかし、ぬるい分、甘みは増して感じられた。



                                   終


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― 新着の感想 ―
[一言]  手、缶コーヒーといろいろな温まり方があるのかもしれません。
2017/12/03 08:36 退会済み
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