いまひとつHOTではないけれど限りなくsweetなX’mas
夕方5時過ぎの公園を、毎年12月恒例のイルミネーションがキラキラ彩る。
公園入口すぐの噴水前で待ち合わせ。
水飛沫が光を神秘的にぼかす。
もう、どのくらい待っているのだろう? 高校の制服にマフラーと手袋という格好では、さすがに寒い。
白い吐息。短いスカートの裾を微かに揺らして小さく足踏みしながら、噴水を見るフリをして、さりげなく噴水の向こうに設置されている時計に目をやった。
そこへ、
「アスカちゃん! 」
入口方向から名を呼ばれ、アスカは振り返る。そこに、待ち人の姿。
「ショータ君っ! 」
「ゴメン! アスカちゃん……! 」
公園近くのファミレスの制服にパーカーを羽織ったショータは、息を切らしながらアスカに駆け寄り、
「ランチタイムが混んだせいで、休憩時間がズレ込んじゃって……! 」
申し訳なさげにアスカを窺った。
アスカは口元に笑みを作って首を横に振る。
「大丈夫。わたしも、ほら、もうすぐ大会でしょ? 部活が長引いちゃって、今、来たとこだから」
「…そっか。それならよかったけど……」
ホッと息を吐くショータ。
そんなショータを、アスカは、爪先から頭のてっぺんへと視線をゆっくりと移動させて眺めた。
その視線に、ショータは無言の問い。
答えてアスカ、
「バイトの制服姿、初めて見たな、って思って。……なんか、そういう服装してると、大人のひとみたい」
褒め言葉と受け取ったのか、ショータは照れる。
「そ、そうかな……? 」
「うん。でも寒そう。パーカーの下、半袖でしょ? 」
言って、アスカは右手の手袋を脱ぐと、
「ショータ君、右手出して」
? な表情で、また無言の問いをしながらも、言われたとおりに右手を差し出すショータ。
アスカは、今し方脱いだばかりの、ショータには少しキツめの自分の手袋を、ぎこちない手つきで、差し出されたその手に被せる。
「え、でも、これじゃあ、アスカちゃんが寒いんじゃ……? 」
「ううんっ! 」
ショータの手に手袋を被せるために俯いたままの状態で、アスカは首を横に振って、その言葉を強めに遮り、
「こっ……こうすれば……っ! 」
持てる勇気を総動員して、右手でショータの左手を取った。
「こ…ここ、こうすればっ! あったかいんじゃないかな、って……! 」
アスカは俯いたまま。ショータの顔を見れない。
ショータ、
「うん。あったかい」
つながれた手を、自分の手がアスカの手を包み込む形に握り直す。
「…ショータ君……」
アスカは顔を上げ、ショータの目を見つめた。
ショータは静かに頷いて優しく受け止め、
「クリスマスなのに、1時間しか会えなくてゴメンね。僕、アスカちゃんと付き合えることになるなんて思ってなかったから、バイト入れちゃってて……。
…今、こうしてても、何だか夢の中にいるみたいで……」
「…わたしも、夢みたい……っ! 1時間でも、嬉しい……! ショータ君と一緒に、イルミネーションを見れて……っ! 」
と、不意に、空を仰ぐショータ。
アスカもつられる。
イルミネーションのために深みを失った夜空から、無数のフワフワした白いものが現れ、天使の羽のように舞い降りてきていた。
頬に到達したそれは冷たく、瞬く間に水へと変化して頬から顎へ伝い流れ落ちる。
「…雪……! 」
(…雪……)
斉木美也子・40歳は、腰掛けているベンチのほんの1メートル先の噴水前で空を見上げている初々しいカップル・アスカとショータにつられて、空を仰ぐ。
予約していたチキンを仕事帰りに受け取りに来たのだが、予約の時間まで、まだ少しあるため、店のすぐ隣の、この公園に立ち寄っていた。
その手には、公園の駐車場で買い求めた、素手で持てないほど熱々の缶おしるこ。
(どうりで冷えると思ったら……。でも、ホワイトクリスマスか。いいね……)
雰囲気に浸りながら缶おしるこを開け、
(そう言えば、おしることぜんざいの違いって何だろうな……。私的には、粒が入ってる時点で、この商品は本当はぜんざいなんだけど……)
そんなことを思いつつ、ひと口。
(…ぬるい……)
それほど大きくはないが何となく、ほぼ無意識のうちにしていた程度の期待を裏切られ、溜息を吐く。
缶は熱々なのに中身はぬるい。HOT缶飲料あるあるである。
しかし、ぬるい分、甘みは増して感じられた。
終




