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あれから、勝利は柔侍を探したものの発見できなかった。
1週間後
高校の教室では柔侍と親しくしていたメンバーがそろっていた。
「今日も柔侍は来ていないのか……」
風紀委員の実重直務は1年前の柔侍に何度も手を焼かされ、それでも更生した柔侍とは親しくしていた。今回の失踪はそれを裏切る行為でもあった。
「家にも帰っていないなんて、どうしたんだ……」
勝利は柔侍の父へ何度も電話したが、「まだ帰っていない」という答えしか帰って来ていない。
「本当にどうしちゃったのかな……。いきなりだったんでしょ?」
同じクラスの羽音美歌も心配そうに呟く。
「まあ、奴のことだからピンピンしてるだろうけどね……。こんなに心配させらているんだから、見つけたらガツンと言わないと!」
陽気に言うのは築城・アレクサンダー・伊智朗である。
「……」
勝利の心にはある疑問が浮き上がっていた。
「なんで、いきなりあんなに攻撃的になったんだろう……?」
まるで1年前までのアイツみたいだと勝利は考えていた。
その時
「うわー!!」
校庭から叫び声がした。
「なんだ!?」
窓からのぞくと校庭には十数人の生徒が倒れているではないか。
その中心には不気味なコートを着込んだ人物が立っている。
「……!」
「勝利!? どうしたんだよ?」
直務の声も聞かず、勝利は校庭に向かい走り出した。
「お、おい……」
「おい!」
勝利が校庭に着くと倒れている人物に先生たちも交じっている。おそらく取り押さえようとして、返り討ちにあったに違いない。
「……」
勝利の呼びかけに応じることのないフードの人物は近隣の男子中学生の様だ。制服に見覚えがある。
「おい!!!」
もう一度呼びかけるとフードの少年はやっと勝利のほうを見た。
「なに」
苛立たしげに問うその言葉には傲慢さがにじみ出ていた。間違いないと勝利は思った。
「おまえ、穐谷柔侍って知っているか?」
「……何が聞きたい」
「奴はどこにいる」
「……奴呼ばわりだとっ…! 貴様には礼儀というものを教えてやろう」
そういうとフードの少年は左腕の装置を展開した。
「デュエルガントレット機動!! 強制デュエル!!!」
その瞬間、勝利の左腕の装置も起動した。
「なんだと!?」
この町にはG-ディバイスと呼ばれる装置が存在する。左右の腕のいずれかに装着し、スマフォやタブレットPCの代わりとして市民に支給されている。しかし、その本来の使い方はDOCでの対戦をさらに盛り上げるためのMATERIAL・REAL・VISION(通称MRV)システムを組み込まれた対戦機なのである。
本来、対戦する際はお互いが合意の上でシステムが起動するのだが一部の違法改造ディバイスは相手の意向を無視して起動させるチートコードがあるのだ。
勝利のG-ディバイスが起動しデュエルガントレットモードに移行すると、校庭はデュエルフィールドに変貌した。
「貴様のあのお方への態度、我が目に余る。よって処刑デュエルだ、苦しむがいい!!!」
慌てる勝利を置き去りに少年は宣言する。
「デュエル・ゴー!!」