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カネリア冒険記  作者: 桜本 結芽
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第7章 天才神官、スナス・オー

 森へ走って行ったカネリアを探すためケイケナとドナーは森の中を歩いていると、ドナーはケイケナに呼ばれそこへ行ってみると、その場には弓矢と旅の荷物が落ちていたのでケイケナが弓を拾い上げそれを見ると真ん中に蔓科植物の真ん中に星の印が彫られていて、それを確認した彼は困惑したように眉根をよせながら、

 「これ、ファーム族の印が彫られてる……きっとカネリアの弓だ! この植物の印は族長の物だし星の印はファーム族のものだ、この弓矢がここにあるという事はカネリアも誘拐されたのかもしれない!」

と言って弓を強く握りしめるケイケナの手をドナーは優しく包み込みながら、

 「ケイケナ君、今は怒っている時ではないよ、早く皆がいる場所まで戻ってこの事を伝えなければいけないんだ、わかるね?」

 そのケイケナを真っ直ぐに見つめるドナーの瞳にも怒りの感情が込められていることに気づいたケイケナは素直に頷き、森を出て仲間と合流し6人は一旦森から離れた草原で話し合う事にして、ラウスが弓に絡みつく魔力を感じ取ると、

 「カネリアさまを誘拐したのは彼女の兄君を誘拐した人物と恐らく同じでしょう、微かですが弓から闇の〔力〕を感じます、どこへ連れ去られたのかは分かりかねますが……」

 と言うと静寂が6人を包んだのだがそれを破るようにフルトが、

 「何か……何か良い方法が無いのかなぁ?」

 そう言った後彼は何かを思い出したように顔を上げ、

 「そういえば何年か前に長老に聞いたんだけど、ドワーフ族にかなり凄い神官が居るって話! その人ならカネリアさんの居場所がわかるかもしれない!」

 と言われドナーも今気付いたように、

 「そうか! 彼なら出来るかもしれない!」

 とても大きな声で言うと立ち上がり人差し指と中指を唇に当て口笛を吹くと、どこからか大きなタカが飛んで来てドナーの肩に留まると一つ鳴き、その様子を驚きの表情で見つめる5人にドナーが、

 「このタカは私の伝言鳥なんだよ、私達ドワーフは私の様に日々いろんな場所へ移動する者が多いからね、何かあった時にこのような鳥に伝言を託して〈ドワーフの穴〉まで届けて貰うんだよ」

 そう言いながら荷物の中から丁寧にしまってある布を取り出し、その中から小さな紙と筆とインクを取り出して何やらドワーフの文字で手紙を書き始めそれが終わると、タカの足に先程の紙を細く丸めて小さな布で括り付けるとタカに、

 「〈ドワーフの穴〉へ飛べ!」

 と3度強く言うとタカはまた一つ鳴くと飛び立ちしばらく上空で旋回すると、〈ドワーフの穴〉がある方向へ飛んで行きそれを見守ったあと彼は、

 「これで良いだろう、それじゃあ〔彼〕が来るまでここで待とう」

 そう言って微笑むと夕暮れの中焚き火を作る支度を始めたので他の5人も手伝い、タカが飛び立ってから3日後の夕方に見張りをしていたラウスが遠くに人影を見つけ、警戒しながら鼻歌まじりで夕食を作っているドナーの元へ行き小さく低い声で、

 「何者かが近付いて来ます」

 と言うとドナーも警戒しながら横に置いてあったハンマーを持ち上げ見張りをしていた場所まで静かに行くと、近付いて来る者も彼らに気付いたのか大きく手を振るのでその正体に気付いたドナーはハンマーを下ろし走って行くと、

 「スナス! よく来てくれたな、待っていたよ!」

 そう言うと自分の左拳で右胸を5回強く叩くと彼も同じ仕草をして握手し合い、その様子を不思議そうに見ていたフルトとキルトがドナーに尋ねると彼は微笑みながら、

 「これは我々ドワーフの男同士の挨拶なんだよ」

 と教えると2人は感心したように頷きその後近づいて来たユレイヤとラウスがドナーに〔彼〕の紹介を頼むとドナーは、

 「彼の名はスナス・オー、ドワーフ族の戦士であり神官なんだ、フルト君が言っていた腕の良い神官は彼の事だよ……ちなみにスナスは天才だ」

 そう言いながらスナスの肩を軽く叩くと彼は顔を赤らめながら、

 「兄さん、人前でそういう事を言うのはやめてください、恥ずかしいじゃないですか」

 そう言うとドナー以外の5人は心底驚いた顔をしていてその後フルトが、

 「あ、あんたドナーさんの弟!? 全然似てないよ!?」

 と大きな声でスナスに指を差して言うのでキルトがすかさず、

 「お兄ちゃん! 初めて会う人に指を差しちゃダメでしょ⁈ それに年上の人にあんたもダメ!」

 そうフルトより大きな声で叱ると怯みながら謝る兄を見てまだ怒りながら、

 「まったくもう!!」

 などと言っているキルトをなだめるフルトを見てスナスは驚愕の表情で、

 「フェアリー族……? 確か彼らは〈くらやみの森〉で秘かに暮らしているはず……なぜ?」

 と呟いている事に気付いたドナーは彼に向き直り、

 「スナス、その事は今から話すよ、だがまず夕食にしよう腹が減っているだろう?」

 そう言って焚き火へと戻り夕食の支度を進め夕食を食べ終わると、ドナーはカネリアに聞いたことや出会ってからの事を全て話しスナスも真剣に聞いていて話し終わると先程より驚いた面持ちで、

 「黒魔術ですか……本を読んで存在自体は知っていましたが、本当に使う者がいたんですね……そうかだから僕が呼ばれたんですね?」

とドワーフ男性の中では珍しい髭の無いスッキリとした顔のスナスに尋ねられたドナーは真剣な表情で、

 「ああそうだ、でも今は夜で暗いし精霊との会話は明日にでも出来そうか?」

 そう尋ねるとスナスは微笑みながら、

 「ええ、では明日の早朝に精霊達に尋ねてみます、彼等は闇夜では活動をしていませんからね」

 と言うと6人は少し話しをしてから眠りに付き翌朝7人は手早く朝食を取ると、スナスは精霊達と接触するためドナーが川の水を汲みに行き、スナスは背負って来た大きな鞄の中から神具のような道具を取り出し準備を始め、草原に丸く大きな〔水晶〕を円形に置きその真ん中の桶の中には、ドナーが汲んできた川の水を入れると折り畳んであった上の部分が丸まっている杖を入れ意識を集中させると、

 「〔ヒト〕ならざる精霊達よ我が問に応えたまえ、彼の者は今現在どこにいる?」

 そう呟くと風がスナスを包み込み彼は精霊の声が聞こえたのか、

 「そうか……では黒幕は何を考えている?」

 と次の質問をすると今度は桶の中の水が跳ね、

 「えっ?」

 そうスナスは驚いた顔をしていると今度は真剣な顔で何度か頷き、

 「ありがとう、我が精霊達よ」

 と言うと意識の集中を止め疲れた様子でため息をつき座り込むとドナーに、

 「兄さん、敵の居場所と何を企んでいるのかがわかりました、首謀者は人間族の集落〔ラーナスの街〕の長であるウッドナ・ノルディで、彼はカネリアさんと兄君の魔力で死者を甦らせようとしています! 一刻も早く行かないといけない、手遅れになる前に……!」

 そう真剣な顔で言うとフルトとキルトとケイケナ以外の者は信じられないといった表情で立ち尽くすとケイケナが、

 「あ、あのスナスさん、人って甦る……んですか?」

 と不安気に尋ねるとスナスは、

 「とても強い魔力を持っていれば……ね、それでも魔力を使い果たして死んでしまう、兄さんが言っていたけどカネリアさんは雷を召喚したあと走って行ったらしいね」

 そう尋ねられ戸惑いながら頷くケイケナを真っ直ぐに見つめ、

 「そうなるとカネリアさんは高位魔術師より上をいく人物かもしれない、そうなると全ての魔力を総動員すれば甦る事もあるかもしれないけど、それでも死を免れないのは変わりないよ、だからお兄さんを誘拐してカネリアさんを覚醒させてから誘拐したんだろうね」

 と言うと右拳を手のひらに当て憤りの混じった声で、

 「手遅れになる前に助け出さないと!」

 そう言うとスナスは仲間の顔を見て頷き合うのを確認すると右拳を前に突き出し、一致団結を求めると仲間達も拳を前に突き出し無言の決意を示してドナーが、

 「それじゃあ、行こう!」

 と言って7人はカネリアとユレイヤを助けるべく駆け出した。

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