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カネリア冒険記  作者: 桜本 結芽
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第6章 カネリア、目覚める

 森を抜けた7人は近くの野原で野宿をして焚き火を囲んで雑談しながら食事をしていたが、ふとカネリアが席を外し1人で火の届かない場所へと行き座ると、それに気付いたドナーが彼女に声をかけようとしたのだがラウスに止められ小さな声で、

 「私が行きます、ユレイヤ様達をよろしくお願いします」

 と言って楽しそうに会話をしているユレイヤ達に指を指しドナーが頷くのを確認すると、カネリアの元へ行きラウスが近付いて来た事に気付いた彼女は、ラウスが隣に座るのを見届けてから視界の前に広がる暗闇に目を向けながら暫く黙っていたが数分後、

「ラウスさん、兄さんは無事かしら? 私、最近兄さんが痛めつけられる夢ばかり見てしまって、怖くて眠れないんです、もし兄さんがそんな事をされていたらどうしようって考えてしまって……」

 目元を涙で濡らしながら話すカネリアを見て黙って聞いていたラウスだったが、

 「次に悪夢を見て眠れなくなれば、この言葉を唱えて見てください『ナイトメア・ゲト・ロスト』と……そうすればよく眠れます、どうぞ、やってみてください」

 そう言うとラウスは立ち去って行き暗闇の中にカネリアのみが残り、その夜の見張りはラウスがする事にしてドナー達は眠ったが、カネリアはまた1人うなされていて慌てて目を覚まし恐怖で声を殺し泣いていると、ふとラウスが教えてくれた言葉を思い出い唱えるとなぜか自然と眠りに落ち翌朝太陽が少し出てきた時間にカネリアは目を覚まし、久しぶりの爽やかな目覚めで一度伸びをし辺りを見回すとラウス以外はまだ眠っていたので、静かに毛布から出て焚き火を抜け少し歩こうと思い行きかけた時いつの間にかこちらを見ていたラウスが、

 「出歩く時は近くまでにお願いします、この辺りは野盗が出るらしいので」

 そう言われ頷いたカネリアにラウスは満足気に頷き返すと再び前を向き見張りに専念しだし、カネリアは草原を歩きながらどうしたら兄を助け出せるか、ずっと考え事をしていたので前もろくに見ず目の前に川があることは全く気付かずにいると、

 「危ない!!」

 突然の大声と腕を引かれて驚くカネリアに呆れ顔で見ていたのはケイケナで、彼は口を開けっ放しのカネリアにため息を付くと、

 「お前、今川に落ちかけたんだぞ? 何か考え事をしていても前は見てないと! ユレイヤを見つける前にお前が死んでしまったら意味ないだろう!」

 そう言われカネリアは反省して俯きながら、

 「ご、ごめんなさい」

 と言って暫く俯いていたのだがパッと顔を上げ、

「ありがとう……ケイケナ、兄さんを見つける前に私が死んだら本当に意味ないものね、ありがとう!」

 笑顔でそう言うとケイケナは突然顔を赤らめながら振り返り、

 「ほ、ほら! 皆のとこに戻るぞ! 心配してるし朝飯ができてるだろうから!」

 と言いながら早足で歩いて行くケイケナをカネリアも早足で付いて行き2人が野宿をしている場所に戻ると、朝食を用意して待っていてくれて名前を呼ばれフルトに一緒食べようと誘われ座ると、ケイケナも隣に座り皆で食事を取ると支度を済ませ、再び歩き出し2時間ほどで《しゅうちの川》へたどり着いて渡るための舟を探そうとしたドナーをラウスが片手を上げて止めると、

 「この川は私の魔法で渡りましょう」

 と言い両手で水をすくう仕草をして意識を集中させると彼は、

 「『ブレス・アブ・エア』」

 そう小声で言うと突然そよ風が起き7人を包み込んで浮き上がらせたと思うと、大きな川を渡り始め運んでくれたので驚きを隠し切れないユレイヤ以外の5人が黙って固まっていると、ユレイヤが楽しそうに小さく笑ってから、

 「ラウスは僕やエルフ王国の誰よりも魔力が高くて剣や弓の使い手でもあるけど、やっぱり一番得意なのは魔法なんです!」

 彼はそう言いながらラウスの腕を軽く叩くとラウスは、

 「王子やカネリア様も努力をなさればこれきしの魔法は簡単ですよ」

 とぎこちなく微笑みながら言っていると7人は無事に《しゅうちの川》を渡り終え、さらに2時間ほど歩いたところに〔にくしみの森〕が現れたのだがその森はとても静かで、鳥や獣の出す音も聞こえないほどだったのでラウスとドナー以外は不安気に森を見つめていると後ろから突然、

 「おい、あんちゃん! エルフだ、エルフがいるよ! こんなとこで何やってんだ?」

 そう太くてガラガラした声がして驚いて振り向く7人はその声の主であるトロールを見て固まってしまい、よく見るとトロール2人はボロボロの布切れのような服装には到底不似合いな豪華そうな装飾品を多数身に着けていて、カネリアはその装飾品から気味の悪い〔何か〕を感じ取っていてさらに不安気に見ていたその時1人のトロールがカネリアを指差しながら、

 「あっ! こいつ、こいつだよあんちゃん! あの変な人間が言ってたあのガキを捕まえたら、あいつはもっとノームのバカ共を倒す道具をくれるって言ってたよ、早速捕まえようぜあんちゃん!」

 とさらに大声で言うともう1人のトロールも大声で、

 「そうだな、ガスパール! そうしよう! 後のやつは食っちまっても良いって言ってたしな!」

 そう言うと恐怖で動く事ができないカネリアに向かい大きな手を伸ばすとその手にケイケナの矢が刺さり、トロールは大きな声で怒りと驚きの声を上げるとカネリアは身体を一度震わせ一目散に大きく太い木の裏に隠れフードの中にはフルトとキルトがカネリアを守るように入っていて、残りの4人はトロールと戦うために弓や剣、ハンマーを構え最初にケイケナが弓矢で攻撃すると、それが合図のようにドナーがハンマーを叩きつけようとしたのだが跳ね返され、襲ってきた手を地を蹴ってかわすと次はユレイヤが飛んだ勢いで剣で斬りつけようとしたのだが空中で何か透明な壁に阻まれ届かず、ケイケナはずっと矢を放ち3人を援護しながらトロールに近付いていた。


 その瞬間とある〔場所〕である人物が鏡に映る7人の様子を覗き見ていて、その鏡には黒い煙のようなものがまとわりつき辺りを更に薄暗くしていて、鏡をもつユレイヤ・ファームを誘拐した〔男〕はほくそ笑んだ後鏡をユレイヤ・ファームに向けながら、

 「もうすぐ……君の妹が己の強力な〔魔力〕に目覚める!」

 と言ってから小さく笑うと驚きと恐怖の顔で固まるユレイヤに気付くと、

 「私は知っているんだ、君より妹の方が〔魔力〕が高い事を……まだ完全に目覚めてはいないという事もね……だから私が目覚めさせてあげるんだよ!」

 そう言いながら大きく不気味な声で笑うとユレイヤ・ファームがぞっとした顔で〔男〕を見上げている事に気付き、

 「大丈夫だ、もうすぐ君は妹に会える……心配することはない」

 と言ってまた残忍な笑みを見せた。


 場所は戻りトロールと戦っていた4人は1時間も経つと疲れが見えてきたのか皆息を切らせていて、それでも戦おうとするドナーは不意をつかれてしまいトロールの手で殴られ木に叩き付けられると、失神してしまって倒れているドナーを守るため残りの三人が彼の前で戦っていたのだが、かなりの疲労で集中力がなくなってきたユレイヤ・ケンナーはトロールに隙をつかれ強く殴られその場で倒れ動かなり、ラウスはユレイヤ・ケンナーを助けようと弓で攻撃しながら近付くがどの矢も届かず舌打ちをして、弓を撃つことに集中し過ぎたのか1人減っている事に気づかずに後ろからの攻撃に遅れ、彼もトロールの持っていた棍棒で殴られ失神してしまい1人残ったケイケナは、ずっとカネリアが隠れる木の前で矢を放っていたのだがそれもなくなってしまい、その隙にトロールは驚くべき速さで走ってきてケイケナの首を掴み上げ今までの一連をずっと不安気に木の陰から見ていたカネリアは、震えて身体が熱くなっていくのを感じていたのだがケイケナが首を締め付けられる光景を見た途端、カネリアはその熱を解き放つかのように、

 「やめてーーー!」

 そう叫ぶように言うと突然風が吹きどこからか雲が立ち込めたと思うと雷雲になり、稲妻が走って雷がトロール2人に直撃すると黒焦げになって倒れ、その後の雨で気を失っていた3人は呻きながら目を覚まし倒れているトロール達を見て驚いていると、大きな木の前で涙を流しながら立っているカネリアに気付き空が晴れてきて陽の光が指し、その時カネリアが淡い光を放っていてそれは強大な魔力を放った者の証なので、6人がカネリアを見てから黒焦げなったトロールを見ているとそれに気付いたカネリアはとても驚いた顔で、

 「わ、私……」

 泣きそうな顔で言って助けを求めるようにフルトに手を差し出すが、彼は怯えたように後ろに下がったので傷付いたような顔になったカネリアに気まずい様子で顔を背け彼女から離れると、さらに傷付いた顔をしたカネリアは下を向くがすぐに顔を上げ元気な顔と声を作り、

 「さっきの雷、すごい威力だったね! あの大きなトロールも一瞬で黒焦げだもの! 他の場所も焦げてないか見て来る!」

 震える声でそう言って森へ入ろうとするカネリアを止めようと、腕を引っ張るケイケナの手を振り払いカネリアは今にも泣きそうな顔で、

 「触らないで!!」

 と言って固まるケイケナを背にカネリアは走り去ってしまってしまい、ドナーはすぐさまカネリアの名を呼び追いかけたが先に走っていったカネリアを見失い、森の入り口で待つ5人に首を横に振り見失った事を伝えていて、森の中を涙を流しながら無我夢中で走っていたカネリアはふと我に返り仲間と離れた事に気付くと、不安気に辺りを見回していたのだが突然近くの茂みが動いて驚いたカネリアはさっと弓を構えていると、茂みの中からフードの男達が現れ更に驚くカネリアをよそに男達は彼女を取り囲み、素早い動作で口元に布を当てられてカネリアは気を失いそれを見計らった男達は大きな袋に彼女を入れその場から走り去ってしまった。

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