エピローグ その後は……
〖あかりの森〗を無事に抜けた7人はまずフェアリー族の村へ帰るため、川を2本越えてしばらく歩いて行くと〖くらやみの森〗に辿り着きユレイヤとカネリアを真ん中にして入ると、凶暴な獣は1匹も現れずに無事フェアリー族の村へと帰りフルトとキルトは安心したのか、目に涙を浮かべながら村の者達と手を取り合いフルトが旅の話をしているとフェアリー族の長老が慌てて駆けつけ、2人を見るなりその場で泣き崩れ座り込んでしまっていてカネリア達はフェアリー族の村でも3日間滞在してその間は宴会が開かれ滞在期間最後の朝カネリア、ユレイヤ、ケイケナ、ドナー、スナスが森を出るためマントを羽織り支度をするとキルトが行かないでと泣きながらカネリアのマントの裾を握り締め離さず、それをフルトが必死で説得すると昼頃にやっと泣き止みカネリアはキルトとまた会う約束をして人差し指の握手をし、長老がフルトを入れたフェアリー族の兵士を10人選び彼らに囲まれながら5人は森へ入り、日が暮れる数時間前には出口を出るとフルトとも握手を交わし5人は〖しんせいの森〗へ向かうべく兵士達と別れ歩き出し、カネリア達はその後2回程野宿をしてさらに川を2本渡ると〖ムーノラの街〗へ辿り着き、そこでは相変わらずの混雑にもみくちゃにされながらも宿屋に入り、そこで1泊した後早朝に街を出て〖しんせいの森〗へ入り夕方頃ウサギを狩って野宿の支度をしているドナーと離れてケイケナが少し離れた崖の下を見ると、煙突の煙が幾つも見えたので急いで戻り伝えるのだがドナーはこの場で休むと言い張り、翌朝目を覚ますと朝食を素早く取り支度をして再び進み、数時間ほど歩き続けると数メートル先に木でできた門に気付き5人はやっとファーム族の村に辿り着いた事に安堵と喜びをかみしめながら、カネリアは走って門に近づいて開門を要求すると驚いた門番は慌てて門を開け、彼らが中へ入ると騒ぎを聞きつけた村人達が続々と集まって来てカネリア達を囲みいつの間に外に出ていたのか、それになぜドワーフ族と一緒なのかと質問攻めにされたので説明に困る5人がもみくちゃにされていると遠くから、
「カネリア! ユレイヤ!」
と大声で名前を呼ばれ2人がそちらを向くと目に映ったのは父と母が嬉しそうに涙を浮べて走って来ていたので、カネリアとユレイヤは人垣を分け走り寄ると4人は抱きしめ合い再会の喜びをかみしめていると、村の者達も目に涙を浮かべながら見守っていてそれを見ていたドナーとスナスは互いに微笑みながら、
「家族はいいですね、兄さんもサリタさんとケント君に会いたくなったんじゃないですか?」
と言われたのでドナーは遠くを見ながら、
「そうだな、今とても会いたくなったよ」
そう言いい微笑んだ後スナスを見返しながら、
「そういうお前は結婚しないのか?」
と訪ね返されたスナスも遠くを眺め、
「そうですね、良い方が現れる事を願います」
と言って2人が微笑み会っているとカネリアが走ってきて、
「ドナーさん、スナスさん、しばらく村で休んで行くんですよね? 父さんと母さんがぜひお礼がしたいって言ってるんです、だから私の屋敷に泊まってください‼」
そう元気に言われ遠慮する間もなくカネリアに手を引かれ彼女達の屋敷に行くと、少し休んでから宴会が開かれ皆楽しげに歌ったり踊ったりと大騒ぎになり宴会は夜中近くまで開かれ、ケイケナは1人窓の近くで深呼吸を何度もしていてしばらくすると意を決したのか真剣な顔でカネリアに近付き、普段と違うケイケナの顔に周りの者達は踊ることを止め見守っていると、彼はカネリアの前に膝まずくように座ると赤面しながらスターチスとカーネーションの花束をカネリアに渡して、
「カ、カネリア……俺と結婚してくれないか? 一生大事にする!」
と大声で言うと突然の事にカネリアは驚いたがすぐに顔を赤らめ涙目で、
「はい……! よろしくお願いします!」
そう言いながら花束を受け取るとケイケナは嬉しさの余り泣きながら彼女を抱き締め何度も名前を呼んでいて、その様子をドナーは微笑みながら見ていたのだがふとユレイヤが1人で部屋を出て外に行くのが見えたのでバルコニーで夜風に当たっている彼に近づき、
「大丈夫かい? 疲れているみたいだけど?」
と優しく尋ねるとユレイヤは笑顔で、
「すみません、気を遣わせてしまって……」
そう謝るとドナーは片手を上げて微笑むと、
「いや、私はいいんだよ」
と言ってから2人は無言で星空を見上げていたのだがドナーは静かな口調で、
「カネリアちゃん、幸せになるといいね」
そう言ってからユレイヤを見やると、
「寂しいかい?」
と尋ねられた彼は目を見開いてドナーを見返してからまた星空を見上げると、
「そうですね……13年間一緒にいましたから、でも……幸せになって欲しいです」
そう言っているとまだ顔が赤いカネリアがバルコニーに入って来て、
「2人とも何の話をしていたの?」
と尋ねるがユレイヤは悪戯っぽく微笑むと、
「秘密! ほら、ケイケナが探してるよ行ってあげて」
そう言うとカネリアは心から幸せそうな笑みを浮かべて部屋へと戻りケイケナと共に村人達と話合っていて、それをユレイヤは優しい笑みを浮かべてドナーと共に見つめていた。
そしてカネリア達が戻ってから2日後ドナーとスナスは〖ドワーフの穴〗へ戻るためフードを被って門の前にいて、カネリアはユレイヤとケイケナや家族と共に2人の前に立ち目に涙を浮かべながら、
「気をつけて帰ってくださいね! また、遊びにも来てください、待っていますから」
とカネリアが言うと彼女の両親も名残惜しそうに、
「道中お怪我の無いように、大狼にも気をつけて下さい」
そう母が言うと食料が沢山入った袋を手渡しそれを受け取ったドナーとスナスも頭を下げ礼を言うと、
「それでは、また」
と言って2人が門をくぐるようすをカネリアとケイケナは手を繋ぎながら門が閉まるまで見つめていた。
それから7年が経ち成人したカネリアとケイケナは結婚式を挙げ晴れて夫婦となり、祝いの席には村人だけではなく共に旅をした仲間も呼び盛大に開かれ、そして2年後にはユレイヤは父から村長の職を継ぎ忙しくしている中ドナーから手紙が届きスナスが結婚すると知りカネリア夫妻に伝えると、カネリアは水を入れて手に持っていたやかんを落としそうになり慌てて持ち直した後、コンロに置いてその場を歩き周って喜んでいると身ごもっていた彼女をケイケナは心配になり後ろをついているいていて、20日後に開かれたスナスの結婚式にカネリアとケイケナは出られなかったが、スナスは妻子と共に頻繁に遊びに来てくれていて、さらにそれから5年後にはウッドナが〖ラーナスの街〗の街長に復帰し毎日忙しくしていると、カネリアは椅子に座り子供を膝に乗せて冒険譚を語った後ウッドナからの手紙を読んでいた。
―完―