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カネリア冒険記  作者: 桜本 結芽
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第9章 カネリアを探して

 カネリア達の誘拐を企てた人物が判明した7人は急いでカネリアとユレイヤを助けるため、出来るだけ早く走り途中何度か休憩するだけで、《しゅうちの川》と《さとりの川》はラウスの魔法で渡りさらに走り続け3日後の朝方には〈ラーナスの街〉へたどり着き、7人が街に入ると人々はどこか疲れた表情をしていて中には不安気な顔で少し干からびた果物を売っている者もいたので、7人は驚いて声をなくしていたのだがスナスが通りすがりの街人を呼び止めると、

 「すみません、旅の者ですがなぜこの街の方達はこんなにも活気が無いのですか?」

 そう尋ねるとその人は疲れた様子で、

 「なぜって……街長が19年ほど前から税を大幅に上げてさらには不気味な連中に街人をどこかへ連れて行かせ誰1人帰って来ないから、いつ自分の順番が来るのか気が気じゃないからみんな活気が薄れていったんだよ……」

 と言っていると街の人達が騒ぎ始め驚いて周りを見渡すと、人々がとある一点を見ていたのでその目線の先を見ると、そこにはフードの男達が3人ほどこちらに向かって来ていて驚いた7人が声を立てずにいるとフードの男達は彼らが見えていないのか、彼らの前を通り過ぎ先ほど話しをしていた男性の腕を力強く引っ張り連れて行こうとするので、

 「い、嫌だ!! 助けてくれぇ!!」

 そう叫びながら振りほどこうと抵抗する男性の頭をフードの男は強く殴り気を失わせると、担ぎ上げ立ち去ろうとするのでフードの男達の1人の肩をケイケナは掴み思い切り殴りつけると、ユレイヤ・ケンナーは嬉しそうな顔をして微笑んでいたのだがそれと対照にドナーはやってしまったという顔で手のひらを顔に当てていて、フルトとキルトはラウスのフードの中でどうすればいいのか分からずオロオロとしておりケイケナはさらに殴ろうとしたのだがスナスが急いで、

 「ケイケナ君、今は止めておいた方が良い、あまり目立たない様にしないと」

 と言って止めるとフードの男達は無言で立ち上がり街の人を連れて行かずに立ち去ってしまったのだがそれを息を呑んで見守っていた街人達は、先程より騒ぎたてていて1人の腰が曲がり杖をついた老婆が歩み寄って来ると怒っている様子で、

 「お主らの犯した過ちのせいで街長の怒りを買われてしまわれたらどうするおつもりじゃ!? すぐにこの街から去っていく者達が出過ぎた真似をするでない!!」

 そう言うと周りの街人達も我に返ったように、

 「そ、そうだそうだ! さっさと出て行け!」

 と罵声が上がったのでケイケナは怒りの表情で言い返そうとしたのだが、ドナーに止められ思いとどまり騒動から離れた7人は急いで街長の屋敷へ向かうと、門の前には2人の雇われ見張り兵がいてドナーが街長に会わせてくれと頼むが通されず何分か口論を続けたのだが、とうとう彼も諦め門を離れ近くの食堂へ行きこれからどうするべきか話し合っているとケイケナが勢い込みながら、

 「やっぱりあの見張り兵をぶっ飛ばそう! あいつらがいなければ中に入れるのに!!」

 そう言っていたのだが他の6人の表情は暗く考え込んでいると後ろから突然、

 「す、すみません……」

 と遠慮がちな若い女性の声がして7人は驚いて振り向くとそこには20代ほどの可憐な女性が立っていたのだが彼女の右頬は赤く腫れ目には涙を浮かべていて、しばらく驚いたままの7人だったが先に我に返ったドナーが女性に優しく微笑みながら、

 「我々に何かご用ですかな?」

 と尋ねると女性は無言で顔を伏せていたのだが何かを覚悟したような顔を上げると、

 「あ、あの……あなたはドナー・オーさんですよね?」

 そう遠慮がちだが確信を込めた声で名前を言われたドナーは驚きの表情で、

 「い、いかにも私がドナー・オーだが、お嬢さんはどなたかな?」

 と訪ね返すが女性は気恥ずかしげにざわついている店を見渡して、

 「ここでは名乗れません、外へ出ましょう」

 そう言って女性は外へ出て行き訳が分からないが7人もついて行こうとすると、ケイケナは酒を飲んでいた1人の街人に腕を引かれ彼に、

 「奴には気を付けろよ、命が惜しければ……な」

 と意味深な言葉を言われ再度聞き返そうとしたのだが、すでに向き直り酒を飲んでいて仲間にも呼ばれたのでケイケナは店を出て7人はしばらく歩くと小さな森が現れ女性はその中に入って少しした場所で、

 「このような場所にお連れして申し訳ありません、私はこの街の方々には嫌われていますから」

 そう言って顔を伏せるがすぐに上げ、

 「私の名前はファーナ・ノルディ、街長の娘です」

 始め7人は最後の言葉を聞き逃しそうになったのだが、彼女の言葉を復唱したあと驚いた表情でファーナを見ると彼女はまた気恥ずかしげに顔を伏せるのだがドナーはある事を疑問に思い、

 「あなたはなぜ我々の元へ来たのですか? 父君に伝えるため……ですか?」

 少し険しい顔つきで言うとファーナは泣きそうな顔で顔を伏せたがすぐに、

 「私は……私は父を助けて欲しいのです!! すでに私の力では父を止める事が出来なくなってしまっているので……」

 目に涙を浮かべながら頼み込むファーナを見て何かを考えだしたドナーは、しばらく黙っていたがふと決意したように彼女に向き直ると、

 「あなたのお話は分かりましたが、なぜ私の名を知っているのですか?」

 と尋ねると気まずい顔をして小さな声で、

 「ど、ドナーさんのお名前は、母から聞きました……」

 そう言われさらに疑問に思ったドナーは首を傾げて、

 「たしか、ファーナさんの母上は20年前に亡くなられたはずです、どうやって聞いたのですか?」

 と尋ねるとファーナはしばらく黙っていたのだがしばらくして何かを決意し、

 「わ、私は亡くなった人と話す事が出来るんです、ですが母の魂はすでにもうここにはいません、それでも闇に取り込まれた父が心配なのか、私の夢に出て来てはあなた達がどこにいるのかを教えてくれていました、母はこの街の人達や父を助けて欲しいと言っているんです、ですからお願いします!!」

 そう深々と頭を下げて言うのでドナー達は始め困惑したような表情でファーナを見つめていたのだが、後ろからスナスが前へ出て来て彼女に、

 「助けるというのは具体的にどういう事でしょう?」

 と言うとファーナは真剣な表情で、

 「この先に見張り兵が1人も居ない出入口があって、そこからカネリアさん達がいる地下室まで行けます、ですが早くしないとあの子達の命が危ないです!」

 そう慌てた様子で言うと7人も決意して頷きファーナに頼むと、

 「こちらです!」

 と言って小さな森の奥の方へ行くとそこに蔓で覆われた屋敷の壁があり、その隙間から木で出来た扉が現れファーナはその扉を魔法で開けると、中は暗い下り坂になっていて先へと続いていていて彼女は壁にある松明に火をつけると扉を閉め魔法で封をしてから、

「付いてきて下さい」

 そう言って前を歩いて行き暗がりのなか松明片手に中に進む事数分後、遠くから誰かの声が聞こえ耳の良いラウスが澄ましていると慌てた様子で、

「すでに呪文を唱えています! 早く行かないと!!」

 と言われ驚いたケイケナ達は急いで走って行くと突き当りに岩があり、ファーナは短く呪文を唱えるとその岩を爆音を上げて勢いよく壊した。

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