幕間 王と王弟
会話文のみ。
「ファウナの時に横流しは駄目だと怒ったのに、結局兄上は『私への貢物』を横取りなさったんですよね」
「争いの火種を先んじて回収してあげたんでしょ。感謝してくれてもいいと思うけど」
「争いになんてなりませんよ。ファウナはそれほど狭量じゃありません」
「ファウナの問題じゃなくてお前だよ。側妃を望んでいないにしても迎えたならそれなりに気遣うべきところを、貢物なら放置してもいいかとか思っただろ、絶対」
「……兄上ってそういうところ真面目ですよね。適当にあしらえないから面倒になって全部拒否するんだ」
「うわー、お前には言われたくない」
「兄上みたいに問題を棚上げしたわけじゃないですからね、私は。ファウナだけで事足りる状況でありながら他の人間を迎えるとしたら、それなりの人材でないと無意味じゃないですか」
「あはは、間違いなく同じ血が流れてる」
「はい?」
「俺も同じこと考えたからリーシアに言ったんだよねぇ。リーシアが必要だと思うなら必要なんだろうし」
「……王と王弟ではいろいろ違う気もしますが、なんというか義姉上に同情したくなりますね」
「えー?」
「どうせ兄上のことですから全部義姉上に丸投げでしょう。私はファウナを矢面に立たせたりはしませんでしたよ」
「でもさ、無理難題押し付けてもがんばって応えようとしてくれてるの見ると嬉しくならない?」
「……うわー、同じ血が流れているとは思いたくない。というか無理難題を押し付けている自覚があったんですね」
「そりゃ出来ない子にやれとは言わないよ」
「兄上に評価されるのがいいことなのかどうか……」
「大体兄上にお子が出来ないとうちも作れないんですよ!」
「いやほんとお前の自制心には感服するけども。ゆるぎない優先順位だねぇ」
「分かっていながら一人も妃を娶らなかったとかどれだけ鬼畜!」
「一人許すとずるずる押し付けられそうでさ」
「子どもが出来ないとファウナが理不尽に責められるんですよ。挙句には多産系の側妃を娶れとか言い出す者もいますし」
「お前たちには悪いと思ってるんだけどね。お前たちがいるから俺は好きにさせてもらえてきたわけだし。たださぁ、これも俺の所為なんだけど、今のリーシアに子どもの話できると思う?」
「……先に言うべきでしたね」
「どう考えても側妃の問題を片付けるまでそんな気にならなさそうだよねぇ」
「でしょうね」
「よし、急いで片付けてもらおう」
「(あー……手助けはしないんだ……)なんだか義姉上を追い詰めてしまった気がする」
けっこう似た者同士な兄弟です。でも弟くんはお兄ちゃんより自分の方がましだと思ってるし、その認識はたぶん合ってる。お兄ちゃんの評価と負担は比例します。
次話で一区切りの予定。