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ちっぽけな僕らは(1)

 高校二年の大貴と大和。in修学旅行。

 ごろごろしてたときにぽんと浮かんだ話を勢いで書きました。

 高校二年の冬。それはもう寒い時期に、大貴たちの学校の修学旅行はあった。

 冬なんだから暖かい方へ行けばいいものを、行き先は雪国で、メインイベントはもちろんスキーだ。

 三泊四日の二日間はスキーで埋まっている。これを計画した先生たちは手を抜いたんじゃないかと生徒間で噂が広まったこともあった。

 まあスキーなんて滅多にできることではないので誰もが楽しんだのだが、一日目のスキー講習が終わってホテルに戻る頃には皆ヘトヘトになっていた。


 夕食を取り終えた後の自由時間、各自ホテルの部屋で寛いでいたとき――寒いのでホテルを抜け出そうとする生徒は少なかった――、大貴と大和の部屋にクラスの男子生徒が訪れた。


「よっ栗原。南もいるなー」


 にこにこしながらそのクラスメイト・田神たがみは、ドアを開けた大貴に挨拶し、そしてベッドに横たわっている大和に手を挙げた。


「これからとある勇士が持ってきたゲームをするんだが、お前らも来いよ」


「とある勇士って、吉川だろ。バスん中でずっと言ってたじゃん」


 大貴が呆れたように言うと、田神はニヤリと笑った。


「しかもWiiなんだぜ」


「……もしかしてコントローラも四つ持ってきてんの?」


「もちろん。ソフトも色々あるんだ。な、やろう」


「えー」


 それ先生にバレたらやばいだろ。

 そう言って面倒そうにため息を吐いたら、突然後ろから肩を組まれ大貴は飛び上がった。

 振り向くと部屋のカードキーを持った大和が立っていた。


「いいよ、二人とも参加する」


「さすが南、話のわかるやつ。みんなおれの部屋に集まってんだ」


 田神は右手の親指を立てウインクする。

 大貴は慌てて大和の腕から逃れようとしたが、余計に絞められた。


「おいこら、離せ。誰が参加するって――」


「残念ながらお前に拒否権はないんだな。それにゲーム持ち込みを知った時点で共犯者だし」


 大和が愉快そうに笑って歩き始め、大貴は引きずられるように連れ出された。そして大貴たちの部屋から右に三つ隣の部屋に無理やり押し込まれた。

 そこにはクラスの男子共が四人いて、彼らは既に部屋のテレビでゲームを始めていた。


「おーい、頭いいやつら連れてきたから先生にバレても安心だぞー」


 やけに明るい声で田神が言い、大貴は盛大にため息を吐いた。何が安心なのか小一時間ほど問い質したい気分だ。

 やれやれと思いながら大和たちの後に続き、ベッドの端に腰を下ろしてテレビに目を向けた。

 皆が今プレイしているのは、赤いシャツに青のオーバーオールを着たおじさんの有名なゲームだ。大貴も遊んだことはある。

 コントローラを操作する四人はわいわい騒ぎ、見物人は腹を抱えて笑っていた。あまり大声を出すと外に聞こえるのではと思ったが、もうそんなの知ったこっちゃない。バレてみんな怒られてしまえばいい。

 大貴は投げやりに考え、ベッドに仰向けになってそのまま目を閉じた。体力には自信があったが、やはり慣れないスキーをしたせいか疲れていた。

 ふうと息を吐いたとき不意にベッドが揺れ、瞼を上げると田神が何やらいそいそとこちらに近寄ってきていた。


「なあなあ栗原ってさ」


「なに」


 顔を覗き込んでくる田神を見上げ、大貴は眉をひそめた。


「篠原と付き合ってんの?」


 にこにこしながら尋ねられたその問いに、大貴は一瞬息を詰まらせた。すると話を聞いていた他の生徒が急に振り向き声を上げる。


「あーそれ俺も気になってた」


「だろ? いつも一緒にいるじゃん、お前らってさ。どうなの?」


 田神が更に詰め寄ってきたため、大貴はあからさまに鬱陶しそうな表情を浮かべた。


「……付き合ってない」


「えーホントに? あんな仲良さそうにしてて」


「家族ぐるみで付き合いがあるからだよ。ただの幼馴染み。付き合ってはいない」


 再度ぶっきらぼうに否定した大貴は、寝返りを打ってテレビへと目をやり、そしてぎょっとした。ゲームをしていた他の生徒も全員、興味津々にこちらを見ている。

 思わず隠れたくなるような状況だ。

 ふと大和と視線が合い、彼は何も言わずににやにやと笑う。それを見て大貴が僅かにイラッとしたとき、また田神が口を開いた。


「へー、じゃあおれ篠原狙ってみよっかな」


「……はあ?」


 突然のことに大貴は頓狂な声を発した。何でいきなりそうなる――。


「だってさー篠原かわいいじゃん。おれ結構好きなんだよね」


「あーわかるかも。なんかこう、守ってあげたくなる感じ?」


「そうそう、それにおれ髪型がボブの子に弱くてさ」


 菜月の話で盛り上がる彼らを大貴は唖然としながら見ていた。

 クラスの男子たちに、菜月がそのように思われていたとは、全く知らなかった。

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