その21
「君はやっぱり面白い男だねえ」
如何にも楽しそうにリオンは笑った。
どういう事かを尋ねようとした時、
「……只今~」
と、良く通る澄んだ声の筈なのに、何故か疲れ切った感情がありありと溢れだしている帰寮の挨拶が耳に入ってきた。
その所為だろうか、筆舌し難い淀んだ気配が玄関の方から漂ってきていた。
「おや、アールマティ女史のお帰りか。……それにしては、アンヌちゃんの気配を感じないのはこれ如何に?」
背後の気配を察知したリオンは困惑する。「……行ってみれば分かるか」
リオンは素早く立ち上がり、「お帰りなさい」と、声を掛けながら玄関に歩いて行った。
リオンに続き、レクサールも立ち上がり、何となく近寄りがたい気配を発している玄関へと向かう。
「御免、アンヌさんを捕まえられなかったよ……」
精も根も尽き果てた風情でアールマティはぐったりとしながらも、意地で居住まいは崩さずに息を整えていた。
「お疲れ様。とりあえず休んでから靴を履き替えれば良い。……もう、出かけないよな?」
何か思い当たる事があったのか、リオンは確認を取る。
「……委員会を締めてこないと……」
息を整えながら、アールマティは律儀にもリオンに答えた。
慰めの言葉を掛けようかリオンが逡巡している時、
「その必要は無いぞ」
と、暁生が玄関に入ってきた。
「おや、お早いお戻りで」
些か意外そうな口調でリオンは返事をした。




