その20
「俺が云うのも何だが、人間の欲望は底なしだと思うんだが?」
レクサールはリオンに一般論を言ってみた。
「魔族も、な。まあ、そこら辺の変な考えをする暇を与えないようにするのも経営側の企業努力だがな。……うちの場合はそこら辺の順序が逆なんだがな」
声を潜め、リオンは肩を竦めた。
「どういう事だ?」
リオンの態度に興味を引かれたのか、レクサールは身を乗り出して訊いた。
「何、少数精鋭を作り上げると云う事は、裸足で逃げ出したくなるような厳しい訓練があってこそ、という事だよ。何一つ良い事無く、厳しいだけなら誰だって逃げ出すが、想像を絶する好待遇があったら話は別だって事だな。飴と鞭だよ」
至極当然の帰結とばかりに、リオンはつまらなそうに言ってのけた。
聞いていたレクサールは成程と思った。
最初から何も考えずに海の物とも山の物ともつかない有象無象のために出資する間抜けはいない。
だが、最初から厳しく鍛え上げる予定だったら、途中で逃げ出させないためにも何らかの利点がなければ無理であろう。その上、鍛え上げた端から逃げ出されたとしたらそれも大損となる。何としても、組織に対する忠誠心をすり込んでおく必要もある。逸材に対する厚遇は間違いなく先々を睨んでのことだろう。
ただし、レクサールにとっては実のところを言えば、然程重要な問題ではなかった。
「ふむ……何も知らない者からすれば、多少不穏当な発言だった気もするが、他に行き場のない俺は聞かなかったことにしよう。どちらにしろ、強くなれるならそこら辺はどうでも良い」
やや投げやりな風情でレクサールは言い放つ。
そう、レクサールにとってはそれこそが目的であり、その過程が如何なる厳しいものであろうとも関係が無かった。
むしろ、それで強くなれるのであれば、それこそ望んでいるモノでもある。




