その8
「魔族に対する評価じゃないわよねえ。サン・シールの家は腹芸や策謀をきっちりやれたら魔王を目指せる器なんだけど、この調子だとあの子の代も無理そうよねえ」
肩を竦めながら、イシュタルは短評を下す。
「ま、悪い方じゃ無いんですけど、相性が宜しくないのは確かでして。そんなワケでお願いできますかね、リサ姉?」
リオンは敢えて同級生の評価をせず、何事もなかったかの様にリサへと頼み込んだ。
「お願いされても良いけど、誰なの?」
「えっと、アンヌ・ネイさんですな。人類種の女性で有りながら、唯一実行隊に入っている子なんですけど」
リオンの説明を聞き、
「ああ、あの子。それはリオンちゃんが声掛けたら、サン・シールちゃん激昂するわねえ」
と、リサはしみじみと納得した。
「どういうことなの?」
全く以て話が見えないイシュタルは、困惑した表情で二人に尋ねた。
「風紀委員の実行隊って、私の眷属の子が多いじゃない。だからサン・シールちゃんってある意味で浮いているんだけど、アールマティちゃんの副官として実行隊を掌握している上、かなり人望あるのよね。ただ、魔族と神族、それも天神系でしょう? お互いに遠慮するところがあって、踏み込んだ事になるとサン・シールちゃん、何でもかんでも自分でやっちゃうのよね。それを戦乙女たちが強引に手伝うわけにも行かなくて少し孤立していたんだけど、アンヌちゃんは人間だから、そんなのお構いなしに手伝っちゃうのよ。そんな関係が長く続いたせいか、凄く心開いているみたいでね。善意であろうと、リオンちゃんとかヴァンちゃん辺りが声かけに来たら凄く警戒すると思うわ」
イシュタルに対し、リサは淡々と状況を説明して見せた。