その5
「それじゃ楽しみの一つが無くなるじゃないか。俺は楽しい学園生活を送りたいんだ」
真顔でリオンは力説する。
「ええ、先輩は楽しいでしょうね。周りは大変ですが」
冷え切った口調で闇飛は現実を指摘した。
言い合っている二人を後目に、
「図書館棟、大きいな。まだ終わりが見えない」
と、中半現実逃避気味にレクサールは感心していた。
「まあ、校舎より大きいからねえ。それに時間帯によっては、敷地内ですらスクールバスが走っている。寮から校舎まで徒歩通学する気なら、玄関から早足で二十分は掛かるからちゃんと計算していた方が良いぞ。あと、寮前のバス停の時刻表は常に把握しておいた方が良い。園内の自転車通学は禁止されているから、ぎりぎりの時間を逃すと遅刻確定だからな」
レクサールの独り言じみた感想に対して即座にリオンは答えた。
「瞬間移動系の特技は禁止されてはいませんが、使用許可と場所の徹底が厳しく定められています。遅刻回避をしようとして緊急利用するのは風紀委員にしょっぴかれる可能性が高いので御注意を」
リオンの発言を受け、闇飛もまた、レクサールに校則の解説をした。
「成程。でも、俺は然う云う便利な特技は持ってないからなあ。遅刻しないように気を付けるしかないな」
肩を竦めて、レクサールは終わりの見えない図書館棟を眺める。
「そんな便利な能力を持っている方が少ないから気にしてはいけない。まあ、俺と闇飛君は希少側だから何とも云えないが」
リオンは肩を竦めてみせた。




