その3
「……ちょっと待て。一体、どれだけ価値のあるモノが収められているんだ?」
レクサールは恐る恐る問い返す。「リオン、君のことだ。その犠牲の中に自分も含まれていることを理解した上での発言だろう?」
「うーん、総額で云えば一国が傾くレベル、蔵書の危険性で云えば世界が揺らぐレベル? 何せ、天界と魔界でも有数の禁書がゴロゴロしているからなあ。まあ、それに手が届くかはまた別の話だけど。盗みに入ったとして、結界を突破出来るかはその盗人の資質に寄るからねえ。皇帝か主神級じゃないとこの中で自在に歩き回れないし」
こめかみに右の人差し指を当てながら、リオンは虚空を見詰めた。
「どんなレベルの結界が張られているんだよ……」
その発言を聞き、レクサールは絶句した。
リオンを始めとした生きている国際問題とも言える天界魔界の名家の子女を犠牲にしてまで守らなければならない書物を所有していることも然りながら、それらの書物を自在に手にする為には皇帝なり主神なりでもしない限り不可能とまで言い切る結界が張られている図書館の存在を考えれば、彼の反応は当然と言えた。
それをなんと言うことも無しと話しているリオンの方がむしろ異常である。
「それ相応さ。自分で体験してみれば、分かる事だよ」
リオンはにやりと笑う。「時間がある時にでも云ってくれれば、案内しよう」
「興味深いから時間ができたらすぐにでも頼みたいね。……問題は、その時間が作れるか、って話だけど」
存在自体の異常さへの戦きは兎も角、レクサールもこの種の学校に進路を決めただけの器である。それ程の施設を利用できるという好奇心が勝った。
「まあ、転入生だから生活に慣れる方が先だろうな。俺も去年の今頃ぐらいまでは学園生活に慣れるので一杯一杯だったしな」
何かを思い出したのか、リオンは一つ二つ頷いて見せた。




