その1
正面玄関からぐるりと校舎を外回りに伝い、生徒昇降口から屋根伝いに辿り着ける大きな建物の前に来た。
「ここが、図書館棟だな。うちの学園で一番金目の物がある場所だ」
リオンは建物を指し示して、端的に説明する。
「金目の物?」
レクサールが考える図書館像とは懸け離れた説明を受け、首を捻った。
「少なくとも、姉さんがヴァシュタールの集めてきた禁書級の魔導書から、ありとあらゆる手段をもって収集した天界の書物やら、古の昔に見返りを期待した人類種が献上してきた今では失われた伝説の現世の本等を寄贈している。リサ姉も和泉姉も似た様な事をやっているから、蔵書量とその質で云えば、全世界トップクラスだろうな。うちの大学付属の図書館ですら、ここには及ばない」
何てことはないとばかりの口調で、リオンは淡々と理由を語った。
「何それ、怖い」
自分が知っている図書館と懸け離れた存在である事を知り、レクサールは尻込みした。
「一貫校とは云え、高等部卒業後にそのまま軍に行く者や、職に就く者もいないわけじゃない。どの道に進むか決める為にも高等部の時点で知っておくべき事は数多ある。むしろ、特化した専門知識を手に入れる為に大学にまで行った連中が、自分が何を知りたいかなど今更だからな。その為に、自分に必要な書物を手に取る必要性が最も高い高等部に集めたわけだ。ま、目当ての本が他で見つからなくてここに見に来る卒業生も多いけどな」
リオンはかんらからと笑い飛ばす。
「それ、本末転倒とか云いませんかね?」
レクサールは首を捻る。「専門知識が一番必要とする時期に手元に無いってのは?」
「さてな。実際、高等部時代に自分が最も必要とする知識を手に入れた卒業生達が活躍しているのを見てみれば、考え方自体は間違ってはいないと思うぞ。まあ、自分に見合った書物と出会えるかは運次第だがな」
肩を竦めてリオンは苦笑した。




