その7
「実はですね、レクサール君には幼馴染みがいまして、都合が良い事に、我が校の生徒なんですよ」
楽しげにリオンはリサに答える。
「あら、そうなの? だったら、最初から連れてきてくれれば話は早かったのに」
イシュタルは弟にしては妙に段取りが悪い事を訝しみながら、溜息を付いた。
「……残念ながら、彼女は風紀委員会に入っていましてね」
そんな怖ず怖ずとしたリオンの台詞を聞いた途端、イシュタルは人目を気にせず腹を抱えて笑いだした。
「あらあらまあまあ」
流石にリサはイシュタル程露骨な態度は取らなかったが、それでも彼女にしては珍しくニヤニヤと笑う。「リオンちゃん、相変わらず風紀委員会は鬼門なのね」
「いえ、委員長のアールマティ女史とは上手くいっているんですよ? サン・シールちゃんがねえ、なんでか俺を敵視していましてねえ。彼女たちに話を通さずに動くわけにもいきませんしねえ」
ほとほと困った表情を浮かべ、お手上げとばかりに肩を竦めた。
「サン・シールちゃんは生真面目だから、リオンちゃんみたいな子は悪巫山戯している様にしか見えないんでしょうねえ」
リサは大きく溜息を付いた。
「サン・シール……ああ、ヴェパールね。家名の方で呼ぶから誰かと思ったわよ」
イシュタルは納得する。「なんで二人とも家名の方で呼んでいるのよ?」
「いやあ、サン・シールちゃん、名前で呼ぶと怒るんですよ。家名の方に誇りを持っているから」
何とも言えない表情を浮かべながら、リオンは頭を掻きながら言った。
「ちょっと生真面目すぎよね。そこが良いところでもあるんだけど」
リサもまた、微妙な表情で評価する。