その20
「大体想像はつくんだが、初めての場所だから無理はしないでおくよ。掲示板でも見て時間を潰すさ」
レクサールは然う言うと、掲示板に目を向けた。
「今日のところは一応まだ客人だからねえ、レクサールは。流石に、手持無沙汰にさせるのは忍びない。闇飛君、済まないが暫くレクサールに付き添っていてくれ」
リオンはそう指示すると、「それじゃ、速攻で迎えに来よう」と、玄関を飛び出すと、凄い勢いで駆け去って行った。
「そこまでして貰うこともないんだがなあ」
その行動を見て、レクサールは申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「……先程の風紀委員の動きからしてみても、不審者として認識される可能性があれば」
困った表情を浮かべるレクサールに訥々と闇飛は語りかけた。
「ああ、成程。そりゃ、配慮するか」
その台詞でレクサールは大いに納得した。
レクサールは唯の人間である。
確かにある種の異能を持ってはいるが、それを使って刺激の溢れる人生を送りたいなどとは一切思っていない、それこそ普通の人間である。
他に喰っていく手段を思い浮かべられない、むしろ選べないだけの持たざる者である。
故に、今日みたいな平穏とはほど遠い一日を好んで選ぼうとは思わなかった。
「……先輩は魔王ですから、そこら辺の機微はあっさりと見透かしてきます……」
レクサールの心中を見透かしたのか、闇飛はぽつりと言った。
「どういうことだい?」
闇飛の言葉に興味を引かれ、レクサールは引き込まれるかのように質問した。
「魔族は人の欲望を利用し、堕落させるのが本能の様なもの。それを統べる魔王ならば、猶更です。ただし、ヴァシュタール先輩はある意味で良心的ですらありますが」
抑揚のない声で闇飛はレクサールに言った。




