その5
リサは少し考え込んでから、
「……確かに、リオンちゃんが最初から気が付いていたのならば、どんな手を使ってでもうちに入れたでしょうからねえ。そう考えれば、偶然でしょうね」
と、リオンを擁護する。
「運の良さには自信がありますから」
自信満々にリオンは笑った。
「運の良さだけで片付けて良いモノかしらねえ、これ」
多少困った表情を浮かべながらも、楽しそうにイシュタルは呟く。
「そうねえ、面白そうな子なのは確かなんだけれど、流石に天界の有力者に喧嘩を売る事になりそうなのがネックよねえ」
リサは首を傾げる。「そこら辺は大丈夫そうなのかしら?」
「表向きは。退学処分にしたのは向こうですし、こちらは行き場のない学生を迎え入れただけです。別に犯罪歴があるわけでもなし、彼から転入届を出して貰えば法の上での問題はないものか、と」
リオンは冷静に状況を解析した上で、非の打ち所が無い提案をした。
「法を重んじる天神達がそれに対してクレームを掛けてくる事はまずない、か。強いてあるとすれば、私たちが魔王だって事だけれども……」
イシュタルはちらりとリサを見る。
「そこは私が手を差しのべた事にしておけば良さそうね。これでも主神系列に近い戦女神の家ですもの。余程の事が無い限り、クレームを云ってくる事は無いと思うわ」
イシュタルの懸念に対し、リサは自信を持って答えた。
「それが妥当でしょうな。天神同士の問題ならば、向こうからこちらに前もって何か云ってこなかったという事がこちらの武器になりますしね。姉さんや俺がしゃしゃり出たら、本来ならば円満解決の問題すらトラブルになりかねませんし。落としどころは計算するにしかず、ってやつです」
にこにこと笑いながら、リオンはこの先起こる事を読んで見せた。