その8
「……なんと云うか、莫迦莫迦しいというか、面倒臭いというか……」
自分とは縁の無い世界の話をされ、レクサールは面食らったまま正直な感想を言った。
「どんな世界であれ、所謂社会ってのが構築されていれば、建前が存在するからな。建前を守る為に、とばっちりを食らう者も現れるのは当然だろう」
妙に達観とした口調でリオンは言った。
「何はともあれ、明神会長のお姉さんが動いたから、理事長がこっちに来られた、という事になるのかな?」
分からない事はとりあえず置いておき、分かる事をレクサールは纏めた。
「大雑把に云えばね。流石に外から指摘されたら、隠し通せるモノも通せないからねえ。まあ、俺がとばっちりを食らったこと以外は計算通りだったらしい」
肩を竦めながら、リオンは両手を広げて見せた。
「それは計算外だったんだ」
些か意外な気分でレクサールは尋ねた。
「姉を出したら弟も連鎖的に出さなくてはならなくなると踏んでいたらしいが、流石に称号持ちを二柱も失う可能性がある場所に無防備な状態で出すわけにもいかないからねえ。だからこそ、姉さんは対抗戦に全てを賭けざるを得なかったわけだが」
「それはまた一体どういうことだい?」
リオンの説明が突然飛躍した為、レクサールは理解が追いつかなかった。
「幾分、逆説的な話なんだがね。対抗戦に勝てば勝つ程、自分の名声が高まるし、ヴァシュタールの名もより満天下に知れる。唯でさえ知られている家名が有名になれば、注目が高まり、姉がこうならば、弟は如何程かと世評を騒がせることとなる。そうなれば、嫌でも俺を現世の学校に通わせなければ魔界の評判が落ちる。姉さん達はそう考えたらしいな」
風が吹けば桶屋が儲かる的な都合の良い理屈をリオンはさらっと言ってのけた。
「それで、上手くいったのか……」
リオンがこの場に存在する事実を鑑みて、レクサールは理事長達が横車を押しきったことを悟った。




