その3
その御陰か、身を刺す様な圧迫感で身が固まる神威をレクサールは感じることはなくなった。
「……まあ、貴女にしては上出来かしら」
イシュタルは肩を竦めた。
「人の子を痛めつける趣味はないし、護るべきものを虐げるほど莫迦じゃないわよ? ただ、初見の相手にはそうそう易々と加護を与えられないだけだから」
「それはそれで不便な能力よねえ」
リサの抗弁を聞き、思わずイシュタルは苦笑していた。
(……少なくとも、前の学院よりは圧倒的にフランクだよなあ)
少なくともレクサールの知る限りだが、聖リュニヴェールでは生徒の前で教師達が軽口を叩くことなどあり得なかった。
「さて、漸くお話ができる環境が整ったわね」
リサは柔らかく笑う。「ようこそ、明星学園へ」
「大体のことは調べてあるから貴方は気にしなくて結構よ。全てを理解した上で受け入れたのだから、何か問題が起きた場合、全て受け入れた私たちの方に全責がある。貴方は学生の本分に集中しなさいな」
何事もなかったかの様にイシュタルは話を切り出した。
「ありがとうございます」
素直に有り難かったので、レクサールの頭は自然に深々と下がった。
「それにしても、一介の生徒がこんな事できるわけ無いのにねえ。濡れ衣を着せるにしてもこれは酷いわねえ」
思わず苦笑しながら、イシュタルは書類を見る。「他人には知らせない方が良いかしら、これ?」
「どこまでかは知りませんが、身内に余計な心配をさせたくはありませんので」
レクサールは渋い表情を浮かべて言った。




