その1
「ここだ」
リオンは振り向いてレクサールに告げた。
レクサールは扉に備え付けられたプレートを確認する。
「……紛う事なき学園長室、か……」
部屋の向こうから放たれている強烈な二種類の圧迫感を浴び、身体が自然に怯んだ。
「……まあ、俺も流石に入るまでは緊張するからねえ。殺気ではないとは云え、ちゃんと気配遮断の処理された扉すら透過してくる思わず身構える神威と魔力は洒落にならないよなあ。まあ、別に喰われるわけではないから、緊張したままでも良いんでさっさと用事を済ませたまえ」
レクサールの肩を叩いてから、学園長室の扉を軽くノックする。
「どちら様?」
中から扉越しの為にくぐもってはいるが、柔らかな女性の声が響いてきた。
「リオンです。転入生のレクサール君を連れて参りました」
「あら、予定の時間よりは早いわね。どうぞ、お入りなさいな」
中の応えがあった後、リオンは扉を開けて、レクサールを促した。
「ま、行ってきたまえ。俺は外にいるとしよう」
どんと尻込むレクサールの背中を叩いて部屋に押し込むと、「御武運を」と、にやりと笑いながら扉を閉めた。
リオンに対して抗議する前に、レクサールは眼前の強者と対面することとなった。
慌てて深々と一礼するレクサールに、
「そこまで畏まらなくても良いのよ」
と、柔らかい声で見るからに高級そうな机の向こう側から前の学園ですらお目に掛かったことがない程の強い神威を振りまいている女神が笑顔で言った。




